シーズン2 第2話 :消えた聖遺物
シーズン2第2話「消えた聖遺物」をお届けします!
北からの不穏な予告状が届いたその夜、アストレア王国の王宮深くでさらなる異変が起きました。王家の秘宝である「真実の眼」のペンダントが突如として盗み出され、犯人を追うミリーの前に現れたのは――?
それでは、シーズン2第2話のスタートです。
王都に不穏な予告状が届いたその日の夜、アストレア城の厳重な警備が敷かれた地下宝物庫で、信じられない事件が起きた。
「――陛下! 大変です! 王家の聖遺物が……!」
真夜中、近衛騎士の慌ただしいノックで叩き起こされたミリーは、寝衣の上からガウンを羽織り、すぐさま宝物庫へと駆けつけた。
そこは、王国が誇る古代からの貴重な魔道具や王家の宝が厳重な魔法の結界によって守られている場所であるはずだった。しかし、鉄製の頑丈な扉は内側から綺麗に切り裂かれ、中央の台座はぽっかりと空洞になっていた。
台座の上に置かれていたはずの、あの青い輝きを放つ『真実の眼』のペンダントが、跡形もなく消え去っていたのだ。
「結界が破られた形跡はありません。術者は、宝物庫の内部構造と王家の血筋の魔力紋を完璧に把握していた者です……」
冷や汗を流しながら報告する騎士の言葉に、ミリーの血の気が引いた。
宝物庫の結界をすり抜けてペンダントを持ち去るなど、城の人間、あるいは王家の秘密を知り尽くした者でなければ不可能だ。そして何より、『真実の眼』はエンペラー将軍の呪いや魔王の気配を感知し、唯一対抗できる最強の聖遺物である。それが奪われたということは、王国にとって最大の盾を失ったに等しかった。
「……犯人はまだ城内にいるわ。総員で捜索を続けなさい!」
ミリーが冷徹なまでの気迫を込めて命じると、騎士たちは一斉に散らばっていった。
彼女自身も、護身用の短剣を手に取り、宝物庫の奥に続く古い地下水路の入口へと足を踏み入れた。
冷たく湿った石畳の回廊。
松明の炎がわずかに揺らめくその場所で、ミリーの足がピタリと止まった。
前方の暗がりから、ふわりと甘く、そしてどこか錆びた血のような異様な匂いが漂ってきたのだ。
さらに、闇の向こうから、カツ、カツ、と乾いた足音が響いてくる。
「――そこまでよ、泥棒さん」
ミリーは短剣を構え、凛とした声で言い放った。
暗がりの中から、ゆっくりと姿を現したのは、深紅のフードを目深に被った一人の人物だった。その手には、月明かりを反射して冷たく光る、あの青いペンダントがぶら下がっていた。
「ほう、さすがは若き女王殿下。ここまで嗅ぎつけてくるとはね」
フードの隙間から覗いたのは、不敵に歪んだ唇だった。
男がフードを脱ぎ捨てると、そこに現れたのは、かつて王国から姿を消したはずの元・宮廷魔導士の姿だった。彼はかつて魔王軍の残党と密通しているという嫌疑をかけられ、行方不明になっていた男だった。
「……あなたね。王国の宝を盗み、再び闇を引き込もうとしているのは」
ミリーの鋭い視線に、魔導士は冷ややかな笑みを浮かべた。
「盗み出す、か? 人聞きが悪いな。これは『本来あるべき主』の元へお返しするだけさ。あの愚かな第一王子が死に損なったおかげで封印されかけていた『真実の眼』……これを北方の凍土へ持ち帰れば、我が君の完全復活は約束される」
「――魔王の残党め!」
怒りに任せてミリーが飛び出そうとした瞬間、魔導士が手元のペンダントを強く掲げた。
瞬間、ペンダントから激しい黒い瘴気が吹き出し、青い光がみるみるうちに汚染されていく。
「くっ……!?」
聖なる光が反発し、強烈な衝撃波がミリーの身体を吹き飛ばした。
彼女は壁に激しく打ち付けられ、口元から血が一筋零れ落ちた。
「フハハハ! 残念だが、今の君にこの聖遺物を取り戻す力はない! 北方の凍土で待っているぞ、女王陛下!」
魔導士は足元に黒い煙玉を投げつけると、その煙と共に夜の闇へと姿を消した。
静まり返った地下水路に、ミリーの荒い息遣いだけが残された。
「……逃がさない……!」
痛む身体を無理やり起こし、ミリーは強く拳を握りしめた。
ペンダントを奪われた今、王国に残された時間は少ない。彼女は自らの手でそれを取り戻し、すべての元凶を断つため、単身で北方へ赴くことを心に誓ったのだった。
シーズン2第2話「消えた聖遺物」をお読みいただき、ありがとうございました!
宝物庫からペンダントが盗まれ、かつての宮廷魔導士が新たな敵として現れました。
次回、シーズン2第3話「北方の黒い雪」では、ペンダントの反応を追って、ミリーがかつてロイが戦った「黒曜の谷」の北方へ単身で旅立つ決意を描きます。
ぜひお楽しみに!




