表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
79/99

第76話 王都より安全?護衛の真意

王族たちが嵐のように去った後も、アルベルトの下には挨拶が絶えなかった。


ケッセルベルク公爵からは軍務局への協力に対する礼を述べられ、オデール伯爵からは黒竜川のカットオフ工事への感謝を受ける。


その後も、新たに子爵となったフェルメール家へ取り入ろうとする貴族たちが次々と声を掛けてきたが、ハルバード伯爵とベルノー子爵が常にアルベルトの傍らに立ち、さりげなく話を切り上げながら追い払ってくれた。


こうして慌ただしかった叙任式は、何事もなく幕を閉じた。


一行は王城を後にし、そのままハルバード伯爵家が王都に構える別邸へと場所を移して、派閥内だけの祝いの席へと招かれた。


その席では終始和やかな雰囲気に包まれ、緊張し続けていたアルベルトもようやく肩の力を抜くことができた。


しかし、歓談が一段落した頃、上座に座るハルバード伯爵が静かに口を開いた。


「さて、祝いの席ではあるが、重要な話があるので私とジル、そしてアルベルトとカイトは席を外させてもらう」


案内された別室の扉を開けると、不機嫌そうに腕を組んだバッカスと、少し落ち着かない様子のゼノスが待っていた。


「ようやく来たか。こっちは仕事を切り上げて待ってたんだ」


バッカスのぼやきを聞き流しつつ、ハルバード伯爵は上座につき、ベルノー子爵がその横に控える。全員が席についたのを確認すると、伯爵は厳格な顔つきで口を開いた。


「まず結論から伝える。バッカス、ゼノス、カイト。この三人には、国王陛下の命により護衛を付けることになった」


「は……?」

バッカスが素っ頓狂な声をあげる。


「評議会で魔力発生装置を披露した以上、その技術が国外へ漏れるのは時間の問題だ。ドミナリア連邦や北の帝国がお前たちを狙う可能性も否定できん。陛下は、お前たち三人を『王国の生命線』と判断された」


アルベルトが息を呑む。


「もっとも、新たな護衛をすぐに送り込むつもりはない。すでにフェルメール領へ派遣している者たちを、そのまま国王直属の護衛として任じる予定だ」


「アルベルト。我が家から派遣したチャドたち隠密上がり四名と、ハルバード家から派遣したレオンハルトたち四名、計八名じゃ」


ベルノー子爵が静かに続ける。


「さらに陛下は、護衛を分散させるよりも、護衛対象を一か所に集めた方が守りやすいと判断された」


「……つまり?」


「バッカスとゼノスには、王都での仕事が一段落し次第、泥靴村を拠点として発魔機の開発と生産を続けてもらう」


「なるほどな。最初こそ一年のつもりだったが、最近は坊主との仕事が生き甲斐みてぇになっちまってる。オレは構わねぇぜ」


気付けば、泥靴村でカイトと過ごす日々が当たり前になっていた。

次は何を作るのか。その期待が、いつしかバッカス自身を動かしていた。


「えっ……師匠、ちょっと待ってください。ハルバード領の店はどうなるんですか!? 私もあの村に住むんですか!?」


ハルバード伯爵は真顔で頷いた。


「うむ。当面は泥靴村を拠点としてもらう。工房の移転手続きと機材の運搬は、すでに手配済みだ」


「そ、そんなぁ……」


ゼノスは思わず頭を抱えた……が、そのまま固まった。


初めて泥靴村へ行った頃は、カイトの無茶振りに振り回され、「パシリじゃない!」と叫びながら村を飛び出した。


それなのに、気づけば今では当たり前のようにカイトと仕事をし、新しい発明に頭を悩ませる毎日を送っている。


泥靴村へ移ると言われた瞬間は思わず拒絶した。だが、よく考えてみれば、今の生活と何が変わるのだろう。


「……あれ?」


思わず口から漏れた一言に、バッカスが眉をひそめる。


「どうした?」


「……いえ、自分でも、なんで嫌だと思ったのか分からなくなりまして……というか最近は、仕事が楽しいと思えるようになってきて……」


「ハッ、今さら気付いたのか」


「なら、この件は決定とする。他に異論のあるものはいるか?」


「ねぇ、護衛の人たちが付くのって、この三人だけ?」

カイトが何気なく問いかけた。


「そうだ。先程も言ったであろう? バッカス、ゼノス、カイト。この三人には、国王陛下の命により護衛を付けることになったと」


「でもさ……『ガンタ式・魔力発生装置』って、ガンタが見つけたものだよね?だったら、ガンタは大丈夫なの?」


「ガンタのことか」

ハルバード伯爵は、少し考えるようにカイトを見る。


「陛下も、その点は当然把握されている」


「じゃあなんで?」


「理由は単純だ。ガンタ殿は発見者ではあるが、装置の構造を理解しているわけではない。魔力発生を再現し、さらに発展させられるのはカイト、お前たち三人だと判断された」


「じゃあ、なんで泥靴村で守ろうとするの?王都のが安全なんだよね?」


本日もお読みいただき、ありがとうございました!

もし「面白い!」「続きが気になる!」「嵐の予感!」と思っていただけましたら、

ページ下部より評価とブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