第10話 デートは接待交際費で
田辺美香から、お金の使い方についてもアドバイスを受けつつ、今後のゲーム開発事務所建築の話などをしてみると、光正のような素人、ネコマサのような異世界人の感覚ではない現実的なところに落とし所が見えてくる。
なんとなく方向性が見えてきた。
「やはり専門で勉強してる人は違うねー」
もらった資料を見ながら光正が言うと
「今後も光正さんは稼いでいきそうだから、私を専属でしっかり雇ってくださいよー」
とさらっと専属契約の書類と正規の契約金額なども提出してきた。
「・・・高っ、税理士って給料いいの?」
その契約金額を見て、ついそんなことを聞いてしまうと
「父の会社で事務員やってるよりもっと稼げますよ。今回のこの金額だって正規の、今の事務所感覚の金額ですからぼってないです」
正規の金額でもこれなのかー。
この金額でいくつかの会社を受け持ってたら、確実に自分より給料は上のはず。
と思いつつ、ちょっと気になったことを聞いてみる
「そういえば社長は信頼してた税理士にお金持ち逃げされたのでは?」
「そうですよ。急にお金なくなって、あの時私たち貧乏生活してましたから」
「へーそれは大変な」
「もしかして、私が持ち逃げするとか思ってます?今はそういうことできないようになってますから安心してくださいよ」
「いや、税理士がお金持ち逃げとか、今時あるんかなと思ってたけど」
「ないわけではないですけど、タンス預金とかずるしない限りは今はほとんどできないようになってますよ」
といいつつ
「でも、ボーナスとか臨時でお金くれたりすると、私はいい働きするようになるかもしれませんよ?」
とイタズラっぽく言ってPCを片付け始める。
時間はもう午後の4時くらいだ。
「ネコマサちゃんはきてくれませんかねー」
と言って廊下の奥を眺めるが、果たしてネコ形態に戻っているのかどうか。
「それにしても、正光さんにあんな素敵な女性の知り合いがいたとは。海外の人でしょう?」
「まぁそうだな。日本国籍ではないね」
嘘は言ってない
「日本語上手でしたし、アニメとかゲームが好きで日本に来たんですか?というか海外に親戚がいるんですか?」
「あ、ああ、遠縁で日本から直通で行けないような国にいるんだよ。それで移動が大変だからすぐ親も来れないし、実家に何かあってもすぐ帰れないからと、俺に面倒見るように頼まれてて」
「へー、ゲームアニメ好きだからそれでコスプレまでしてるんですか」
「ゲームの話してたらそういうことになったんだ」
「最近ですよね?」
「なんでそう思うん?」
「さっきもなんかまだ距離がある感じでしたし」
「実は、いつもはスマホ越しでのやり取りばかりだったんだけど、直にあったのは昨日今日だから、まだ慣れてないとこがあるし。色々と彼女非常識なとこがあるからな」
嘘は言ってない
「非常識、確かに下着の着方を男性に聞こうとか普通は思いませんものね。今後も、この家に来ることあるんですか?」
「うーん、ゲームで必要な時は来るかもしれないな」
「じゃあ、その時は私も呼んでくださいよ」
「なんで」
「だって、海外の綺麗なコスプレイヤーと知り合いになるとか、田舎に住んでるとほぼありえないじゃないですか」
「知らないだけで、結構身近にいるかもしれないよ」
「それに、男女で一つ屋根の下で間違いがあったらいけませんから、監視しにきます」
「そこまでしなくても、間違いはないよ」
「だって、彼女まだ若くて独身なんでしょ?」
「若い、かな?田辺さんと同じ年齢だと思うが」
「同級生!だったらもっと仲良くなれるかも、しかしそうなると正光さんと年齢が近いから余計に監視がいりますね」
「その心配はいらんよ。そういう興味はないし」
「・・・正光さんて妙に枯れてるところありますよね」
「枯れてる言うな」
などと話していると、ネコマサがにゃーと鳴きながらやってきた。
あ、理力切れか
光正も、この会話の流れの行き先が見えず困っていたところだったので、話題が変えられるとほっとして。
