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第11話 天気が荒れると転機も起こる

そんな感じで、たまに(経費で)食事に行くような関係まで発展してしまった光正と美香であるが、二人の思惑は多少ずれているのでまだうまく噛み合ってないように見える。

一方は経費を使うため。一方はより関係を深めたいため。



そしてネコマサは自分の役目を果たすべく、異世界を救うためのゲーム制作。

そして一時的に人間の姿になったおかげでゲーム制作が一気に進み、そろそろ完成する道筋が見えてきた。


あのあと、ネコマサが賢者形態になることはなく日々は過ぎていく。


変わったことといえば、ネコマサが猫の姿のままで人間のトイレを使い始めたことと。

猫の餌の薄い味付けをやめてもらい、光正と同じ味付けで食事を作るようになったことくらいだ。

この辺りは光正も「ネコトイレ掃除が楽になって、食事を分けて作らなくて良くなったので楽になった」と喜んでいた。


光正も、特に賢者の姿になって欲しいとは思っているわけではないが

「女性ものの下着くらいは買っておこう」

とネコマサと相談し、室内用の女性ものジャージセットと下着上下セットなどをいくつか購入しておいた。

また人間化した時、すぐ身につけられるようにネコマサ部屋に常備するようにして。

以前の矯正用下着は流石に「コルセット閉められてるかと思った」と不評だったのでもっと緩めのものを用意してたりする。


あれから2ヶ月が経ち、光正たちの住む地域は梅雨の終わりがけという大雨が降る時期になってきたため、光正は外回りの排水やら近くの用水路やらをたまに調べるようになっていた。

九州の山間部は、梅雨の終わりがけによく水害が発生し、土砂崩れなども起こり得るので色々と注意が必要になるのだ。

場所的に水没したことはない土地であるけれど、川の流れ方次第では近くの用水路が溢れる可能性があるので草とかが詰まってないか見ているのだとか。


そして、いきなりの雷雨や大雨の日は突然停電することがある。


それを避けるために、パソコン類にはUPS(無停電電源装置)を装着しているが、急に停電した時はシャットダウンのためにいくつもパソコンを操作しないといけなくなるので面倒ではある。

