第5話 :明かされる過去、真の目的
第5話「明かされる過去、真の目的」をお届けします!
自室へと軟禁され、刻一刻と満月の夜が迫る中、ミリーはかつての戦場を思い起こします。ロイがなぜエンペラー将軍に身体を乗っ取られてしまったのか、その悲劇的な真相が今、明らかになります。
それでは、第5話のスタートです。
自室に厳重な鍵がかけられ、外への扉は重い衛兵の監視によって完全に塞がれていた。
窓の外を見上げれば、夜空に浮かぶ月はすでに白く丸みを帯び、満月の夜がすぐそこまで迫っていることを告げている。
(時間がない……。このままでは、あの祭壇で魔王が完全に復活してしまうわ)
部屋の中を焦燥感に駆られて歩き回りながら、ミリーはふと、半年前のあの日々に思いを馳せていた。
ロイが魔王討伐のために、王都を発ったあの日。
彼が戦場へと旅立つ直前、城の庭園で交わした約束が、鮮明に脳裏によみがえる。
『ミリー、必ず帰ってくるよ。この手で平和を取り戻し、君と共にある未来を誓う』
そう言って優しく微笑んだ彼の顔は、曇りのない温かな光に満ちていた。
ロイは自ら先頭に立ち、かつて世界を絶望に陥れた魔王軍の本拠地――呪われた「黒曜の谷」へと進軍した。戦いは熾烈を極め、多くの騎士たちが命を落としたが、奇跡的にロイは単身で魔王の間に踏み込み、激闘の末に魔王を打ち破ったのだ。
王国中が歓喜に沸いた。英雄の凱旋だった。
だが――誰も知らなかった。その最後の瞬間、魔王の討伐に成功した直後の戦場の奥深くで、何が起きたのかを。
(あの時、一体何があったというの……?)
宮廷の古文書や、生き残ったわずかな従者たちの断片的な証言をつなぎ合わせ、ミリーは真実にたどり着いていた。
魔王は消滅の際、自らの魂の核――すべてを支配する強大な邪念の塊を、最後のあがきとして最も隙のある肉体に放り込んだのだ。それが、死闘の疲れ果て、精神の防壁がわずかに緩んでいたロイだった。
「エンペラー将軍」とは、かつて魔王の右腕として恐れられた古代の邪悪な精神体。
彼は肉体という器を失い、永い眠りについていたが、ロイほどの強靭な肉体と高い魔力を持つ器を見つけ、その魂を乗っ取ることでこの世に蘇ったのだ。
つまり、ロイは魔王を倒したその英雄であると同時に、世界で最初にその魔王の残滓の餌食となってしまった、最も悲劇的な犠牲者でもあった。
(彼は、自分の身体が怪物に蝕まれていく中で、どれほど絶望したことか……)
胸が締め付けられるような痛みに、ミリーは思わず両手で顔を覆った。
自分が囚われているこの部屋の冷たさなど、ロイがその内側で感じている孤独と苦痛に比べれば何でもない。彼は今この瞬間も、あの冷酷な将軍の意識と戦い続けながら、自分の身体が世界を滅ぼす道具に使われるのを止めようと必死にもがいているのだ。
コン、コン。
静寂を切り裂くように、ドアの向こうから控えめなノックの音が響いた。
(……誰?)
衛兵による食事の配給の時間にはまだ早い。
警戒しながらミリーがそっと扉に近づくと、隙間から一枚の小さな紙片がひらりと滑り込んできた。
拾い上げて開くと、そこには見覚えのある美しい文字でこう書かれていた。
『深夜、中庭の古井戸の裏手へ来い。見張りの目を晦ます道を開けておく』
署名はない。しかし、その筆跡が誰のものか、ミリーには一目で分かった。
それは、かつてロイの側近を務め、現在は城の裏方に回されている忠実な騎士のものだった。彼もまた、ロイの微かな異変に気づき、密かにミリーに味方しようとしてくれているのだ。
(これ賭けるしかない……!)
満月の夜が訪れる前の、ほんのわずかな隙間。
窓の外の月が怪しく紫色の光を帯び始めたその時、ミリーは覚悟を決めて部屋の隅に隠された秘密の抜け道へと向かった。
第5話「明かされる過去、真の目的」、いかがでしたでしょうか!
ロイがエンペラー将軍に乗っ取られるに至った悲劇的な真相と、彼が抱える絶望の深さが明らかになりました。そして、閉じ込められたミリーの元に届いた一筋の希望の光――。
次回、第6話「逃避行の夜、二人だけの秘密」では、城を抜け出したミリーが、かつての優しいロイの意識と束の間の邂逅を果たします。切なすぎる二人だけの時間をぜひお楽しみに!
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