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第4話 税金とザリガニの神の導きと



税金対策

どうしたものか。このままだと、税金が数千万円一気に支払うこととなってしまいそうで恐ろしい。


光正は会社の経理のところに来ていた。一応部門責任者として仕事しているので、毎日現場作業終了時に経理部に本日の伝票などを持っていく。

経理部と言ってもプレハブ事務所の片隅にある机とパーテションで区切られたようなところなので大会社のようなセキュリティもシャキッとした感じはない。


経理部には同期の、社長の娘がいる。

同期といっても入社した年が同じだけで、相手は28歳。

光正が大学卒業して入社した際に、高校卒業で入ってきてた子である。初めて見かけた時は髪の毛はロングで茶髪という田舎の陽キャグループに一人はいそうな雰囲気だったが、今は落ち着いて黒髪セミロングできっちっと制服を着こなしている。

入社研修で同じグループになってから仲良くなり、仕事でも顔合わせすることも多いので同期の中では会話してる方かもしれない。

社長の娘とか、大変だなぁという同情心から親切にしてるところはあれど下心はない。

そもそも、社長の娘に手を出そうものならクビか時期社長候補、今後のネコマサとの生活が安定しなくなってしまう。

そんな危ない橋は渡らないのがいい人生を送る秘訣なのだ。


いずれは経理の責任者になるべく、社長の弟と兄の奥さんが経理を昔から行なっているため、叔母たちに現在鍛えられているというところだ。

経理は全て身内で固めているという徹底ぶり。

過去に信頼してた経理、税理士にお金持ち逃げされたことがあるという話を聞いたことがあるので、それ以来信用できるのは身内のみになったんだろうな。

と思うが俺には関係のない話。

一族経営なので、社長の兄弟姉妹が要職についているのはまあ普通である。


なんとなくキャラ的に明るく話しやすいため、経理に来るたびにちょっと最近の話などをしていくわけだが。

その時に税理士について聞いてみた。会社に来てる税理士事務所についての評価とか個人でも相談に乗ってくれるのかとか。


「なんですか?独立して自営業でも始めるんです?」


と社長の娘がノリノリで聞いてくる


「いや、知り合いがひと財産作ったんだけど税金についてわからないから、確定申告をその辺信用のおける税理士に任せられんかなといっててね。それでこの会社に来てるとこはどうなんかなと思って」


するとぐいっと近づいてきて小声で


「ここの税理士はお父さん、社長の同級生ですから、秘密の話なら社長に漏れる可能性ありますよ」


と言ってくる。

そうか、やはりそんな感じになるのか。税理士とはいえ人である以上、特に田舎の仲良し同士だとぽろっと漏れる可能性も大いにあるだろう。

ん?この子、その税理士探してるの俺のことだと思ってないか?


そう思ったので尋ねてみると、


「知り合いとか言ってますけど、大体そういう話の時は本人が、というのはよくある話ですよ。

何かメルカニとか転売でもして儲けたんですか?」


「そんなことはしてない。真っ当な稼ぎだよ」


「この会社副業禁止ですよー」


「あ、いや、そういえばそうだった。まぁなのでバレたらいかんのでね」


とコソコソと話しているので側からみると怪しいか、仲がいいかどちらかに見えているだろう。


「そんな秘密の話なら、私などはどうでしょう?」


といきなりそんなことを言う



と思っていると

「私、すでに簿記1級はとってたんですけど、去年税理士の資格も取りまして。

将来税理士事務所を開業して、この会社の専任税理士にいずれなることになったんですよ。それでしばらくどこか違うところで修行してこいって言われてまして。

ここから東の税理士事務所に来月4月から転職することになったんです」


と話を続けてくる。

ここの社長は、身内で税金関係の誤魔化しもやってしまおうという作戦なのか。

恐ろしや。

全て一族経営にしてガッツリ囲うつもりなのか。


いや、それよりも別の税理士事務所に勤めるからと言っても、身内だと話が漏れるのでは?


