第13話 異世界の賢者猫 東京に行く
それから数日後
田辺美香は、経理のチェックと言いながら割と足繁く通うようになってしまったが、その時はネコマサはネコ姿なので会話は光正とだけになるのだが。
どうにも、東京に行ってほしくないなーということを伝えてきてるのは感じていた。
ネコマサよりも、光正が東京にいくのに反対してる気配があるので、よほど顧客を逃したくないのだな。
などと光正は考えていたりする。
アピール力とか伝え方とかが美香は常に微妙であり、容姿と性格が悪くない割に彼女が29歳独身女性であるのは、それなりに理由があるものだ。
そんなこんな、光正は美香のわかりにくいアピールに対して全く気づかないことがあっても、ついに東京に行く日が来てしまった。
ネコマサの目的を考えると、東京の方がいいのはある。
もし移住するなら来年度、4月くらいからになるかな。
それに、俺がついていかなくてもいいかもしれないが。
それはそれで寂しくなるなと、そんなことをここ数日考えてしまっていた。
結局、自分もネコマサと離れるという選択肢が出てくると、色々悩んでしまうものだ。
と思い苦笑する光正であったが。
7月の中旬の土日と有休を使って、2泊3日で東京に行くのだが、ここで決めてしまうわけではないが、今後どうなるか不安でもある。
先々のことを考えているとまた眠れなくなりそうだ。
しかし、直前で飛行機取るとめちゃくちゃ高いんだなー
正光はそんなことを考えていたが。
ネコマサが初めて飛行機に乗れるということでテンションが常にアゲアゲ状態になっているのにも不安を感じる。
前日から賢者形態になってから、寝てるのかどうかわからないくらい準備に時間をかけていた。
持っていくもの、あるいは東京でどうやって過ごすかなどなど。
付き合いきれないので光正は早々に寝ていたが、あの後ちゃんと寝たのだろうかと。
朝イチの飛行機で東京へと移動し、11時くらいには相手が待つオフィスへと向かうことになっているので、6時過ぎには車で移動する。今回は駐車場への停めやすさを考えてアルトで。
屋根付き、立体駐車場が空港のメインビルの近くにあるのだが、そちらに停めると値段が割高になり、野晒しの少し離れた駐車場するとちょっと安い。
お金はあるはずなのだが、光正は根が貧乏性なので「駐車場などに高い金を払うのは勿体無い」と考え、野晒しゾーンに止める前提でアルトで行くのである。
「公共交通機関の利用を促進するため」
とかふざけた理由で以前より値上げしてるのも気に入らない。
そもそも、直通の電車走ってないので公共交通機関がバスしかないのに。
田舎なのでほぼ車で移動する人間が多いのだがなーと。
光正の年代は、小さい時から
東京は恐ろしかところばい
と地元の年寄りから聞かされていたこともあり、光正は幼い時は都会に行くと海外に売られるか戻れなくなると思って怖く思っていた。
ヤクザがいつも銃撃戦してて、交通事故とか電車で事故とか、たまに悪の組織がやってきたりして人攫いも出てくる危ないところだと。
が、小学生も高学年になるとインターネットで世界がわかるようになり、中学高校では修学旅行などで大阪や東京などに行っているので、そのような年寄りの言葉を信じているわけではないが。
ただ、修学旅行以来の20年ぶりくらいの東京なので、正直なところかなり不安を抱えている。
ジェット機に乗るのは初めて。
東京への修学旅行は船で24時間かけての移動だったし。大阪はプロペラ機で移動したのでジェット機とか乗ったことなかったのだ。
田舎の民にはよくある話でもある。
ジェット機ってなんかすごいGとかかかるんかな。エンジンが火を吹くんかな。
とそんな心配してたりもする。
出発前までに「電車の乗り方」「モノレールの乗り方」あとはスマホで乗り換えの案内をしてくれるアプリを入れたり。
賢者とはいえ異世界の人だから、ネコマサは当てにならないだろうと必死に東京でスムーズに移動できるようおに準備をしてきてたりする。
そんな中で、何も心配せずに飛行機を見てはしゃいでいるネコマサを見ていると、自分がしっかりせねば。と強く思うのであった。
が、荷物預ける時、飛行機に乗る時、乗ってからの対応等々
