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第3話 異世界の賢者、異世界を学ぶ

《りりき》

ネコマサはケーキを食べた後、テーブルの上に飛び乗りモニターのスイッチを入れる。


と言っても、この室内の機械全て、ネコマサの喉についているスマート首輪で操作できるので手を触れたり足で蹴ったりしなくても操作ができるようになっていた。

これらのシステムもネコマサが既存のものを応用して作っている。


最初はノートパソコンしかなく、猫でも操作しやすそうな物理キーボードを購入してもらってからプログラミングの勉強を開始したのだが。


まず自分が賢者の生まれ変わり、異世界の住人であると光正に伝えるまでには数日の時間を要した。


伝達手段がないからだ。

理力りりきを用いて脳に直接問い掛ければ通話可能なはずだ。

と前の世界の常識で使おうとしてみるも、こちらの世界の人間には理力を感じるセンスがなく脳に直接話しかけることは無理だった。


ロウ引きの板があれば爪で文字が書けるのに、と思ったがそういうものは無い。

ペンは猫の足では扱えない。

最初ペンを握ろうとしてジタバタしてたら、それで遊んでると勘違いされてしまったこともあった。


爪で引っ掻いて文字を床に残すか?

と爪痕が残りそうな板に文字を書いてみるが、そういえば異世界の文字をこの世界の住人が読めるはずがない。

と気づいて文字作戦は諦める。


続いては鳴き声によるアピール。

しかし、鳴くたびに「ご飯が欲しいのか」と言われ美味い飯が出てくるのでそれを食べてたら眠くなって。

寝てたら朝がきて、と数日それを繰り返し「鳴き声も難しい!」

となり。


まずはこの世界の文字をパターン化して学習せねば。

と光正が会社に行っている間に家にある書物らしきものを広げ、それを眺めて文字のパターンを理力で意識の体外記憶領域へと詰め込んでいく

エーテル体、霊体、オーラ、この世界ではそういう言い方をする場合もあるようだが理力はないがこの半非物質領域はこの世界にも存在し、扱えることがわかっていた。

半非物質領域に体外記憶領域を構築し、自分が見たものを全てそこに記憶させていく。

猫の脳みそでは記憶容量がほぼ無いので、外部ストレージに記憶させるようなことをやっているのだ。

そして、体外記憶領域には自分の意識の分体を配置し、文字の規則的なパターンと活用を認識させていく。

今の世界でいうなら人工知能、AIが分析していくのに近いが、賢者の分体は、その人物そのものの知識と経験を用いるので人工知能などよりももっと早く最適な結果を導き出すことができた。

それを行ってる間、猫の脳みそは対応できないのでひたすら眠る。


飯食って、ひたすら眠って。

体外記憶領域で文字列のパターンを解析し終わって、今度はそれを音声と比較しパターン化していく。


なぜか、現地住民の言葉の意味は理解できたので言語と、自分が得た文字のパターンを結びつけていく。

そのためには、サンプルとなる人間の言葉をたくさん聴かないといけないが、光正は一人暮らしであまり喋らない。


サンプルが少ない。


と思っていたが、何かテレビという娯楽を映す画面、あるいはインターネットの動画というものが存在し、それらは光正とは比べ物にならないくらい言語パターンが豊富であった。


次は光正が会社に行ってる間に勝手にテレビをつけ眺めることを数日行う。

すると、言語、文字情報と言葉が全て関連付けができた。


今度は、これをどうやって外部に発信するか。

頭の中では文字も読める、言葉も理解できる、インプットは可能だがアウトプットが難しい。

猫の声帯では限度がある。

何回かやってみようとすると、変な鳴き方になるので光正が心配して動物病院に連れって行ったほどだ。


ついでにワクチンとかの予防注射もされたり血液検査とかもされたりしたが、この世界は衛生管理が犬猫に対しては、賢者がいた世界の奴隷以上の扱いをされているのかと驚愕したものだった。


なぜ、このような役に立たない畜生どもにこれほどの良い扱いをするのか。


その辺りも興味が湧いたが、とりあえずは会話、自分が異世界の賢者であることを光正に知らせねば。

このままただの猫として一生扱われてしまう。

猫の寿命は15年ほどど病院で話していたが、これは急がないとこの肉体が滅ぶ前に結果を出せない。


で、ある時、光正が会社の資料を家で仕上げるためにと、ノートパソコンを扱い始めた。

キーボードに入力すると文字が画面に出てくる。


これだ!


