第17話 ついに異世界を救うためのゲームの発売開始
翌朝、光正が目を覚ますと、何やら隣に柔らかくて温かい物があるのに気づいた。
そういえば、昨日はネコマサが猫に戻ったので、そのままベッドで自分の布団に潜り込んできて一緒に寝たのであったが。
家では、光正の寝室と趣味の部屋である2階は出入り禁止なので、ネコマサと一緒に寝ることはない。
なので、初めて一緒に寝たことになるのかな。
などと考えながら寝返りを打つと
そこにいたのは全裸のネコマサ、人間バージョンだった。
「うひゃー!」
変な声を出して飛び上がると、ネコマサが目をこすりながら起きてくる。
「なんだ、変な声出して。昨日は人間の姿で歩き疲れたから、まだ寝かせてほしいんだが」
「いや、なんで人間にななってんだ?」
言われて気づいたのか、自分の姿を見下ろして。
そして無言で二つ枕を光正に投げつけて
「スケベ」
と言って布団で体を隠す。
「なんで猫から人間になってんだよ」
「東京では複数の人間に人として認識されせいかもしれんな」
と言いながら、枕元に転がっていた光正のスマホを操作し昨日一緒に映った写真がSNSに挙げられているのを見せてくる。
顔にモザイクがかかったりしているが、確かに猫マサのそれなりに綺麗な姿がわかりそうな感じで出てるし。
マサマサのゲーム制作者とか書いてあるから尚更だろう。
それに「超美人プログラマー」とか「ゲームの中から出てきたような」とか表現されていてそれなりに多くの人に見られていたりするようで。
「顔を隠したくらいでは私の気品は隠れないのだ」
などとネコマサが言っているが。
「とりあえず、人間に戻ったならシャワーでもあびてくるといい。
服は昨日のそのまま着たらいいんじゃないか?」
「せっかくだから新しいのを着たい」
「洗濯するの俺なんだけどな」
などと言いながら、ネコマサの荷物から新しい下着と服を選んであげる光正であった。
ネコマサはシャワーを浴びながら、一緒に寝ると心地よかったなーなどと思い返していたりする。
猫の姿でもそうだし、夜中から人間の姿になったが。一緒の布団で寝ている状態はとても安心した。
これは、私が光正を信頼してしまっているからなのか、猫としての肉体がそれを求めているのか。
人間は理力により生存させられていて、その理力は宇宙の深淵では皆同じように繋がっている。
より相手を認識するほどにこのつながりが強くなり、お互いの理力の流れが同じようになっていくと、いわゆる「好き」「愛してる」という感情が生まれていくというのを、頭では知っていたが。
果たし、この自分の感覚がそれなのかどうなのか。
理屈で常に考えるが故に、ネコマサにとっては分析できないものは保留し後日考えるということにする癖がついている。
明確な答えが出ないものに頭を悩ませても何も始まらない。
だから、今は、とりあえずうまい朝ごはんを一緒に食べて、家に帰るだけだ。
飛行機は午後からの便なので、朝はゆっくりホテルで過ごして、そのまま空港に移動することにした。
ホテルからリムジンバスが出ているということに昨日気づいたので、光正がそれに乗って帰ることを提案する。
今日のネコマサは、薄水色のカーディガンと白いシャツ、それに白色のフワッとした長いスカート姿。電車とモノレールでもよかったのだが、田舎者は車で移動がデフォルトなので、東京に来て毎日歩き回って疲れたというのもある。
電車も座れるとは限らないし。
そして、東京での日々も終わり、飛行機に乗って無事に家に帰ってきて。
荷物を運び込んで、とかやってるともうネコマサは猫の姿になって自分の部屋に入っていった。
その後には脱ぎ捨てられた女性用の服が点々と落ちており、それを拾い集めつつ光正も家に帰ってきて一安心であった。
ネコマサが電車の中とかで猫になったらどうしよう、とか常にドキドキしていたからだ。
そして、日常が始まるのだが、翌日から光正は会社に出社。
ネコマサは家でゲーム制作に取り掛かる。
結局、山国の提案していたことには参加せず、独自にゲーム制作を行うこととし、その連絡も家に帰ってすぐにしていたらしい。
