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村の子と新奥義

カリッカリッカリッ。

縁側で、タケシが木を削っている。

「んーこんな感じかなー」

ガラガラガラガラ。ブルーの馬車。

「タケシさーん」アキラが降りてきた。

「おぉ、帰ったか。おつかれさん」

後ろから、擦り切れた服の痩せた少年が付いてきている。

「アキラ、その子は?」

「うん.....村の子.....」

唯一の身寄りのおばあさんが亡くなり、1人になって、近所の農作業を手伝って食いつないでいたと言う。

「この子、めっちゃ頭いいと思う。オセロ直ぐ覚えてさ、ポンプ隊全敗」

「へー。そりゃすごいな」

「んで、アルベルク様に頼んで連れてきた。ここで色々覚えさせてたら、村で役立てられるかなーって」

「坊。いくつや」

「10才です」痩せてはいるが、大きな目が希望に満ちて、見開かれている。その目が、タケシの手元を見た。

「これ、気になるか」

「....はい」

「タケシさんそれって、けん玉?」

「うん。村の子のおもちゃにええかなーって」

「喜びますよ。きっと」

「坊?名前は?」

「ヒューイです」

「ヒューイ。これから色んなもの見よ。ほんで色んなことやってみよ。きっと村の助けになるで」

「はい!」

「アキラ、お前の家で面倒見てやり。朝連れてきたらええ。夜は読み書き教えたり」

「うん。職人の子どもの服貰ってきたから、風呂入れて着替えさせてきますわ」

「あぁ、報告は夜でええで。みんなで飯食お」



ヒューイはその光景に目を見張った。

湯気を立てている鍋にはたくさんの野菜と肉。黄色い煮物からは不思議な香りが立ちのぼる。あれは....肉?こっちのは魚?

で、目の前の椀に白いつぶつぶ.....

「ほな、いただきます」

隣の変なものを背負った人が、白いつぶつぶに豆のようなのを乗せて食べた。真似してみる。

「!?」

なんですかーこれー??



村は2か所にまとめ、小屋も立ち始め、遠い村から順に移住も始まっている。

ポンプ隊はまとめられた村を中心に、まだ住民の残っているところに1〜2台ずつポンプを配置してきた。

「それからアルベルクさん、商会の馬車を漁り始めて.......」

ほとんどの商品を買い取って、マットとキックボードは予約を入れた。

「あと、納豆の機械欲しいって。買い取りで話しつけました」

「そっかー。まぁ買ってくれるなら、それはそれでオッケーやな」

「うん。またポンプ隊の分隊で、要らなくなった村のを回収して付け直しするから、その時に納品するって言っといたよ」

「ねえ、井戸ってさ、使ってないとこあるよね」

「うん」

「タケシ、次、私行く」

「カツミ行って何すんねん」

「納豆の作り方も教えなあかんし、使ってない井戸でピュアフロー養殖出来るかも」

「遠いで。大丈夫か」

「うん。レオン貸してな」

レオンが首を横に振った。

「どーぞどーぞ」

レオンがっくり。



タケシはレオンとヒューイを連れて、町の中心に出てきた。まず役場に向かい、ヒューイの住民登録。ヒューイは通行証すら持っていなかった。グレイス領で緊急発行させて連れてきた。事態を重く見たアルベルクが今農村住民すべての通行証を発行しているという。


「よっしゃ。これでお前もミナセの住民やで。町、見ていこな」

見るもの全てに目を輝かせるヒューイ。

オモジイにも声を掛けた。

「ええ子じゃの。素直に色んなことを吸収するじゃろ。まだ特性ははっきりせんが、マルチタイプかも知れん」

「そっか。色々させてみるわ」

「うん。それがよかろう」

露天で串焼きを買い、スライムゼリーを食べさせて、職人街へ。

タケシが1件の工房へ入っていく。

「おっちゃん、これサンプル」

打ち合わせして出てくると、ヒューイがオセロを見ていた。

「オセロ、強いんやてなぁ。今度の工房対抗戦に出てみるか」

「はい!」

タケシがヒューイのあたまをグリグリ撫でる。

「よっしゃ。特別枠な。さぁ帰ろ。コラ、レオンお前いつまで串焼き食っとるんや。行くぞ」

慌てて飲み込んだレオンが、ゴンゴン胸を叩いた。


タケシはヒューイを母屋周辺で好きにさせている。

母屋の周りには、タケシの使う納屋、馬車の修理工房、カツミのスパイス工房は食の研究室になって、スライムの養殖箱も井戸もある。前は農地。全てがあるのだ。

あちこちで作業を見て、スタッフや職人に分からないことを聞く。時には収穫作業の農民の手伝いもする。

そのうち自分で仕事を見つけた。薪割りやスライムと馬の世話、みんなに聞きながら仕事の手伝い。


「おい、レオン。お前仕事取られたんちゃうか」

図星の顔で焦るレオン。

「まあええ。お前下手に動くと物壊すし」

うなだれるレオン。

「で、そんなレオンにこれを授けよう」

タケシがおもむろにに取り出したのは

「けん玉や」

「剣の玉ですか!」

「剣やないけど」

タケシがコンコンと玉を動かす。

「で、お前のはこっち」

紐が......長い。玉もちょっと違うみたいだ。

「はい!精進いたします」

と、うやうやしく頂いたレオンは

大事そうに腰に刺した。

タケシが玉を天に刺して紐をまとめてその上に被せた。

「うむ。これでよい」

タケシはクルッと振り向き母屋に入っていった。

「なあタケシ危なくないん?めっちゃ当たったら痛そうやけど」

「玉な、木の玉にスポンジ巻いて更に糸で巻いたのをボンドで固めてん。殺傷能力は落としてあるねん」

「ほなええか」

「んで軽い分難しい」

「面白そうや」

「もうすぐグレイス行きやし。まぁ楽しんで」




「あきら、ちょいあれ見てみぃ」

「何っすか?」

薪割り場。地面に太い薪が並べてあり、その前に立つレオンが腰のけん玉を抜いた。

「カエル君何してるんです?」

「まあ見とき」

シュッシュッシュシュ

カンカンカンカン.......スポン。

「うわっ、見事なけん玉さばきっすね。よう見えんくらい速かった」

「あれ、まともな玉やったら割れたかも」

「マジすか。あ、ハリセン抜いた」

パンパンパパーン

「二刀流ですね」

「左にハリセンか。やるな」

「やっぱカエル君、勇者だわ」



数日後、カツミがグレイス領に発った。

レオンを連れて。



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