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第6話 異世界のミヒェルス蝕戦争とフィギュア制作の日々と

新しいゲーム「ナーム=ヒーロー 2」の制作に取り掛かっていた。

ストーリーは自分の経験した内容を描けばいいので、割と悩むことはない。


第三次、ミヒェルス蝕戦争


次はこれをモデルにゲームを作るつもりでいた。

しょくによって消滅したはずのミヒェルス国が、なぜか蘇り周囲の国々へと攻撃を開始したのだ。


蝕で削られたものは消滅していく、という常識が覆された瞬間であった。


ネコマサの異世界での姿、賢者ジャルフ=ナーム=ガッハッスナを筆頭に、その対策が練られていく。

しかし情報が足りないため、いくつかの部隊にミヒェルス国に強行偵察に向かってもらうしかない。

ただ、その部隊はほぼ全滅してしまうだろう。


情報を持ち帰るだけのために、多くの戦士たちを死に追いやっていいのかどうか。

そういう点で皆が悩んでいた時に賢者の弟の勇者ナーム=シュエザックが立ち上がり、自分一人が向かい、そして情報を持ち帰ってくることを願い出たのだ。

多くの人数が入り込むより、ごく少数の最も強いものが、勇者が侵入した方が生き残る確率が高まるから。

確かに大人数で攻めていくよりは一人の方が目立たず生存確率は上がる。

姉として弟が矢面に立つことは避けて欲しかったが。

しかし他の勇者たちはミヒェルス国からの攻撃からそれぞれの自国を守るために最前線で奮戦している。

前線より遠い我が国の勇者くらいしか今は手が空いてない。


「我の守護神、オオウナギのシュエザックは掴みどころがなく、あのガッハッスナ神の攻撃すらすらぬるりとかわし最強の神となったと言われています。

私もそのようにするりと蝕をかわし無事戻ってこられるでしょう」


と皆を和ませるように神話を持ち出してきたりして、余裕を見せてくるが。

そこで少しでも生き残る確率が上がるように。そして情報を持ちかえられるようにと賢者が弟に手渡したのが「転移の灯火」だった。


一定の距離を離してから灯すと、そこの間に見えない道が作られ、一瞬で移動することが可能になる。精霊の道と呼ばれるものを利用するため異なる世界に入り込み移動するためにこちらの時間が進まないだけで、移動してる本人はそれなりに歩いたり移動している感覚はある。

ただ、これは蝕で覆われたような精霊がいない土地に道を作るには、色々と制限があった。

距離が近いとうまく動かず、遠すぎても道が届かずで設置にかなりのコツがいる代物であったが、この灯火を使うことで休憩し体力を温存したり。精霊に預けた荷物を受け取ったり、敵に出会うことなく拠点を作り移動を繰り返すことができるので潜入調査にはあったほうが生存率が上がる。

蝕に影響を受けた土地での動作も確認済みなので、姉は弟に使い方と距離の測定方法をしっかりと教えていく。

そして、蝕の満ちた空間でも自分の存在を常に確定できるような「認識の固定」薬を手渡し、薬が切れそうになったら戻ってくるようにと指示を出す。

目的は、情報を持ち帰ることなので生きて戻ってきてもらわないといけないのだから。



結果、勇者シュエザックは数日間の潜入の末、蝕に影響を受けたミヒェルス国から無事に情報を持ち帰り、それを元に賢者たちが「存在の可能性を引き出す術」を組み上げミヒェルス国の蝕からの影響を排除し、周辺国を守ることができた。


ミヒェルス国は蝕により存在が消されたはずなのに、蝕がその存在を許可するという手法を用い蘇っていたのだが、蝕の本能は許可を取り消すことなので、ここで矛盾が発生し暴走し始めたという状況だったらしい。

