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第47話 王都でのプレゼン準備

ルシアン王子の熱烈すぎる歓迎は、最終的に青ざめた側近たちと近衛兵数名によって、物理的に引きずられる形で決着した。


「殿下! 時間です、外国使節団との茶会が始まってしまいます! 陛下がお待ちです!」


「離してよー! カイトに会いたかったんだよ!離してよー! カイト、絶対だよ! 明日の評議会が終わったら、また詳しく聞きに行くからねー!エアバズーカが、何であんなに風が出るのか教えてね!」


王子は最後まで両手を伸ばしながら、王宮の方へ強制連行されていった。


(……ふぅ。やっと解放されたわい。ルシアン王子も相当な技術者気質じゃのう)


ルシアン王子が去った後、コンラッドたち工兵部の面々もそれぞれ持ち場へ戻ることになった。


「お疲れ様でした、カイト君」

呼び止められて振り返ると、コンラッドが穏やかな笑みを浮かべて立っていた。


「殿下に捕まりそうだったね。橋の工事、本当に助かったよ。ありがとう。おかげで、貴重な経験をさせてもらった」


「えへへ……みんなが頑張ってくれたからだよ」

カイトが照れくさそうに笑うと、コンラッドは小さく頷いた。


「その言葉、現場のみんなも喜ぶよ」

そう言って軽く頭を下げると、コンラッドは再び顔を上げて優しい目でカイトを見た。


「また、どこかで仕事をしよう」

「うん。またね、コンラッドお兄ちゃん」


カイトが小さく手を振ると、コンラッドも片手を軽く上げて応えた。そのまま工兵たちは軍務局の奥へと消えていく。


カイトたちは受付の人に案内され、応接室に入るとそこには公爵とガイゼル総監が待ち受けていた。


「よくぞ無事に到着した。……ガイゼルから報告は受けている。まずは、見せられるように作ってきたという、その『魔力発生装置』とやらを実際に見せてもらおうか」


公爵の言葉に、バッカスがニヤリと笑って木箱を机の上に置き、蓋を開けた。


中から現れたのは、木と鉄の歯車が組み合わさった、無骨ながらも精巧な手回し式の装置だ。


「ガンタ、サジ、やってみせろ」


「は、はいっ」

「やるっすよ!」


ガンタとサジが装置の横に付いたクランクを二人で握り、勢いよく回し始める。


ギギギギッという歯車とコイルの回転音が響いた直後、装置の先端に繋がれた小さな実験用の魔石が、ピカァッ!と眩い光を放った。


「おおっ……!!」


「本当に……人が魔力を込めずに、クランクを回しただけで魔石が光ったぞ……!」


公爵とガイゼルは、まるで信じられないものを見るかのように目を丸くし、光を放ち続ける魔石を食い入るように見つめた。


「凄まじいな。報告書で読んで理解していたつもりだが、実物を目の当たりにすると震えがくるぞ……」


公爵は感嘆の息を吐き出すと、表情を引き締め、机の上に大きな羊皮紙の地図を広げた。


「単刀直入に言おう。お前たちを呼び出したのは、今回の評議会における最大の議題……王都と主要都市を結ぶ街道照明計画のためだ」


「街道照明、ですか?」


ゼノスが尋ねると、公爵は頷いた。


「現在、夜間の街道は暗闇に包まれ、盗賊や野盗の温床となっている。ご存知の通り、今の灯りといえば松明か油、良くて高価な魔道ランタンだ。だが、もし一定間隔で魔道具の街灯を設置できれば、夜間でも安全に人や荷を動かせるようになる。王国の物流は大きく変わるだろう」


公爵は地図の上を指でなぞった。


「問題は、その魔道具を動かすための『魔力の供給源』だ。これまでは人が直接魔力を込めるしかなかったが、今見たその『魔力を生み出す機械』……あれを要所に据え置き、そこから導線を使って街道の街灯へ魔力を送れないかと考えているのだ」


「なるほど、電線……じゃなくて『送魔線』を引くってことだね!」

カイトが黄色いヘルメットの鍔をクイッと上げて目を輝かせた。


「オデールの発破工事では、ミスリルでメッキした銅線を使って魔力を送っていただろう? あれを街道全域に張り巡らせたいのだが……ゼノス、あのミスリルメッキは、どれほどの目付量(使用量)になるのだ?」


公爵の問いに、ゼノスが渋い顔をして首を振った。


「発破に使った導線はかなり細いものだったため、メッキの目付量はごくわずかで済みました。しかし、屋外に張り巡らせる『送魔線』となると話は別です。発破の導線のような細さでは、強風や雪などの天候ですぐに断線してしまいます」


「む……」


「かといって、風雨に耐えられるよう線を太くすれば、表面積に比例して希少なミスリルの使用量は莫大に膨れ上がり、予算的に全く非現実的となります」


「では、ミスリルを使わず、安価な単線で代用することはできないのか?」

公爵が尋ねると、ゼノスは少し考えてから答えた。


「屋外に張る送魔線としての耐久力だけを考えれば、鉄が一番適しています。しかし鉄は伝導速度が遅すぎます。ミスリルの速度を百とした場合、銀、銅と下がり……鉄に至っては、ミスリルの三分の一以下の速度しか出ません」


ゼノスはさらに続ける。


「そのため、魔導具や杖の素材として鉄が使われることはほとんどありません。我々魔法技術者の間では、『鉄は魔力伝導には向かない素材』という認識です。……となると、銀は予算がかかりすぎますから、消去法で『銅線』が一番無難ということになりますが……それでも距離が伸びれば費用は馬鹿になりません」


「ふむ……一番丈夫で安い鉄は、魔力を送るのに時間がかかりすぎるから使えぬ、ということか」


公爵が顎を撫でて唸る。


(なるほど。伝導効率は問題ないのに、速度だけが遅いのか。……でも、それなら話は別じゃな)


カイトは頭の中で土木の知識と現代のインフラ網を照らし合わせた。


「とにかく、まずは評議会の場で、その『魔力発生装置』の実証実験を行い、人が魔力を消費せずとも機械から魔力を生み出せるという事実を議会に示すのがお前たちの最初の役割だ。頼んだぞ」


「任せてよ、公爵のおじちゃん!」

カイトは力強くサムズアップした。

本日もお読みいただき、ありがとうございました!

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