第9話 異世界賢者 偽コスプレイヤーになる?
そんな、朝からネコマサ人間化事件があったりしたので、バタバタして田辺美香のくる準備を整える。
客間にはこちらの収入関係の書類を用意して。
ネコマサの方は部屋の中に閉じ込めておけば問題ないであろう。
というか、人間状態になった場合はネコマサでいいのか、賢者様と呼んだほうがいいのか?本名は長いから愛称の「ガーナ」とでも呼んだらいいのか?
後で聞いておくか
と光正は考えつつ、浴衣以外に着られる服はないかと両親が残した荷物をあさってみると、押し入れに母親の箪笥の肥やしになっていた値札のついたままの着てないスカートとブラウス、それと未使用の通販で買ったであろう体型矯正下着を発見した。
母親も小柄だったので、ネコマサでもそのまま着られそうだ。
補正下着。
なんかものゴッツい革鎧みたいな感じのもので、いろいろなところを締め込むような仕組みになっている。
多分、これを身につけたら痩せると思って買ったのだろうが、すでに着ることのできない体型になっていたのであろう。未開封のまま箪笥の下に入っていた。
使える下着はこれくらいしかないから、これで勘弁してもらうとして。
あの浴衣だと動きにくいだろうから、この服に着替えてもらうか。
しかし矯正下着ってどんな感じになるのだ?胸とかサイズ合わなそうな気がするが・・・
とかパソコン前で見た裸体を思いだしつつ、せめてパンツは履いてもらうことにして脱衣所で着替えてもらうようにした。
賢者なんだから、この下着の身につけ方は、使い方はネットで見てやりなさい、とスマホも渡してある。
その隙に、ネコマサの猫トイレを微妙な気分で掃除していると。
玄関がガラガラと開く音が聞こえてきた。
正光の家は、ちょっと作りが古いので玄関は防寒性能も何もないすりガラスの引き戸である。
冬に大寒波が来て凍りついて開かなくなることもあったりするように、玄関の気密とか考えられてない時代の代物だ。
だから玄関に入ると広い空間があり、すそこから他の部屋へと移動が容易い構造になっている。おばあちゃんのガラガラするスダレみたいなのが光正の家でもそれが廊下の入り口に下がってたりするのだが。
「こんにちわー、正光さんちょっと早く着いちゃったんでメールしたんですけど返事がないから来ちゃいました・・・」
と美香が言いながら玄関に入ると同時に、脱衣所から
「おい、光正。この下着はどっちが表で、どうやって固定するんだ?」
という声と同時にネコマサが脱衣所から出てきて、運悪く二人は遭遇してしまう事態に。
しまった!
ネコトイレの掃除を途中で投げ出して玄関に走って行くと、
ネコマサ賢者と田辺美香がお互いを見てびっくりしている状況だった。
「あ、わわわ、ごめんなさい、な、なんか早くきちゃって、あはははは」
と美香は赤面し乾いた笑い声を出しつつ、
なんか修羅場っぽくなってる様子に光正は内心頭を抱えた。
これ絶対誤解してる。
それになぜ、こいつは今、下がスッポンポンなんだよ!
ネコマサ賢者は、補正下着のフックの紐がこんがらがってよくわからなくなったようで、裏表もよく分からず、教えてもらうためにブラウスだけをとりあえず身につけて正光のところに移動する途中だったようで。
えへへ、とかこっちを見て笑ってる。
どういう状況に受け取られたのか、流石にわかっている様子。
咄嗟に光正は
「ガーナ、だらしない格好してないであっち戻って。
いや田辺さん、お見苦しいところをお見せしてしまって」
といかにも「彼女は家族です」という対応をしつつネコマサを脱衣所に押し込める。
「え、あ、いや、急にきて、こちらこそすみません」
美香がまだ赤面はしてるが、少し落ち着いた感じがある。
とりあえずなんか「たまによくあることなのですよ」的な雰囲気を醸し出しながら、混乱している美香を勢いと流れで客間へと連れていき、麦茶を出してから。
「いや、ごめんね。ちょっと親戚の子がコスプレしにきてて」
「コスプレ?」
麦茶を飲んで少し落ち着いたのか、美香は納得したような顔をして。
「それで、今補正下着なるものを下に着替えようとしてたようで、それの付け方とかわかる?」
「え、ええ。多分わかります」
「よかった、来ていきなりで申し訳ない。あいつの手伝ってもらっていい?俺に聞かれてもわからないので、スマホで自分で見るようにって貸してたんだけど」
「ああ、それで私からのメール見られてなかったんですか」
「申し訳ない」
と言って両手を合わせて拝む
と光正は自然な流れで、美香が不審に思わないように誘導していく。
そして無事、補正下着を身につけて、ブラウスにスカート姿へと賢者ネコマサは整い、美香にお礼を言ってパソコン部屋へと引きこもっていった。
脱衣所から戻ってきて
「補正下着とか全く必要ないくらいスタイルいい子ですね〜いいもの見られた気がします」
となんか妙に嬉しそうにしてて
「コスプレとかやってる人たちは、体の管理もすごいんですね、ツルツルで脱毛とか感心しちゃいましたよ」
何をこの人は確認してたのだ。
どこの脱毛の話をしているのだ。
色々気になったがあえて聞かず。
「今度出すゲームのキャラクターのコスプレしてもらって、その動画を今日撮影する予定なんだ」
光正も嘘を突き通す覚悟で設定を頭の中で素早く組み立てていた。
そう言いながら賢者のフィギュアを持ってきて美香に見せる。
「うわ、再現度高い。さっきの子これと瓜二つじゃないですか!」
ちょっとテンション上がってる。
そりゃ本人だものな、と思いつつ
「彼女がキャラクターのモデル、モーションも担当してて。これからあの部屋でそれの撮影とかしててもらうことになってる。
いや、ほら、この家男しかいないから、いくら親戚とはいえ若い女子が一人で来てコスプレ撮影とかやってるとかだと明らかに怪しいじゃない。
だから、今日田辺さんがくるから午後に来てもらって、安心してコスプレして撮影を行なってもらおうとしてたとこなんだ」
少し無理な設定か?
と思ったが美香は納得したらしく。
というか、最初のインパクトが強くてあまりものを考えられる状況ではないのだろう。はあそうですか、みたいなぼんやりと納得した雰囲気で頷いてるかんじ。
「彼女は部屋からほとんど出てこないから、邪魔にならないよ」
と光正が言うと、少しため息をついてから麦茶を飲んで。
「今日はお一人かと思ってきたんですが、まあ事情はわかりました。
それで、ネコマサちゃんは?」
「ああ、いや、さっきの子が部屋に連れ込んでて。あとで出てくると思うけどしばらくこちらにはこないよ」
「あら、じゃあ出てきたらご挨拶しないと」
と言ってカバンから猫のおやつと猫の遊び道具を取り出してきた。
ネコマサと遊ぶ気満々だったんだな。
さっきのため息は、ネコまさに会えなかったからなのか、それとも。