そもそも、蝕がなぜ存在を消したものに存在の許可を与えたのか。

これが最大の謎となっていたのだが、勇者シュエザックの活躍により原因がわかったのだ。


蝕の存在を認識している神々の存在。


本来、彼らはこちらの世界へ干渉はしていなかったはずなのだが、ミヒェルス国の賢者が大いなる知恵の技を使い、蝕を遠ざけるために別の世界の神々の認識を得ようとしたらしい。

しかし、別の世界の神々は人々が住まうミヒェルス国の存在を許可するのではなく、蝕により削られた後の国の存在を許可してしまった。


これは意思疎通がうまくいかなったというだけで、別の世界の神々が悪意を持って動いたわけではない。

別の世界の神々からすると蝕はこの世界での自然現象で、それがあるからこの世界が成り立っていると認識されてしまったらしい。


おかげで、蝕というものがある上でミヒェルス国も存在しているという状況が作られていった。


勇者が持ち帰った情報により、賢者たちがこの仕組みを解明したのだ。

別の世界の認識で動くものをこちらの世界の認識で止めることはできない。


別の世界の神々の認識を切るか、その神々を倒すか。

選択肢としてはその二つなのだが、


その時の内容を、弟が冒険した実際の出来事をゲームに落とし込むことにしたのである。



勇者はこの重要な情報をどこから持ってきたかというと、襲いかかってくる人物を倒すたびに現れる情報を集めていく過程で、この世界の神ではないものが関与してることにただどりついていったのだった。

大司教や王族を倒すと、さらに重要な情報が手に入ったという。


まさにゲームとして作りやすい設定だ。

ボスを倒していくと世界の理屈が見えてきて、自分の戦いの意味が微かに見えてくる。

そしてゲームではラスボスは別宇宙から干渉してきた神にすると、実際は情報を集めて帰ってきただけのこの勇者の潜入調査だったものが、勇者が蝕の存在を許可していた別宇宙の神からの影響を断ち切る、という方向に持っていくことができる。

そして元いた世界での第三次ミヒェルス蝕戦争はそもそも起こらない状況を作ることができるのではないか?

別宇宙の神々の影響をゲームで切り離すことができるのではないか?

と思えるようになってきた。



ゲームを作る際にストーリーを描いて、それが再現されていくように大まかな流れを作っていくが、それらは自分が経験した内容なのでスラスラと出てくるのではあるが。

ゲームとして楽しめる形に持っていくとなると、色々と勉強する必要がある。

なので、それ系のゲームをいくつも購入し分析し。

モーションからグラフィックからそれらを全て体外記憶領域にて分体に分析させ、最も世の中に受けそうなパターンをまず作り。

そこから、自分が経験した実際の内容に近い動きや戦いのパターンを作っていく。

たまに光正がモジモジくんみたいなタイツで全身を包んで客間でグリーンバックを広げてモーションキャプチャーとかやらされたりしてる。

それらの情報を、データをまとめていく作業をネコマサ本体が行う。


のであるが、猫なので本体は難しいことができないためほぼ寝ているようにしか見えない。体外記憶領域が中心となり、そこにいる分体が中心となり制作が行われていった。

半非物質領域での動きは一般人にはよくわからないのだ。


体外記憶領域で分体が生み出していく仕組みは同じくサーバー内で動く分体へと受け渡され、プログラムとしての形を成していく。


その過程を自動化させてゲームの内容を作っていくので、制作期間も短くなっていく。


体外記憶領域、自動化されたプログラム。

分体による賢者の思考プロセスを使った調整。

一度方向が決まってからは、ネコマサ自体はあまり張り付いて仕事しなくてもいいので時間が開くのだが。

物珍しいものが多いこちらの世界では、好奇心が途切れることなく動き回り、ネット上の動画や様々な科学的な知識の得られる映像、他国の言語、等を見てまた知識を得ていたりする。

