第16話 猫賢者がそこに現れたわけ
ホテルに帰ってきて、レストランで飯を食うか、帰り道の途中にある個室居酒屋で食うか、ホテルの部屋でルームサービスをとるか。
となった際に「ルームサービスとって、今日の反省会をする」とネコマサが言うので光正はそれに従うことにした。
晩御飯は、ネコマサは巨大エビフライと海鮮パスタ。光正は五目チャーハンと小籠包。
それにビールをつけてと、前日に比べると軽い晩ごはんになっている。
巨大エビフライは、見た目がザリガニのガッハッスナ神に似てるからだそうで。
似た生き物を食べるのは問題ないらしい
確かに、家ではお頭付きの30センチくらいありそうな巨大なエビフライとか作らんし、近くの店でも見たことないしな。
どうやら昨日からこれに目をつけていたようで、最初から晩御飯はルームサービスにするつもりだったらしい。
運ばれてきた時から、テンションも高く、ザリガニのぬいぐるみと一緒に撮影したり、自分の賢者の姿をアクリルスタンドに印刷したものを並べて撮影したりしていたが。
いつの間にアクスタとか作っていたのやら。
エビの頭を捨てるのは勿体無い、とか家に持って帰ろうとかするので光正は「やめろ」と止めてから、ホテルの部屋備え付けのコーヒーメーカーでコーヒーを淹れて飲みつつ、コンビニで買ってきたデザートを食べつつ、今日の話をまとめることに。
メールで問い合わせていた相手からも答えが返ってきていたが。
参加すると決めたのは、教えてもらった全体の8割ほど。
「参加してお金を儲けたい」と言う感じがあり。残りは、自分がインディーゲームを作っているのは「自分達の世界をそこに表したいから」というこだわり派が参加しない傾向にあるようだ。
「ということで、私は参加しない方に入ろうかと思う」
ネコマサがPCの画面を見せながら現状をまとめて話してくれたが。
今日は同じクリエーター達と触れることで、自分の方向性がより決まってきたようで、そして自分の選択も間違ってないのであろうと自信がついたと言っていた。
ネコマサとしては、昨日の夜から、今回の話には乗らずに自分のゲームは自分達だけで作り上げていこうということを決めていたのだった。
「何か決定打はあったのかい?」
「決定打。そもそも、なぜ私は光正の家に引き寄せられて行ったと思う?」
「いや、偶然?」
「偶然なわけなかろう。私が使っている理力について何か疑問とか思ったことないのか?」
「いや、そういう設定でそういうもんかなと」
ネコマサがため息をつく
「そういう知的好奇心を持たないから、異性への探究も進まないのだ」
「異世界の行き遅れに言われてもな」
「私が使っている理力は、異世界で使っていたものと同じなのだ」
「へーそれで」
「へーじゃない。世界が違うのに、同じ力使っていることが不思議とか思わないのかい?」
「言われてみれば。でもそういう設定ならそれでいいのでは」
「同じ力が使えるってことは、同じ世界なのではないか、世界が陸続きなのではないかって普通考えない?」
「ああ、言われてみれば」
「なんか疲れてくるなぁ。私の弟子にこんなに察しの悪い子はいなかったからなぁ。とりあえず、そのような設定だと思って」
「わかった」
「それで、理力というのは光正の体にも流れてるし、私の体にも流れてる生命活動を行う上で大事な力」
とそこからはPCの画面から部屋にあるテレビモニターにミラーリンクで飛ばして、大画面でスライドアプリを使っての説明が開始され始めた。
このホテルにアップルTVの端末が入っていることがあり、モニターにミラーリンクすることが可能になっていたのだ。
理力とは
宇宙そのものにある「本質の力」と言われるもので、人間や生物が生きるために必要な、現代社会の科学では証明できないエネルギーの一種である。
電磁波が近いかもしれないが、宇宙の原子の隙間にあるスポットと螺旋の回転エネルギーの隙間にあるもので、それら集合していくとネットワークが作られ。
そこに人格や生物の情報が記憶されていくらしい。
最も、先にそこに生まれた情報ネットワークから、地上に生まれた人類がそこにつながり、魂と呼ばれるものが生み出されるという説もあるらしい。