などと考えていると、なんかうまい具合に言いくるめられて一度話を聞いてもらうことになってしまった。

要は、経験を積んでおくと新しいとこに行っても舐められないから、とそんな話だ。人の役にたつなら、ちょっと協力してあげてもいいかな、などと考えてしまう人のよさと、押しの強い女性には負けてしまう習性がある。

副業禁止の会社で副業で儲けてる話をした時点で、彼女に弱みを握られているのでどうしようもない。



まぁ色々あったが税金については、これでとりあえず道筋が見えるとして。

ネコマサは、これからさらにゲームを出していくと言っているが、我が家の環境が大丈夫なのかと心配になってくる。


太陽光発電に蓄電池も設置しないと電力の安定供給が難しくなるんじゃなかろうか。

すでに電力会社には家庭用電源ではなく事業所用の電気使用のやり方などを聞いて対応してもらうようにしてたりするが。


いっそ家の隣にある元々畑だったところに専用の建物でも建てるか。


とだんだんと頭の中で想像が膨らんでいく。

ネコマサは自分の世界を救うため、とか言ってゲーム作っているのだからできるだけ協力はしてあげたいが。


とそんなことを考えてしまうくらいに飼い猫に入れ込んでいる中年男性であった。



ネコマサは、過去に、パズルゲームから始まってギャルゲー、ロールプレイングゲーム、アクションシューティング、そして現在はいわゆる死にゲーと呼ばれる高難易度アクションゲームを作ろうとしている。


色々と作っているが、イラストなども分体が描いて音楽まで作曲しているため一人で全てやってるから恐ろしい。


全て賢者としての知識と経験を圧縮してこちらの世界に持って来れたので可能になっているのだ、と光正は言われているが意味はよくわかってない。

なんか異世界ですごい賢者だったので、こちらでもすごいことができているんだろうな、程度にふわっと捉えている。


前世が賢者の猫が、チート能力を駆使して無双する、みたいな話はよくあることだろうし。


ネコマサとしては、こちらでゲームという素材があることを知った時はとても驚いた。

三次元世界から二次元世界へ、違う次元でこちらの意図を汲ませてプレイヤーという存在を動かしている視線は、まるで神の視線の如く感じられたのだ。


ゲームで別の世界を作るのではなく、

ゲーム内に、自分のいた世界を再現してみる

それを神の如き視点で見ていけば、蝕に対しての対策で、自分の行動で見逃していたものが見えてくるのではないか?

自分の世界を救う道が見えてくる可能性があるかもしれない。


というふうに考えるようになり、光正の家に転がり込んでから1ヶ月くらいでその可能性を探っていくことになった。


光正にゲーム関連の資料を教えてもらい、自分でインターネットで探し、情報を集め。

そしてインディーゲームというジャンルがあることを突き止めた。

猫の手では操作が面倒くさいことが多いし、光正とのコミュニケーションが難しいため。

半年後にはスマートウォッチを改良したスマート首輪を自ら開発し、プログラムとアプリまで制作。

それをスマホに入れて、ネコマサの声を届けることができるようになった。

そのあとはパソコンとの連携、スマート家電との連携などを設定し、猫の手を使わなくてもあらゆる家電を扱えるようになっていったのだ。

とはいえ、ものを持ったり運んだりはできないので光正にその辺はお願いしている。

「奴隷がこちらでも買えればいいのに」

と物騒なことを言うが、光正がほぼ奴隷のようにこき使われているので問題はない。


それから、実際に自分でもゲームをやってみるためにいくつかダウンロードしたり、スマート首輪や猫の手では対応できないゲームは光正にやらせてみたりして理解していく。

おかげで光正はゲームを高校生以来、毎日やりこむこととなってしまい、それなりのゲームスキルを手に入れてしまうようになっていく。


そして、世界中でゲームの賞を多くもらい、一千万本以上の売り上げをしているという世界規模で賞賛されているゲーム「エムデンリーング」というオープンワールドRPGゲームを光正にさせていた時に、閃いたのだった。