これなら猫の手でもできる。

しばらく仕事している正光の手元を覗き込んで、キーボードの配列と使い方、文字の表示のされ方を観察。

それを体外記憶領域に記憶させ、分体に分析させパターン化。


そして、自分でも扱えるように調整していく。


光正は、猫が仕事中にそばにやってきて邪魔をしてくるシチュエーションに萌えていたが、猫の習性的に動くものを目で追う癖があるので手元でかちゃかちゃしてる指をつい見てしまうのはある。


そして、何日か自分の正体を教えるタイミングを見計らい。

ワープロソフトを立ち上げ、光正がトイレに立った時にパソコンの画面に文字を入力する。


「私はネコマサ。異世界の賢者である」


最初、光正は


???


という顔をしていた。

フリーズしてたので、そこから追い打ちをかけるように


「私は猫の姿をしているが、中は人間である」


とキーボードに打ち込む。

それを見て、光正は


「・・・YouTubaのドッキリ企画?」


とかつぶやいた後、部屋中を隠しカメラがないか探し回り。

何も無いことを確認してから首を左右に振って。そして私に話しかけてきた。


「ドッキリでは無いのなら、これは一体なんだ?」


私は光正の問いにキーボードを叩きながら答えていくと、だんだんと光正の表情が変わっていく。

しまった、化け猫とか思われる可能性があったの忘れてた


そう、この世界には妖怪という概念、そして化け猫という概念があったのだった。

それ扱いされて捨てられたら、今までの苦労が水の泡になってしまうが。


と心配していたら


「そうか、わかった。お前の事情はわかった。

ただ、これから先はどうするんだ?お前が猫賢者だとして、何をしたいんだ?」


と協力してくれそうなことを言ってくる。

おや?私を化け猫扱いはしないようだぞ。


「なぜ、私の言葉を信じる?」


と聞いてみると、光正はニコッと笑って


「面白そうじゃないか。俺を騙したところで誰も得しないだろうし。ドッキリ企画でも無いなら信じた方が人生楽しくなりそうじゃないか」


と言ってくる


「小学生の時からさ、異世界に自分が行って無双するような話には憧れてたんだよな、異世界ものとかいうジャンルも読み漁ったし。

それが、異世界から賢者が猫になって転生してくるとか、新しいジャンルで面白そうだが」


となんか一人で感激してるので、まぁ良かったのかもしれない。


「それに、お前がウチに来たのも何かのご縁だろうし、何か手伝えることがあったら手伝ってやるよ」


とまで言ってくれて。

私はとても感激したのだ。

なんの関係もない異世界の人間に、なんの見返りもないだろうに手伝いをしてくれるなどなんてお人好しで、幼子のように危機感のない人物だろうかと。


この世界が平和で豊かであるからこその危機感のなさだろうか。

普通だったら私を敵勢力とか異世界からの脅威と捉えるだろうにと思うのだが。


この人の良い世界なら、私も猫の姿でも自由に生きていけるかもしれない。


と思えたのである。



そんな去年のことを思い出しつつ、ネコマサはゲーム制作の続きを開始し始める。

最近は喉のスマート首輪から直接入力が可能になったため、ゲーム制作スピードが上がってきていたのだった。


今日も4台同時に使っているが、自分の分体をプログラム上に放って、それが自動的にプログラムを組み上げていくようにしている。

いわゆる人工知能にプログラムを書かせている状態なのではあるが、分体なので本人がやってるのと変わらないため人工知能に任せるよりも早く正確。

同時に四人の凄腕のプログラマーが作業してる状況を作り出しているし、分体は休憩必要なしなので24時間働けるのであった。


ある程度分体に今後の動きを指示してから、ネコマサはソファの隅に置いてある毛布に潜り込み寝ることにした。


室内はエアコンで少し冷えるくらいになっているので毛布があってちょうどいいくらいだ。


この世界は快適すぎる。

自分の役目を忘れそうになってしまうが、弟たちを救うためにもこちらの世界でゲームを作り続けないといけない。


異世界からは別の世界が本のように時間に縛られずにみることができる。

この世界から、自分のいた世界を見ると弟たち勇者が倒れた後に滅ぶことになっているが、私がこちらの世界に来たせいか、完全に本が終わっていない。

まだ余白が生まれているように見えるから、ストーリを変えられるようにしないと。


自分の世界の現実を、この世界のゲームに投影し問題を解決していくためにも。


あと1台パソコン増やさないと間に合わないかもしれないな。

と考えながら、眠りについたのであった。


まだ続きます

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