その宇宙にある原子の隙間にある情報を維持するにも何らかのエネルギーが必要となる。
そのためのエネルギーが理力。
科学では解明されてないダークマターと現在呼ばれているエネルギー領域にあるという。
「待て待て、なんでそんなことわかってるん」
「賢者だからな」
「現代科学と異世界の原理をよく関連づけられて行ったな」
「賢者だからな」
「わかった、いいよ、先進めて」
天才肌の人に細かい説明を求めても無駄であったなと、そんなことを思い出した光正であった。
つまり、異世界とこの宇宙はダークマターを介して繋がっている可能性があるということで、そこを利用すると私が元の世界に戻れる可能性も見つかるかもしれない
とネコマサが話し始めたので
話がこのままだと逸れると思い光正が質問を入れてこちらに引っ張り戻す
「で、その理力とゲームとネコマサになんの関係が」
ごほんと咳払いしてネコマサはスライドを進めていく。
人間は生きている間はこの理力を受け取っており、死んだら肉体はこの理力のネットワークから切り離される。
むしろ理力のネットワークから切り離されると肉体が死を迎えるという状況らしい。
「その理力のつながりを強くするのが火山なのだ!」
とネコマサがババーンという感じで語るが、いまいちよくわからない。
「光正の家の近く活火山があるじゃない」
「あるな」
「私が転生した時に、最初に目が覚めた時に目に入ったのはあの火山の噴煙だったんだ」
「噴煙、言われてみればネコマサが我が家に来る前に小御規模な噴火してたな。いつものことだから分からんかったけど」
「その噴火の力で私はこちらに転移というか転生したということが予想されるわけ」
「理力って宇宙から来るのでは?」
「地球の中心とか惑星の中心は宇宙のダークマターにある理力につながる部分がある」
「誰がそれ見つけたん」
「私」
「・・・続けて」
そこからまた話は理力は惑星の中央から湧き出すように動いており、それが地上に生命体を生み出していく力になっていると。
熱水噴出孔で有機生物の進化が起こったのもこのせいだとかなんとか。
「この理力は宇宙からと地球内部からと二つの流れがあって、それらをうまく受け取ることで私は今の体の状態を維持していたり、ゲーム制作ができたりしてるわけなんだけど、理解できる?」
「突拍子もないことだというのだけは理解できる」
「早い話が、光正の住む土地には、この二つの理力を結びつける結節点となる領域が存在しているのだ」
「へー」
「感動が薄い」
「うわすっごいな〜」
「わざとらしすぎる。とにかく、そのような稀有な土地だから私が存在できている。そして、その力を私は今でも繋がってこのように存在が確定しているのだ」
「それと、今回の話を断る理由は何か関連が?」
「理力の力、というのは本質の力。
その人や動物、自然が本来の方向に進む時により強くなっていく。しかし自分の進むべき方向ではないところに向くと、力が弱まってしまう。
私は自分の世界を救いたい。
しかし、このプロジェクトに参加して、他の面子たちは「売れたい」という強い意識を持ってこちらに関わってくると、本質ではない方向に導かれる可能性も強い。
あとは、自分自身が「お金を儲ける」などの本質ではない方向に流されてしまう可能性もあるし」
「自分の目的を見失うと、理力が弱まるみたいな感じか」
「そうなると、私が存在できなくなるので、今回の私の転生した意味がなくなってしまう」
「第一目標を達成するには、今回の話にはのらない方がいいと、そういうことか」
「そう」
「だったらそれを先に言えばいいじゃないか、こんなに回りくどく説明しなくても」
「理力の話も理解して欲しいと思ったからだ」
「そんな、自分なりに転生した仕組みというか、理屈についても結構わかってたんだな」
「ただ、わかってもそれを再現するための方法がない。
しかし、ゲームという情報を理力の流れの乗せていくと、異世界の情報を書き換えていくことが可能になるのがわかったので、今これを頑張っているのだ」
「ゲーム情報は乗るんだ」