この世界観は、自分の世界にとても似ている、と


特にザリガニがめちゃくちゃ強いのに感動した。

前世の名前の由来である湖の神、ガッハッスナを彷彿とさせる。

ザリガニが、光正が操作するキャラクターを狙撃して倒したり、ボコボコに倒したりしているのを見ては喜んでいた。


このゲームを作った人間はわかっている。

ガッハッスナ神のご加護があったゆえに世界的にヒットしたのであろう。

と勝手に思い込んでいたりする。


そこで今度はこのゲームを作っている会社のゲームを買い漁り、全て光正にクリアさせて。そしてゲームのシステムなどを研究していくことになった。

いわゆる「死にゲー」と呼ばれる難易度の高いゲームとして有名らしく、光正も毎日毎日ボスに何度も挑戦しては敗れると言うことを繰り返していた。

死にゲー、と呼ばれるものが、どうやら自分の世界の理に近いものがある。とネコマサは感じたのだ。


目指すは死にゲー、

目標が決まり、実際にゲームを作る練習としてパズルゲームやシューティングゲームをささっと作っていき。

その完成度が結構良かったので「インディーゲームとして売ろう」と光正が提案。

何せ趣味に使うために溜め込んでいた給料が、ネコマサのために湯水のように減っていくのだから、少しでも足しにしたいと思うところだ。


すると、思いの外ウケて売れまくって今に至る。ギャルゲーは異世界がモデルとなっているが、これはネコマサのいた世界をモデルに作ったらしいので、実際にこれまで出会ってきた貴族の小憎らしい娘たちをモデルにした、とかそんな話をしており、そういうリアリティのある設定も何かウケが良かったらしい。女性向けのゲームもついでに作って出してたりする。攻略対象の王子のモデルは弟らしい。


そして、ゲーム制作に慣れて機材も整ってきた時に、エムデンリーングを作った会社のブラックソール、というゲームのシステムに似たゲームを作り、販売した。

それが個人で作ったにしては「ブラックソールをリスペクトしてる人間が作ったに違いない」とそちら方向でも受けてヒットしてしまったというところ。

いわゆる「ソールライク」という言葉があるくらい、マニアの間では人気のジャンルであるのだ。

名前は「ナーム=ヒーロー」異世界での勇者の一人、弟の活躍の一部をゲーム風に作ってみたというものである。

そして、そのゲームを作った後から、ネコマサは自分の世界の様子が変化しているのに気づいたのだった。


ナーム=ヒーローで戦うシステムは、それぞれ元の世界で使われていた概念と合わせるようにしており、弟が戦う際に使うであろう技や武具をそこに当てはめるようにしていた。

特定の敵も蝕をイメージし、それらとの戦いをイメージしていったわけだが。


ゲームがある程度売れて、クリアしていく人数が増えていった際に異世界を見通す目を使い元の世界の情報を確認してみると、世界が滅亡する数年前に行われた戦い、本来は弟の部隊が蝕に負けたことになった戦いが、勝利を収めていることになっていたのだ。そして蝕の侵食の影響が変化している。


元の世界情報が書き換えられ、余白が増えていっている。


ゲームを購入したプレイヤーたちは一人一人主人公キャラクターを動かして戦っているのだが。

こちらのゲームプレイヤーが戦場にいる一人一人とリンクした状態になるようで、1万の軍で戦った際にこちらのプレイヤーが1万人いると、全ての兵士にこちらのプレイヤースキル、力が上乗せされたり、戦い方の技術が上がることが確認されたのだ。中にはゲームへたくそもいるので、そのスキルに繋がった兵士は残念なことになってしまうのだが。

ただ、死にゲーを好んで行う人間は総じてプレイヤースキルが高く、8割ほどが強化される結果になっていた。


向こうの世界では「神のご加護」という術があり、異世界より神の技をランダムに与えられるというものがあった。

こちらの世界で言うなら、戦闘中にガチャを回して当たりのスキルに繋がれたらラッキーというもの。

これは神の気まぐれ、とも言われており良いスキルに全員が当たるわけではなく、もうどうしようもない状態になった時に、いちかばちかで行うエンチャントだ。


どうやらこの「神のご加護」がゲームプレイヤーのスキルと連動してるらしい。

こちらの世界から異世界に繋がっているのだ。


そしてゲームプレイヤーで最も上手い人間は、弟へ「神のご加護」としてつながり、勇者が戦場を駆け抜けているのを手助けしていることになる。

こちらのゲーム技術をあげれはあげるほど、弟や兵士が強くなるというもの。


神のご加護。


異世界で賢者やってる時も、追い詰められた時によく使っていたが、こういう仕組みになっていたとは知らなかった。

賢者やってても、ゲームという概念がないために、別の異世界で行われているゲームのプレイヤースキルが繋がっているとは思いもよらないことだ。


それを知ったからには、ネコマサの目的が決まった。

プレイヤーがゲームするほどにスキルが上達するような作りで、多くの人間が、1千万人がプレイするような、死にゲーを作るぞと。


今の所、数万人がプレイするゲームになって口コミで広がり、徐々に「ナーム=ヒーロー 」もプレイヤー数は増えている。もうじき十万人は突破するだろう。


こちらのゲームで異世界の軍隊を強化することができる。


自分がこの異世界に導かれたことに、神に感謝した瞬間でもあった。

ガッハッスナの導きであろう、とたまに光正に語るのだが。


あの凶悪なザリガニが、異世界を救う神な訳あるまい。


と光正は思っていたりする。





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