日はまた沈み昇る
もぐもぐ
「なあ兄貴」
もぐもぐ
「なんだバズー」
もぐもぐ
「やっぱりおれか兄貴があっちについてアイリスさんとクオちゃんに残ってもらった方がよかったかもな」
もぐもぐ
「なんだうな丼の出来に文句があるのか?」
どぽー
「いや、そうじゃない。これ作ったのはムラさんだったな。なんかみるみるうちに調理上達したよな」
どぽー
んぐんぐ
「さすが生産職だよな。あのおこげカレーでスキル習得したらしいぞ。で、飯の事でなきゃなんだ?」
んぐんぐ
「いや、色気と言うか華やかさがさっぱりないなと思って」
んぐんぐ
「まぁ、男性陣と女性陣に分かれたからな。結果」
「何かを期待した、って訳でもないけど、ちょっときれい所とパーティー組んでうれしかったわけよ」
「わからんでもないがな。さて、今日中に生態調査範囲をもう10㎞広げるぞ」
テーザーで気絶させた後ソファ代わりに腰かけていたツキノワグマから立ち上がりながらバダーが告げる。
「移動車両があると早いんだろうがね」
「しかたないな。なんか資材が不足で作れんらしい。まあ徒歩の方が調査が密にできるからいいとしとこう」
バズーも腰を払いながら立ち上がる。すでにエネミースレから分岐した野生動物スレで有名もふもふカメラマンとして認知されつつあるインセクティア兄弟だった。
「それでだな、村田さん。農業プラントの副産物のリストから見つけてクオ君経由でアイリス君から使用許可をもらったのがこれなんだが」
「アクリル…とはちょっと違うようじゃの、ムラよ」
「稲から取れるプラントオパールを加工したものなんだが、分析したらポリカーボネイトと同じような物性に仕上がってる。村田さんやドーユー君なら使い道があるんじゃないか?」
「ふむ、アイリス嬢ちゃんからザラマンダ用に装弾数の多い銃が出来んか訊かれとったしな…あれを拡大設計してみようかの。工業プラントの修理計画はどうじゃ?」
「アイリス君に申請のメールは送ったが、ログアウトしてるな。まだ返信は来ない。港湾関連を重視するなら資材不足になるかもしれんから返答があるまで保留だな。」
「ドーユー君はどうしとる?」
「居住区で職員宿舎にするのに好都合な基礎が残ってないか調査中だ」
「そんなに都合よくあるもんかのう?」
「集合住宅用の基礎があればどうにでもなると言っていたよ」
「ふむ?まあ餅は餅屋、わしらが気をもんでも始まらんか」
「琢磨さん!!ちょっと応援願います!!」
「はぁ?ばか言ってんなよ!こっちも手は離せん!窓口業務のフォローは志村さんのシフトだったろう」
「もう朝から米と大豆食材の情報を求めるプレイヤーで事務局あふれかえっているんです!!」
「ああそりゃご苦労さん!こっちもガンショップIDE周辺から浦安の鼠園みたいな人手だ!!こんなのはサービス初日以来、いやもっと酷いな!」
「琢磨さん、ここ代わります。資源課長が相談があるとか」
「ちっ。大国め。だからおかしな演出をするとろくな目に合わんと言ったろうに…わかった。関係プレイヤーの情報は厳重秘匿を徹底してくれよ?もし居場所を聞かれたらログアウト中で再ログインに関しては全くわからんと言っとけ」
「はっ」
「くっそ、あやだけの知恵じゃねえな。あや一人でも手に余りそうなのに…」
小さくつぶやいた愚痴は、誰の耳にも入ることはなかった。