年に数回、突然の予期せぬ停電があるので必ずつけておかないといけないが。

作業が中断されるので、ネコマサとしてはできれば「大容量充電池を設置して欲しいが」という話になってしまう。

その辺は、また新しい事務所作ってからね、とネコマサには話しているが。

なので、大雨になりそうな時は最初からPCをシャットダウンして過ごすことが増えていた。

おかげでゲーム制作の予定が遅れてしまうことになるがデータが飛んだり機材が壊れることを考えたら仕方ないことだ。

雷が落ちた時のためにアースもコンセント全てに取り付けている。


「このように天候が激しく変わるのは、私の世界では蝕の影響の時くらいなものだった」


居間で、ネコマサを膝の上に乗せて、光正が海の貝類の図鑑を開いて見せているとアプリからそんな声が聞こえてきた。

光正のスマホを通じて、ネコマサは会話できるようになっているが、このスマート首輪が前回人間の姿になった時に千切れ飛んでしまったので。

新たにベルトが伸びる素材で作り直して首に巻いてる。


「異世界では嵐とかないのか?」


「嵐という現象自体が異常気象だ。このように年に何度もあるとか異常だよ。去年は蝕の影響がここまできたのかと驚いたものだ」


「じゃあ、異世界は割と自然災害とかもないんだな」


「普通に地震がある世界の方が恐ろしい。この世界は我々の住む世界からすると常に蝕に襲われている地域のような危うさがある」


「でも災害被害に遭うことは滅多にないぞ」


「そんなしょっちゅうあってたまるものか。

しかし、仕事ができないのは辛いな」


外では、雨が強く屋根と窓を叩きつけ、時々雷がすごい勢いで鳴り続け夜空がピカピカと明るくなる。


「この世の終わりではないか。ミヒェルス国戦争の時もこれほどの嵐はなかった」


「まあ、家が吹き飛ばないなら雷も夜は綺麗に見えて楽しいが」


と言った瞬間、停電になる。

窓のカーテンを開けると、この一帯が全て停電になっているようだった。


あらゆる電子機器が止まると、家の中がしんと静まり返る。


窓の外には稲光が、空が雷の光で輝き、轟音が鳴り響く


「なんというか、世界の終わりを特等席で見ている気分になるな」


ネコマサがそんなことを言う。


「そういう視点で見たことなかったから、いつものことだと思ってたが」


「これが平気な人間の方が信じられん」


「慣れだよなれ」


外の稲妻の光に目を奪われていると、電気が回復してきた。


「今日はPC止めといてよかったな」


「全くだ。さて、この図鑑の続きを読ませて欲しいからもっと付き合ってくれ」


「はいはい、貝殻に興味あるのかね?」


「我々の国にはこのような妙な生き物はいなかった」


「そうなのか、ザリガニはいるのにな」


「ザリガニではないザッハッスナ神だ」


その日は、二人とも雷と雨の音を聞きながら夜をのんびり過ごしていたのだが、その時に物事が動いていたりする。


一本の大事なメールがその夜に来ていた。

しかし、PC立ち上げてなかったので気付いたのは翌日。


内容は、ゲーム制作をうちでやらないか、という勧誘だ。

以前からいくつか来ているので「またか」と思ってしまったが。

ただ送り主の名前、会社ロゴに見覚えがある。


ネコマサは記憶を頼りにゲームソフトの会社を探し、そのロゴを見つけた。


それは毎年数百万本売り上げるソフトをいくつも販売しているゲーム会社の大手。

しかも、その中の有名なプロデューサーからの直メールだったのだ。


会社を通してというよりは、個人的に誘いをかけている様子。


これは、いつものメールとちょっと質が違うぞ。


と思って、それについて光正が会社から帰ってきて、相談をすることになった。



光正も、そのメールを見て驚きを隠せない。

というか、自分がゲーム作ったことになっているので自分をスカウトしたいという感じの文面になっているところが、なんか申し訳ない。


「どうしようか」


「条件が良すぎて不安になるな」


ざっくり条件として挙げてあるのは、現在のナーム=ヒーローを作ったゲーム制作チームをそのまま受け入れてゲーム制作をしてもらうことを考えているということと。

これまで出してきたゲームについても権利の買取など行い、今後出していくゲームとシリーズ化させても良いという話と。

宣伝広告などは向こうが関わっているゲーム会社の方が全て行うので、今まで以上に人々の目に触れる機会も増えて売り上げが上がるだろうということと。


最初に、会社のロゴを使っていたのでそこのゲーム従業員かと思っていたが、ゲームのプロデュースを外部で請け負っている形のようで、従業員ではない様子。

なので会社の意図とかではなく、純粋にこの人物の意図によるものだというのがわかった。そうなると、余計本気度を感じてしまう。


基本的には、自由にゲーム制作に臨んでほしいと思っていること、などが書き添えてあった。


「これは、破格だな。

ネコマサのナーム=ヒーローをシリーズ化させて、大量に販売することができるぞ」


「ゲームの制作チームそのまま、というのは本当にあり得るのだろうかな」


「この人がそれだけの力を持っているならそうかもしれないが、ゲーム制作の重鎮だから、できるんだろうな」



とりあえず。

話だけでも聞いてみるといいのではないか。


ということになり、ネコマサにうまいことメールで返事を出してもらう。

この辺は賢者なのだからいい文章書くだろうということでお願いしたのだが、完璧なビジネス文書を送りつけたため、何か向こうがの評価も上がってしまったらしく。何度かメールのやり取りがあったあとに。


「なんか東京の事務所で会いましょうって話になってきたんだが」


と2日後の晩御飯の時に、ネコマサがスマホを通じて言ってくる。


「お前何した?」


「いや、こちらの典型的な文章形式に則って、失礼のないようにやりとりをしていただけなのだが」


「さすが賢者様だな、チート能力を持っていらっしゃる」


「そんなことあるか。

ただ、ちょっと専門的な話をしてきたので、それに返したら気に入られてしまったようで」


とその文面を見せてもらったら、どうやらゲームのキラクターを動かす時に使っているプログラムについての話だったり、使っているツールについての話と。

それをどうやって動かしているのかについてネコマサが答えているところで、なんかあっちのテンションが爆上がりしているのが見えてくる。


どうやら「こいつ、おもしれーやつ」と思われることをしていたらしい。


これは、異世界転生者の「俺、なんかやっちゃいました」展開ではないか。

まさかこんな隣で見ることができるとは。


などと感動してたりするが。

でもこれ、俺が書いたことになってんだよな。


と思うと、東京で直に会うなど無理な話だ。そもそもゲーム制作についてはザリガニについてよりも知識がない。


これは、どうしたものか。

なんとなくネコマサは東京にいきたがっている感じはするし。


でも、猫連れてゲーム事務所に入れるかなー

そもそも東京で猫宿泊可能な宿とかあるんかなー


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