シーズン2 第4話 :幻影の回廊
シーズン2第4話「幻影の回廊」をお届けします!
北方の凍てつく遺跡で魔導士の罠に落ちたミリー。黒い影を振り切り、奥深くへと足を踏み入れた彼女を待ち受けていたのは、死んだはずのロイの姿――それは救いか、それとも残酷な幻影か。
それでは、シーズン2第4話のスタートです。
地中から這い上がってきた無数の黒い影は、まるで生き物のようにうねり、ミリーの退路を完全に塞いだ。
しかし、彼女は怯まなかった。亡きロイから受け継いだ強い意志を胸に短剣を振るい、迫り来る魔物の残党を次々と切り伏せていく。
「……はぁ、はぁ……!」
息を切らしながらも、元・宮廷魔導士の姿が消えた「幻影の回廊」と呼ばれる古い地下道へとミリーは飛び込んだ。
そこは、かつて魔王軍が人間の精神を狂わせるために造り上げたという呪われた空間だった。壁に埋め込まれた魔石が青白く不気味な光を放ち、歩くたびに足元から冷気が這い上がってくる。
進むにつれて、空気の重さが増していく。
頭の芯がジリジリと痺れ、幻聴のように誰かの囁き声が耳元で反響し始めた。
『――ミリー、どうしてここへ来たんだ……』
ビクリと足が止まる。
その声は、あまりにも懐かしく、そして痛いほど愛おしい、かつての恋人のものだった。
「……ロイ……?」
震える声を絞り出しながら、ミリーが暗がりの通路の角を曲がると、目の前の空間が開けた。
そこには、月明かりのような柔らかな光の中に佇む、見覚えのある白銀の騎士服に身を包んだ青年の姿があった。
美しい金髪を風になびかせ、深い森の湖のような碧色の瞳でこちらを優しく見つめている。
紛れもなく、半年前に自らの命を絶ってこの世を去ったはずの、第一王子ロイその人だった。
「ロイ……本当に、あなたなの……?」
胸が締め付けられるような痛みを覚えながら、ミリーは思わず駆け出そうとした。
しかし、その足がピタリと動かなくなる。脳裏の片隅で、冷徹な理性が警鐘を鳴らしていた。
(そんなはずがない……! ロイはあの夜、私の腕の中で確かに息を引き取ったんだわ!)
「そうだ、ミリー。僕は君を迎えに来たんだ」
幻影のロイは優しく微笑み、ゆっくりと彼女に向かって手を差し伸べていた。
その表情には微塵の曇りもなく、かつての温かな愛があふれているように見えた。触れれば、あの日のように温もりを感じられるのではないかという強い誘惑が、ミリーの心を激しく揺さぶる。
(もしこれが本物なら……もし、神様が奇跡を起こしてくれたのなら……)
涙が視界を滲ませ、ミリーは一歩、また一歩と彼へ歩み寄ろうとした。
だが、その瞬間。彼女の胸元――本来ペンダントがあったはずの場所が、焼けるように熱く痛んだ。
『真実の眼』のペンダントは奪われている。それでも、長年その聖なる光を肌で感じてきた記憶が、彼女の身体に本当の真実を思い出させた。
(違う……これは私を惑わすための、残酷な幻影よ!)
ミリーはぐっと歯を食いしばり、その場で足を止めた。そして、両手で強く自らの頬を叩き、意識を現実に引き戻した。
「……騙されないわ。あなたはロイじゃない。彼の思い出を汚す、ただの悪趣味な幻覚よ!」
ミリーがキッと睨みつけた瞬間、目の前に立っていたロイの姿が、ゆらゆらと歪み始めた。
優しい笑みは消え去り、その肉体は黒い霧となって崩れ落ち、代わりに不気味な醜い笑い声を上げる影の怪物が姿を現した。
「ククク……惜しかったな。もう少しで精神を完全に乗っ取ることができたものを」
闇の奥から、元・宮廷魔導士の冷笑が響き渡る。
幻影を打ち破ったミリーの瞳には、もはや迷いはなかった。彼女は短剣を強く握りしめ、さらなる遺跡の最奥へと足を踏み入れたのだった。
シーズン2第4話「幻影の回廊」をお読みいただき、ありがとうございました!
ロイの幻影による誘惑を断ち切り、強い意志で進み続けるミリー。
次回、シーズン2第5話「真実の眼の秘密」では、遺跡の最奥でペンダントに隠された驚愕の歴史と、王国を揺るがす真の秘密が明らかになります。
ぜひお楽しみに!




