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【特別SS】王都別邸、魔改造の全貌 ~領主も知らない資金源~

特別SS第二弾です。

オデール領での黒竜川カットオフ工事が終わり、一月が過ぎようとした頃。


明日に控えた王宮からの呼び出しと、先日のカットオフ工事撤収作業中に現場で起きた『異常事態』の検証をカイトが見に行くという事で、アルベルトはカイトを連れて久しぶりに王都へ赴いていた。


王都の北門をくぐり、北の住宅街へと馬車を進める。


今回彼らの足となっているのは、モーガン商会に頼み込んで探してもらった『中古だが比較的マシな馬車』であった。


現在のフェルメール家はかなりの資産を抱えているものの、領地でエレナが馬車を使う場面も増え、さすがに一台では不便だろうと買い足したものだ。


「いくら金があっても、新品の高級馬車など身の丈に合わん」という、アルベルトの小市民的で堅実な金銭感覚の表れである。


王都におけるフェルメール家の別邸は、貧乏男爵家らしく、周囲の家々と肩を寄せ合うように建つ手狭で質素な二階建ての家であるはずだった。


「さあカイト、そろそろ到着するぞ!」

「うん! パパ、ぼく おなかすいたー!」


馬車が止まり、アルベルトが扉を開けて外へ出た、その瞬間。


「…………え?」


アルベルトの動きが凍りついた。

目の前に広がっていたのは、質素な別邸ではない。


高い装飾付きの鉄柵。整備された前庭。そして、白亜の石材で組み上げられた三階建ての豪邸がそこにあった。まるで中堅の伯爵家か、王都屈指の大商会のような。


「……ガ、ガラム。道を間違えていないか? ここはどこぞの成金貴族の館ではないのか?」


「い、いえ旦那様。間違いなくここのはずなのですが……」


御者のガラムも信じられないというように目を擦っている。


無理もない。その白亜の豪邸は、フェルメール別邸の奥にあった三軒と両隣にあったはずの家まで完全に飲み込み、元の六倍以上の巨大な敷地を占有していたのだ。

そして門柱には金文字の巨大なプレートが掲げられていた。


『 フェルミエール商会 王都本店 』


その看板の右下に、申し訳程度の小さな字で「フェルメール家別邸」と書き足されていた。


「な、なんだこれは……ッ!?」


アルベルトが後ずさったその時、重厚な玄関の扉が開き、新作のパッチワークドレスに身を包んだセシリアと、アンナが歩み出てきた。


「あらあら。おかえりなさいませ、旦那様。それにカイト様。新しく生まれ変わった『フェルミエール王都本店(兼別邸)』へようこそ」


「長旅でお疲れでしょう。馬車はそちらの車寄せにお止めくださいませ。すぐにお茶の準備をいたします」


二人は淑女の礼で主人を出迎える。


「セ、セシリア殿……アンナ殿。これは一体……!?」


アルベルトは震える指で、三倍の広さになった白亜の豪邸と、ゆうに六台は停められる庭の車止めを指差した。


「以前、妻から『商いの利益で、家を少しばかり改築する』という話はきていたが……両隣の家はどうしたのだ!? ここは王都の住宅街だぞ!?」


「オホホホ。ご心配には及びませんわ、旦那様。手狭でしたので、ご両隣と奥の方々には『相場の三倍』を積んで、喜んでお立ち退きいただきましたの」


「さ、三倍……ッ!?」


相場の三倍。それは一生遊んで暮らせるほどの莫大な額だ。

アルベルトの金銭感覚が崩壊していく。


「そ、そんな莫大な資金、一体どこから……!」

「あら? 旦那様はご存じありませんでしたの?」


セシリアはパチンと扇子を閉じると、伯爵令嬢だったとは思えないほどの悪徳商人の笑みを浮かべた。


「泥パックも香料液も飛ぶように売れておりますの。おかげで金庫が手狭になってしまいましたわ」


「……で、その香料はどこから?」


「オデール領の生ゴミから抽出しておりますので、タダです」

アンナの即答に、アルベルトは膝から崩れ落ちそうになった。


するとセシリアは、近づいてきたカイトを抱き止めた。


「オホホホ! 捕まえましたわよ、うちの可愛い泥んこボーイ! カイト様には本当に感謝しておりますのよ」


「……カイトに?」


「ええ! カイト様のおかげで泥パックも毎週のように納品されるようになりましたし、ノートン子爵領の軽石も見つかりました。何より、オデール伯爵領の果物や果物の皮まで、向こうから喜んで提供してくださいますからね!」


「お礼に、王都で一番の高級焼き菓子を山ほど買っておきましたわよ。さあ、中へどうぞ!」


「わーい! おかしー!!」


キャッキャと喜ぶカイトと、それを甘やかすセシリアとアンナ。

そのやり取りを聞いてしまったアルベルトは、真相を悟り、ガクリと地面に両手をついた。


「……全部……お前だったのか、カイト……ッ」


拡張された白亜の豪邸に、悪徳商人の目をした没落令嬢の高笑いが響き渡る。


頭を抱える父の横で、カイトはセシリアたちの見事な仕事ぶりに感心しながら、建物だけでも三倍の広さになった別邸へと駆け込んでいくのだった。

特別SS、いかがだったでしょうか!

原価ゼロのゴミから莫大な利益を生み出し、王都の住宅街を札束(立ち退き料三倍)で物理的に殴り倒したセシリアたち。そして、すべての黒幕が息子だったと知り、ついに膝から崩れ落ちたアルベルトパパでした(笑)。


さて、このSSは実は「第二章が始まる前」の、少し先の未来のお話となります。

実際の『第二章』本編は、オデール領での黒竜川カットオフ工事が終わり、撤収・片付けをしている現場からスタートします!


無事に大工事を終えて帰るだけ……と思いきや、あのガンタが現場でとんでもない「やらかし」を引き起こし、そこから新たな大騒動(トンデモ技術の発展)へと繋がっていく予定です。

果たしてどんなストーリーが展開されるのか、乞うご期待!


引き続き、第二章でもご安全に!(明日から公開予定)

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