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魔王を殺した王子、私を救った恋人  作者: 凪塩 未来


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シーズン2 第3話 :北方の黒い雪

シーズン2第3話「北方の黒い雪」をお届けします!

王家の聖遺物「真実の眼」を持ち去った元・宮廷魔導士を追うため、ミリーは女王の身でありながら単身で北方の凍土へと旅立ちます。かつてロイが命を懸けて魔王と戦った「黒曜の谷」の近くで、彼女を待ち受けていたものとは――?


それでは、シーズン2第3話のスタートです。

王都を立ち去ってから数日。

アストレア王国の南方の穏やかな気候は見る影もなく消え去り、馬車を進めるごとに周囲の景色は白一色の冷酷な世界へと変貌していった。


ここは、かつて魔王軍の本拠地であり、半年前にはロイが死闘の末に魔王を討ち果たした「黒曜の谷」に続く北方凍土の境界。

空は鉛色の雲に閉ざされ、顔を切りつけるような冷たい黒い雪が、音もなくしんしんと降り続いていた。


「……はぁ、はぁ……」


馬車を捨て、愛馬を走らせてここまで辿り着いたミリーの吐く息は、一瞬で真っ白な凍てつく霧となって消えていく。

防寒用の厚い毛皮のコートを纏っていても、芯まで凍りつくような底冷えが全身の感覚を鈍らせていく。それでも、彼女の足が止まることはなかった。


胸元にペンダントはない。あの聖遺物の青い光が失われてから、ミリーは自らの直感と、わずかに残された魔力の残滓だけを頼りにここまで追跡を続けていた。


(ペンダントの気配がする……この雪の向こう側よ)


目の前にそびえ立つのは、かつて大いなる魔力の衝突によって抉り取られたような、巨大な黒色の山脈。

その谷間の奥深く、かつて魔王の城が存在した跡地に、何者かが作り出した人工的な魔法陣の光が、ドス黒い紫色の明滅を繰り返しているのが見えた。


(あそこに、あの裏切り者の魔導士がいるわ)


ミリーは護身用の短剣の柄をしっかりと握りしめ、足元で雪を踏み締める音を殺しながら、慎重にその廃墟へと近づいていった。


近づくにつれ、空気の質が変わっていく。

そこにあるのは、ただの寒さではない。人間の生気を根こそぎ奪い去るような、どす黒く澱んだ邪悪な魔力の奔流だった。半年前、アストレア城の地下で感じたあの悪夢の気配が、より濃厚になって蘇ってくる。


(待ってなさい……必ずあの聖遺物を取り返し、王国の脅威を断ってみせるわ)


崩れかけた巨大な石造りの門をくぐり抜け、かつて魔王の間があった広大な空間へと足を踏み入れたとき、背後から冷徹な声が響いた。


「――よくぞここまでたどり着いたものだ、女王陛下。お一人で死出の旅路とは、感心なことで」


ビクリと心臓が跳ね上がり、ミリーは素早く振り返った。

そこに立っていたのは、例の元・宮廷魔導士だった。彼の両手には、あの奪われた『真実の眼』のペンダントが握られており、ペンダントからはかつての美しい青い光ではなく、おぞましい黒い瘴気がドロドロと吹き出している。


「……っ! あなたをここで逃がさないわ!」


ミリーは短剣を構え、毅然とした声で言い放った。

しかし、魔導士は冷ややかな嘲笑を浮かべるだけで、微動だにしない。


「逃げる? ふっ、私が生憎こんな極寒の地であなたを待ち構えていたのは、逃げるためではない。……あなたを、我が君の『新たな器』として捧げるためだ」


魔導士がペンダントを強く掲げた瞬間、足元の雪が一斉に黒く染まり、無数の不気味な影が地中から這い上がってきた。

シーズン2第3話「北方の黒い雪」をお読みいただき、ありがとうございました!

単身で北方凍土へと乗り込んだミリー。待ち受けていた魔導士の罠と、周囲を取り囲む黒い影の正体とは――?


次回、シーズン2第4話「幻影の回廊」では、遺跡の奥深くへ進んだミリーが、死んだはずのロイの幻影と遭遇する残酷な試練を描きます。

ぜひお楽しみに!

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