美香はそのあとはネコマサをなでなでしたりおやつで釣ったり、遊んだりして。
「それで、彼女はまだいるんです?」
「ああ、もう帰ったと思うよ」
「え、そんないつの間に」
「彼女も忙しいからね」
と横にいるネコマサを見ながらそう答える。
「もう少しお話ししたかったな」
「また来る時もあるから、その時は声かけるよ」
「わかりました。さて、今日は私夕食外で食べてくるって言って家出てきたんですけど」
「そう」
察しの悪い光正の答えにちょっと声を大きくして
「そう?じゃありません。普通は「仕事も終わったから一緒に食事に行こう」とか女性を誘いませんか?」
「そう?」
「そう?じゃありません。ほんとに。だから結婚できないんですよ」
「う・・・それは堪える」
光正が胸を抑えると
「御免なさい、ついいい過ぎてしまったわ。
いやこれだけ稼いでるんですから女性に食事奢ったりしましょうよ」
「なんで」
「私だったら業務上の打ち合わせという感じで、接待交際費で経費になります!」
「そうなん?」
「だから、今後はもっと積極的に私と食事に行って経費を使って、税金を安くするのです」
「でも、使わないほうがお金貯まるのではないかな」
「税理士の私が言うんですから、人にこれからは奢ったりして、外食もした方がいいですよ」
「そういうものなのか」
「なので、これから食事行きましょう!前から行ってみたかったお店があるんですよ」
「なんで自分で行かないの」
「一人だと、田舎の店って入りにくいじゃないですか。特に小洒落てるとこだと」
確かに、全体的に家族連れで入るような店の作りが多いような気はする。
「じゃあ決まりですね。お金稼いでいるんですからもう少し見聞を広げた方がいいですよ」
などと言われ、そのまま外食に行くこととなってしまい。
ネコマサに夜ご飯を用意してから、光正の車に乗って移動することにした。
ネコマサが何か言いたげな目で見ているが、猫用のご飯で薄味を用意したのが気に入らなかったのかもしれない。
光正は車が趣味でもあるので、3台ほど持っている。田舎の家なので、一軒家だと普通に車は5台ほど停められるくらいの庭はある上に、畑とかの用地もあるので都会だと家が3、4件は建てられそうな広さがある。
4台目を買おうと思ってお金を貯めていたら、それがネコマサのPC代金そのほかに消えていってしまったのだ。
通勤には軽自動車のスズキのアルトのマニュアル車に載っていて、普段使いにはスバルのWRXのマニュアル車、この2台はカーポートに置いてあって。
百人乗っても大丈夫、なガレージに入れて大事にしているのは少し古いスポーツカーのホンダのS2000
もう30年近く前の車なのでそんなにしょっちゅう乗ってるわけではないが、たまに動かさないとバッテリーが上がるためちょくちょく動かしている。
前日から少し動かして庭先に置いていたので、食事には、この2シーターオープンカーで行くことにした。
スポーツカーの隣に女子を乗せるとか、この先2度とないかもしれないから今ついでにやっておくか。と思ったのはある。
初めてのオープンカーではしゃいでいる美香を隣に乗せて二人は食事へと向かっていったあと。
ネコマサは薄味の食事を食べて、今度から人間と同じ味付けにさせようと心に誓い。
そして
「そうか、私が人間の姿の時は、一緒に外食に連れていってもらえるのか」
と呟いていた。
そうなると、もっとうまいものが食えるのか。
そして、もっと広い世界が見られるのか。
そして、光正と同じ視線で世界を見ることができるのか。
と考えて、ちょっと気恥ずかしくなった。
なぜ自分が当たり前のように光正の隣にいることを考えてしまったのか。
「人間の姿などになると、色々と感情が出てくるものだな。猫の姿のままの方が楽だったのかもしれない」
と思いつつ、でも人間の姿になったからゲームの方が一気に捗ったのもあるし。
などと色々とごちゃごちゃ考えてしまう。
あの美香という女の存在も、何かと心に引っ掛かるものがあって、モヤモヤするなと感じていた。