「デジタルデータは容量が低い、アナログよりも圧縮可能で、理力の流れ、ネットワーク上にあげるのもそんなにエネルギーを使わなくてすむ。
あとは人の意識、確定する意図というものはその人が強く願う時にそれが生まれる。
死にゲーは何度も何度もボスに挑戦し、そこで人の意識がつよくボスとの戦い、敵との戦いの記憶と勝利した感動、強い感情が動く。その結果ボスを倒せたらよく脳汁が出るとかいうだろう。その生命の本質とでもいうのか、それの力が出るのは死にゲーなのだ」
「難しいゲームだけではダメなん?」
「死にゲー、はクリアしたいという気持ちが乗って、そして勝てそうな気がする、道筋が見える、という部分があえて見えるように作ってある。
あの絶妙なラインが大事。ただ難しいだけだと挑戦する人が限られてしまう。
勝てそうだけど、まだ勝てない。もう少し何かが必要、工夫する意識があれば勝てる、そういう感じがいいのだ」
「それらの強い意識が本質に近いから、ゲームデータとともにあっちに送りやすいというのもなんとなくわかるけど、よく分からんな」
「光正にそこまで期待してないが、大体の理力の意味を感じてもらえれば良い」
「こういうのなんで家で教えてくれなかったん」
「家だと、つい何か作ったり、ゲーム制作したり、と他のことしてしまいがちだから。ここだとこれしかすることがないから、やっと説明時間に使っただけ」
「ま、ネコマサが、今回のことは不要と思うならそれでいいよ」
「そう、だからちょっと私を抱きしめてみて」
急な話の展開に
「な、何を急に」
「さっきの理力の話だから、エッチな話じゃない」
と真顔で否定される。
しょうがないな、などと言いながら小柄なネコマサの体をギュッと抱きしめてみると
なんだか違和感がある。
人間を抱きしめてるはずなのに、猫を抱き上げてるような状態に感じられてしまう。
??
不思議な感触にもう一度体をはなし。
改めてみるも目の前にはナイスバディな人間の姿。
抱きしめると、猫を抱っこしてる感じ
「なんじゃこりゃ!!」
「わかった?これが理力の力」
「なんか分からん」
「光正は私を「猫」だと認識してる。今までも私を猫が、人間の姿をしている、としてみているはずだ」
「そうだな」
「だから、私の理力で作られた異世界の肉体の姿ではなく、肉体を持った猫の姿の方を確定させてしまう」
「家でもそうなん?」
と聞くと、ふるふると首を横に振って
「家だと、私のこの姿は確定されてたから、私と触れ合えたはず」
思い出してみれば。
浴衣を渡した時、服を着替えるようにした時などは手を触れてたりしたので、普通に何も考えてなかったが。
「家だと私は理力で作った体でも光正は私を猫だと思っていても、人間の姿で確定させられる。これは土地の力の影響だから」
「つまり東京にいると、ネコマサは理力で人間形態が維持できにくくなるということか」
「光正の家のある地域じゃないと難しいということ」
「なら遠隔でゲーム制作を協力してやる方法もあるのでは?」
「遠隔でも、他の人の認識が邪魔するから、私自体の存在が怪しくなるかも。
他の人たちは私の人間としての姿を認識しようとするけど、猫の姿で存在してる私を知らないし、知ったとしてもそれ同時に受け入れられるとは思えない」
「そうかね」
「それだけ、光正が変ということでもある」
「変、になるんかね」
「だが、それが良い。私はだから光正の側が心地よいのだろうな」
と言ってネコマサは正光の膝の上に飛び乗った。
無意識でそれを受け入れると、姿が途端に猫の姿に。ただ、スマート首輪をしていないのでネコマサの声は聞こえない。
ただ、ごろごろと喉を鳴らして膝の上に丸くなっているだけだが、
光正にとってはいつものことなので、そのままゆっくりと撫でてゆく。
「明日、帰る時は人間の姿になるんだろうな?」
と光正が声をかけるとニャーと軽くないて目をつぶる。
人間の姿で長くいるのも、疲れたのかもしれないなーと思いつつ、急にネコ化したせいで脱げてそのあたりに散らばった服を見ながら。
せめて自分で畳んでから変身して欲しいものだ、と思っていた。




