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魔王を殺した王子、私を救った恋人  作者: 凪塩 未来


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シーズン2 外伝第4話 :アストレア城の庭園にて

シーズン2の外伝シリーズ第4話「アストレア城の庭園にて」をお届けします!

激しい戦いの季節が過ぎ去り、王城に再び美しい初夏が訪れました。幼い頃のロイとの思い出が詰まった庭園で、女王としての責務の合間にひとときの静けさを楽しむミリーの日常のワンシーンを描く穏やかなエピソードです。


それでは、外伝第4話のスタートです。

アストレア城の中庭に足を踏み入れると、どこからともなく甘やかなバラの香りが鼻腔をくすぐった。

白亜の回廊に囲まれたその庭園は、王国で最も手入れが行き届いた美しい場所であり、同時にミリーにとって最も多くの思い出が詰まった場所だった。


初夏の強い日差しが、青々と茂る木々の葉の隙間からこぼれ落ち、地面に黄金色のまだら模様を描き出している。

ミリーは公務の合間のわずかな自由時間を使い、誰の従者も連れずに、ただ一人で石畳の小道をゆっくりと歩いていた。


(今年も、綺麗に咲いたんだな……)


立ち止まった先には、ひと際鮮やかな赤い薔薇が誇らしげに花開いていた。

幼い頃、まだ王位継承の重圧など知らなかった無邪気な日々に、ロイと一緒にこの苗木を植えたことを彼女は鮮明に覚えている。あの時はまだ細くて折れそうだった枝が、今では城の壁を覆うほど立派に成長し、季節が巡るたびに美しい花を咲かせてくれる。


ふと、ミリーは胸元に手をやった。

シルクのドレスの胸元で揺れる『真実の眼』のペンダントは、今日も変わらず、ひんやりとした心地よい青い輝きを放っている。


「……ねえ、ロイ。見てる?」


誰に聞かれるわけでもなく、ミリーは小さな声で呟いた。

王位に就いてからの日々は、決して平坦なことばかりではない。毎日のように届く領地からの報告書、諸侯の思惑、国を安定させるための難しい決断の数々。時には息が詰まりそうになるほどの重圧に押し潰されそうになることもあった。


それでも、彼女がこうして凛とした顔で女王の座に立ち続けられているのは、この庭園の風に吹かれるたび、あの日の温かな記憶が蘇ってくるからだった。


『――ミリーは、笑っている顔がいちばん綺麗だよ』


昔、彼がふと言ってくれたその言葉が、今でも疲れた彼女の背中をそっと押し続けてくれる。


ガサリ、と近くの茂みが大きく揺れた。

驚いてミリーが視線を向けたその瞬間、心地よい初夏のそよ風が一際強く庭園を吹き抜けた。薔薇の花びらが一斉に舞い上がり、まるで祝福のダンスを踊るように彼女の周りを優しく包み込む。


風のなかに、ふと、懐かしい柑橘と微かな森の匂いが混ざった気がした。

それは、かつてロイが纏っていた香りそのものだった。


ミリーは驚くことなく、ただ柔らかく目を細め、舞い散る花びらに向かって微笑んだ。

「うん、分かってる。ちゃんと笑って生きているよ」


幻かもしれないし、気のせいかもしれない。けれど、そんなことはどちらでもよかった。

彼がこの風のなかに、そして自分の心のなかにずっと寄り添っていてくれるなら、明日もまた、胸を張って前へ進んでいける。


静かな庭園の緑の中で、若き女王の穏やかな笑顔が、初夏の光に美しく溶け込んでいくのだった。

外伝第4話「アストレア城の庭園にて」をお読みいただき、ありがとうございました!

思い出の詰まった庭園で、ロイの面影を感じながら穏やかな日常を過ごすミリーの姿を描きました。


次回はついに外伝最終話、そして全シリーズのフィナーレとなる第5話「永遠の誓い」をお届けします。

すべての戦いと復興を終えたミリーが、新しい王国の未来へ向けて捧げる永遠の誓いを、ぜひ最後まで見届けてください!

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