もう5カ国後くらいは話せるらしい。

自分の世界を救えるようになったら、世界旅行に行きたいなどと言うのだが

「猫は飛行機だと貨物室だ、冷暖房もないし外は見えんよ」

と光正に言われショックを受けていた。


ならばプライベートジェットとか、プライベートボートを手に入れて回ればいいではないか、と言うと。

「猫自体が検疫とかで入れない国とかもあるんだよ」

と言われ、またショックを受ける。最近は特定外来種扱いになって野良猫は害獣にも認定されたりしてるという話を聞き。


「この世界に、猫に自由はないのか」


などと言いながら、自室へと消えていった。

異世界でも猫には自由はないだろうに、と光正は思っていたが。

時間が空いたら、ネコマサは3Dプリンタでもといた世界の人々を立体化させてフィギュアを自作していたりする。

記憶から立体のデータをPCで作り出力する。

出力するまではネコマサでもできるのだが、それを組み立てたりバリをとったりするのは光正の仕事。


おかげで、光正はこの歳になってフィギュア制作、プラモデル制作の知識を叩き込まれてしまうのだった。


「色も塗ってくれ」

などとネコマサが言うため、光正は家の片隅に塗装ブースを作り、エアーコンプレッサーなども購入。

プリンターから出力した部品を洗浄、塗装、食器乾燥機で塗ったパーツを乾かし、組み立て。

ネコマサの希望通りのフィギュアを作るために技術を磨いていた。


そもそも、モノを作るのが好きではあるので率先して手伝っているのもあるが。

異世界の衣装、鎧、武器などが珍しくて一緒に作っていると楽しいというのもあった。


ネコマサのために手を貸してあげたい、という素直に人の良いところが強くあるので、飼い猫の喜ぶことをしてあげたい、と思う気持ちが一番強いところがある。


そしてある時、美少女フィギュアの制作をネコマサが頼んできた。

これまでは鎧を身につけた騎士や戦士、一般の人々の姿が多く、ファンタジー系の男性フィギュアが中心となっていたのだが。


急に、美しい女性の姿を3Dプリンタで出力してきたのだ。


「これは、私の姿だ」

とネコマサは言うが、かなりの美人。

これは、自分の自意識補正がかなり入っているんだろうな。

と光正は思ったのだが、それを口にするほどデリカシーがないわけではない。


まぁ、自分が美しかったとは以前から言ってたから、そういうふうに受け取っておくほうが良いだろう。

そもそも、猫の姿が美しいのでそれで十分だと思うが。

などと光正は思っていたりする。


自分の姿、と言うだけあって制作中は色の指定がものすごく細かった。

どうやら、簡単な人物から光正に作らせていき経験を積ませ、だんだん塗装の腕が上がってきてから、満を持して自分の姿をプリントアウトしたらしい。

大きさは1/6サイズくらいか?


すっかりモデラーと化した光正が数日かけて完成したものを見ると。


薄い青色の髪の毛は緩く巻いて腰までの長さがあり、紫のグラデーションが入っている。

目の色もアイスブルーで透明感があり、体の線を浮立たせる服は賢者が身につける制服のようなもの、だと説明された。

額につけられた宝石類、手に持った豪華な杖、小物も凝っているので塗装でかなり苦労したようである。

純白のラメの入った服は出るところは出て、引っ込むところは引っ込んだナイスなボディを包み込んでいる。


全体的に「美しい異世界の神官」の雰囲気があり、賢者というより女王とか皇女とかそのような気品がある姿だった。


先に作ってあった勇者シュエザックの隣に並べてあげる。

勇者は純銀の兜と鎧に身を包み、カッコよく剣を振るう姿で立体化されている。


その二人の並んだ姿をネコマサは懐かしそうな目をしながら眺めていて


「いいなこの世界は、思い出が忘れられないくらいにしっかり残せて」


と言って、その棚の前でネコマサは丸くなって眠りにつくまで、いつまでもそのフィギュアたちを眺めていた。


光正も、ネコマサが喜んでくれたことで大変満足し、もっと腕を上げようと考えたのであった。



土日は更新お休みします。

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