すると、仕方ないと認めてくれて、また参加したくなったら声をかけてほしいとも言われ。
ゲーム業界に顔が効くので、困った時は頼ってほしいとも気軽に言ってくれるので親切な人である。人間性がいいのか、単に悪意など持ってない純粋にゲームが好きな人なのか。
次の休日には、田辺美香もやってきた。
東京の話を聞かせろと、今後どうするのかとか色々と聞きたいことがあったらしいが、会社で聞くわけにもいかず週末まで耐えていたそうな。
「LINNで連絡しても、詳しく教えてくれないから来ましたよ」
「ちゃんと教えたじゃないか」
「あんな短文だけで詳しくわかるわけないじゃないですか。そもそも、正光さんが東京住むのかどうかも聞けてないのに」
「書いてなかったっけ?」
「書いてなかったです。それとも言いにくいからあえて書いてないのかと思ってこちらはドキドキしてたんですから」
などと、家に来て客間で麦茶を飲みながら身を乗り出さんばかりに言いたいことをガンガン言っていく感じで会話が進んでいたが。
光正はその勢いに押され気味で。
「このままこっちでゲーム作ることになったから。新事務所建築についても、また力貸してほしいんだが」
と光正が言うと、ほっとした様子で。
「東京にはいかないんですね?」
「ゲーム性の違いで、ネコ・・・ガーナとも相談して一緒にやらない方がいいかという話になったんだ」
「わかりました、じゃあこれからも毎週きますからよろしくお願いしますね」
「毎週くるの?」
「迷惑ですか?週2回でも3回でもいいですよ。新事務所の話もあるし、税金についての話もあるんですし、あと一緒に食事とかも・・・」
「うーん。これから1ヶ月くらいはちょっとゲームの締めで忙しくなるから、毎週は難しくなるかもしれない」
「じゃあ、連絡しますから、いい時にきますね」
と美香の方も押せ押せでくるようになったが、光正はイマイチその意図がわかっていなかったりする。
光正の頭の中には、社長令嬢と男女の関係になることなど現実として存在してない、認識されてないものとして考えているので、最初からそのイメージすら湧かないようになっているため、美香の色々な下手なアプローチについてさらに気付かないようになっている。
それを美香の膝の上で撫でられながら、様子を見ていて。
ネコマサは「光正の認識を変えられるほどの理力を、美香が動かすしかないのではないか」とか賢者的視点で考えていたりもする。
流石にネコマサは女子なので、美香の狙いなどもわかっているのだが。
なんでこんな朴念仁に好意を寄せるのか、と思っていたりもするので、ちょっとしたサンプルとして見ているところもある。
2年ほど一緒に過ごしているが、ネコマサは光正の私室と趣味の部屋がある2階には全く立ち入ったことがない。
ネコマサ自体も、光正のことを全て知ってるわけでもないので、何か男として特別な部分、魅力的な部分を美香が知っている可能性もないわけではないな。
今後会う時があったら話を聞いてみるか、などと思っていたりするが。
今は、膝の上で撫でられてゴロゴロしてるだけであった。
そして、お盆が過ぎて蝉の声がアブラゼミからヒグラシがメインになってきて、秋の気配が近づいてきた頃。「ナーム=ヒーロー2 ミヒェルス蝕戦争」の大体の形が仕上がってきた。
これから細かいところを詰めていくようで、ネコマサは人間形態になり、また溜め込んだ理力を使い体外記憶領域と分体たちをフルに活用し仕上げていく。
食事も、合間合間に固形の栄養食や液状の栄養食を口にするだけで、ほぼ部屋に引きこもり状態。
猫に戻ったり、人間の姿になったりしながら。
夜中、トイレに起きると家の中をボサボサの青い髪の水をしたらせながらのそのそ歩く女が全裸で歩き回っている状態にでくわし、光正は悲鳴を上げかけたこともあったが、時に事件もなく時間は過ぎていく。
ネコマサが夜中にシャワーを浴びて、タオル忘れたので部屋まで取りに帰ってるところに遭遇したというだけなのだが。
たまにはちゃんとしたものを食べるのだ、と強制的に食事をさせられる時もあったりと、光正はネコマサの様子を見ながら、健康状態を気にしていたのだった。