全く心配することなく、ネコマサは以前から乗り慣れてます的な雰囲気すら醸し出している。むしろ光正の方がポケットに財布入れたまま金属探知通ろうとしたりと、しどろもどろしてるくらいだ。
今回は都会を移動するから、とSIM契約はしてないスマホをネコマサは持っている。光正が以前使っていたお古で、なんとなく手放さずに持っていたものがここで役に立った。
ポケットに入る持ち運びWi-Fiを契約し、移動中はそれに繋いで、電話での通話はアプリで行い。
飛行機の搭乗券もそれを使っており、飛行機に乗ったら、飛行機のWi-Fiと勝手に繋いで動画を再生し始めたり。
飛行機のドリンクサービスが来たら、リンゴジュースを頼んで当たり前のようにテーブルを出してセットしたり。
外の景色が雲しか見えない時はスマホで飛行機雑誌を眺め。
雲が切れたら地上をずーっと眺めながら、2時間近く飛行機移動を楽しんでいた。
「こんなに高いところを飛んだことがあるのは、私の世界では誰もいないぞ。火龍も飛べない高さだ」
などと言っているが、ネコマサの世界に竜がいたとは初めて聞いたような。
あ、でもこの間制作したゲーム、ナーム=ヒーローでは飛龍が出てたような気はする。
あれ想像上じゃなかったのか、妙に挙動がリアルだと思った。
今日のネコマサは、この間購入したワンピースに、白い大きなツバの帽子を被っているが、半分髪色を隠す意味もある。飛行機では流石に頭に被ってはいないが乗る時と降りる時はそれをかぶっている。
似合うもんだから人目を引くのは仕方ない。
東京に降り立ち、荷物を受け取った後に「これからモノレールと京急とどっちに乗っていくか」と考えながら光正がアプリを開こうとすると、
「先にご飯食べよう」
とネコマサは目の前にある、天丼てんやを指さしている。
「天丼、というのものを食べたことがないから、本場で食べてみたいのだ」
「天丼の本場は羽田ではないと思うが、食べたいならちょっと寄るか」
移動時間を考えても、十分食べる時間はあるし。
食券を自販機で買って中にはいる。ネコマサは躊躇なく一番高いのを選んでスマホの交通系アプリで決済してる。
店員さんはまずネコマサを見て少し表情がほころんだ後ハッとしてから、横にいる俺に声をかけてくる。
そりゃ、彼女は日本語わからなさそうに見えるもんね。
カウンターで食べたいというので横並びになって待つわけだが、まだ昼食には早いので客が殆どおらずカウンターは貸切状態。
これなら料理が出てくるのも早かろうと安心し、これからの移動についてネコマサと打ち合わせをしようとすると。
先にネコマサがアプリを開いて、移動について
「目的地は目黒?京急で品川まで行って、そこから山手線乗り換えが時間早くて楽だろう」
とささっと見せてくる。
「移動はモバイルSuicoでやると便利だから光正のやつにも入れておくぞ」
と行ってアプリを入れてクレジットカードの紐付けまでさくさく行っていく。
なんというか、光正は普通に切符買って乗っていくつもりだったのに。
「品川からの乗り換えで、切符を買いに並ぶのは時間の無駄だ。モバイルSuicoはさっきの券売機でも使えるし、コンビニでの買い物にも使えるし便利だから入れておくといいぞ」
異世界の賢者の方が、なぜか東京に行き慣れてる人みたいになっていることに少し気落ちしていると
「何かまずいことでもあったか?」
と聞いてくる。
「いや、賢者というのは異世界の文明でも関係なく使えるのだなと、俺の出番ないなとか思っただけだ」
「ネットで調べればなんでも出てくるではないか、庶民が様々なことを自由にできる環境があるとは、良いことだな」
とか言っていると天丼がやってきて、
まずそれをネコマサがスマホで撮影しているが、そっと横にザリガニのぬいぐるみが置かれていた。
「何それ?」
「ガッハッスナ神に捧げてから食べるのだが」
「それぬいかつやん、その撮影したスマホの写真はどうするんだ?」
と聞いてると、すぐ何やらアプリを立ち上げて
「Inftagramにアップしてる」
「は?アドレス持ってんの?」
「ゲーム制作者としては、SNSも活用しないと宣伝もできんだろう」