そして、秋になった頃、ついに発売が開始された。
インディーゲームとして一部で注目を浴びていた「ナームヒーロー2」
発売から初動で数万一気に売れ、そしてゲームをした人間からの評価もよくその後も売り上げは伸びていく。
前回東京で対話した人たちも、レビューとか書いてくれたり、感想をSNSに書いてくれたりして、またいい宣伝になったのもある。
一応、自分たちがゲーム出す前に
「このゲームをやって感想を述べよ」
とネコマサから光正に、東京で直接会った人たちが作ったゲームを押し付けられ、それをクリアさせられ。
その感想をネコマサが当人たちに送ったり、SNSで宣伝して上げていたりと、そういうことはしていたので。
そして、それにより理力を通じて異世界の第三次ミヒェルス蝕戦争の様子が変化していくのをネコマサは感じていた。
今回は、ラストのボスは異世界の神。
ゲームの始まりは、ミヒェルスという国が世界へ戦争を仕掛け始めたというとこから。
それで、国々が軍をあげて戦いを行うがなかなか結果が出てこない。
むしろ周りの国々が押されてしまうことに。
しかし、各国が力を出して対抗したため拮抗状態が続き、どちらも出が出せない状況になる。
そこで、勇者ナームがひとりミヒェルス国へと潜入し、情報を集めミヒェルス戦争を止められるような情報を持ち帰ることを指示される。
主人公はナーム=シェザックとなり、魔法、剣術、特殊武器や技などを駆使して一人孤独な戦いを行っていく。というストーリになる。
大きな戦争で戦いが起こり、こう着状態になった後のストーリーなので大規模な戦場を駆け巡るようなことはなく。
村や町、城などのエリアを駆け巡りながら重要な情報を集めていくことになる。
雑魚敵が強く設定されており、ステルス、隠れて進んだ方がいい場面も多くなるように作られていて、拠点、セーブゾーンまでどうやって進んでいくかもストーリーに関係していく。各エリアにはボスがおり、それを倒すことでだんだんとストーリーが見えてくるような気がする、という作りになっている。
重要な雑魚を倒すと大事な情報が手に入ったりするので、あまり全部避けていてもよくない場合もあり。隠し要素もいくつか仕込んであったりもする。
そしてセーブゾーンではレベルアップ、あるいはファストトラベル、妖精の道を案内するために「導きの守り女」が配置され。
その姿がネコマサの異世界での人間形態であるのだった。
この荒廃した世界観の中にいきなり絶世の美女が配置されてしまったので、そこでまた人気が出たのであったが。
ゲーム自体の面白さ操作性の良さなどが評価されている。
あとはバグが少ないのも評価が高いようで。
そして、最後のボスは。
ミヒェルス国が戦争するように仕向けた、異世界の神との戦いとなる。
まずミヒェルス国王が敵として現れ、それを倒すと第二形態のように異世界の神が現れてくるという二連戦がラストバトルとなっている。
それにより、実際のミヒェルス国にある異世界の神からの影響を、ゲームの認識で書き換えていくことにしていた。
多くのプレイヤーが苦労してボスを倒す。
すると、異世界の神を倒した、影響を遮断したという情報が、認識が強く残る。
この情報を、ネコマサの世界へと理力の道を使って送り、異世界の戦争が始まる前の状態を改変していく。
外の神の影響が遮断された状態へ。
そして、ミヒェルスが蝕により支配されてしまう前の状態へ。
なので、ネコマサはゲーム制作まではゲームについて全力を注いでいたが。
発売後は、ゲームで得られた認識を理力で変換する作業、そしてそれを異世界を時間軸をずらして送る作業。
認識を変えていく作業などを行っており。
ゲーミンングPCの謎の光と、魔法陣が描かれた部屋の中で理力の光が輝く状態が続いていた。
多くの人がネコマサの人間形態の姿を認識してくれたので、より人間の形をとって理力の調整ができるようになっていったのだった。
そして、ゲーム発売から、2ヶ月。
ついに、その第三次ミヒェルス蝕戦争が「存在しなかった」状態へと書き換えが終了した。