などと言いつつ、キスの天ぷらにかぶりつきながらTwitt a、サレッズ、Inftagramなどを見せてくる。
「ほれ、この間はザリガニについてレスバしたりしてるぞ」
なんと、自分が知らない間にこんなにもネットに、SNSに毒されていたのか。
異世界の賢者がレスバとか・・・
フォロワーが数千人いたりするのもあるので油断ならない。
「まさか、自分の姿を載せたりしてないよな?」
「載せてるぞ」
何も問題ないように軽くいって、紫蘇の天ぷらを齧りながら見せてきたのは猫の姿。
「フィギュアとかと自撮りしたものをあげてみると、なんかみんな反応がいいんだよね」
と言いながら、ガッハッスナフィギュアと並んでる姿とか、賢者の異世界姿のフィギュアと並んでみたりとか、ゲーミングPCのキラキラで照らし出される自分とか、そんなものをあげているらしい
かぼちゃの天ぷらを食べながら、
「動物はウケが良いからな」
「人間モードでは載せてないよな?」
「いずれ載せようかと思っているが、顔バレすると良くないから、自撮りだけとってまだ加工はしてない」
と言って見せてくる自撮りが、これはこれでとても良いものばかり。いつの間にか、地元の空港とザリガニのぬいぐるみ、東京の空港でもザリガニのぬいぐるみと一緒に撮影されていた。
その笑顔に光正も惚れそうになってしまう。
「お前、自撮り上手いなー」
「なんでも一流の腕を目指すのが賢者なのだ、加工するとさらに良いぞ」
そんなものなのか。
と納得してしまうが。
「変なファンとかつくと厄介だから、人間モードの写真はやめておこうな」
とだけ忠告しておく。
ネコマサも、そこは注意してたらしく。
「可愛いだけで命狙われることがあるとか、どこの世界も同じであるな」
としみじみ言いながら最後に残したエビ天を尻尾まで齧っていた。
こいつ、好きなものは最後に残して食べるタイプか。
などと光正はネコマサの新たな一面を見つけたりするが。
なんか、こいつ一人でも東京で生活できそうだな。
という感想を持ってしまった。
それから電車移動は、慣れてない光正にとっては地獄であった。
品川駅まで人が多く、立ったまま移動。
そして乗り換えの場所がわからず危うく一旦外に出てしまいそうになったりしたが、なんとか山手線に乗る。
が、ここも人が多く
「まるで毎日が祭りのような世界だな」
とネコマサが感想を漏らしてた。
光正も同じことを考えていた。
目黒駅について、そこから事務所に移動するのだが。
どう見ても本社とかゲーム会社ではない。
レンタルオフィス?というところで打ち合わせをするという話だったが。
目的の建物までは、ネコマサが地図アプリを開いて誘導してくれたので迷わず到着できた。
目黒のサンマって、ここが舞台なのかな?
とビルが立ち並ぶ駅前を見ながらそんなことを光正は考えていたが。
指示された場所は、ホテルのロビーのようなまずカウンターがあって、そこの入り口にいる国際救助隊のような帽子をかぶった紺色の制服の受付嬢に目的を伝え、そして中に誘導されていく感じのシステムらしい。
漫画とかでみる冒険者ギルドとかそういう感じがあるな。
と思ったりしたが、社会人経験者としてはお得意先にお邪魔した時の気分で行けばいいかと思い。
名刺は持ってないので名前と、メールの相手の方と今日11時から約束してたことを伝える。
すると、ささっと何かを操作し、インカムで中と通話してから、
「では、中でお待ちなので11番のボックスに進んでください」
と言われ扉が開き中へと案内される。
中は、中央にバーのようなカウンターがあり、そこにはジュースや飲み物の機械が配置されており。
カウンター内でもスーツ姿の人やラフな姿の人たちが何やら仕事の話をしている。
通路沿いにはファミレスのボックス席のようなところが並んでいて、横に書いてある数字がどうやらボックス番号らしい。
会社というよりは、まるでファミレスのような作り。
もしくはレストランのような作りで出鼻をくじかれるというか、予想してない風景に驚きを隠せない。
扉の内部には案内の女性が控えており、その人物が11番ボックスへと二人を案内してくれた。
大体20話くらいで話が一区切りの予定




