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XNFA--ゼノファ--「ようこそ……地獄の最前線へ」  作者: アトラモア
第三章 影纏

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第38話 緋喰の獣人


「マモタ」

「どうしたの、琥珀ちゃん」

「これ、死んだくね?」


 琥珀は目を丸くしながら、アイアンメイデンのような物体から出てきたXENOS(ゼノス)を見て呟いた。


「……そうかもね」


 琥珀が横目で見た守大もまた、同じ感想を抱いているようで、その顔は緊張しており強張っている。


「……」

 琥珀たちの目の前には、火球をいくつも浮かび上がらせる、正真正銘のエルフが佇んでいる。顔は美形で、男か女かは定かではない。分かるのは、人間離れしたほどの美しい容姿。琥珀からしてみれば、響は綺麗で、目の前のXENOS(ゼノス)は本物の美、そのもの。


 服装は軽装で、新緑の外装を身に纏い、中に着ているのは薄手の革服。つばの広い茶色のハットを被っている。手に持っているのは、炎を纏う短弓。矢筒は見当たらないが、弓使いであることに変わりはない。


【炎弓の狩人】


 アニメ、マンガ、ゲームが大好きな琥珀の頭に、そんな言葉がよぎる


「……」


 狩人がグッと炎弓の弦を引けば、自動で炎の矢が生まれた。


 ゴオオオ――弓を射た音とは思えぬ轟音を立てながら、炎矢が琥珀と守大に迫ってくる。あまりにも美しい光景に、琥珀は目を奪われてそこから動けずにいる。


「琥珀ちゃん!!」


 守大が琥珀の盾になるように前に飛び出す。盾を瞬時に操り炎矢を防ぐ。しかし、炎矢は守大の黒い盾を簡単に破壊した。二枚目も破壊されると悟った守大は盾を捨て、琥珀を抱きしめて転がった。


「マモタ……ご、ごめん!」


 転がった衝撃でようやく意識を取り戻した琥珀が、守大に謝罪する。守大は首を横に振ってゆっくりと立ち上がる。そこへ、またしても炎矢が琥珀と守大を穿つために迫ってきていた。


「守大!!」


 今度は、琥珀が守大を守るために、守大を抱きしめて転がる。


「うおりゃあああああ!」


 腹から声を出して、すぐに態勢を立て直す。今度は、狩人に炎弓を引かれる前に立ち上がれた。


「が、がぶ!!」


 琥珀の唯一の遠距離攻撃である、口の形をした(ゼノ)が勢いよく飛び出す。


「……」


 狩人は笑う。迫りくる(ゼノ)を前に手を差し出す。ガブッと噛めた感触があった。


 しかし……。


「か、噛めない!」


 硬い。あまりにも硬かった。何でも嚙み千切れた自慢の(ゼノ)の歯が一切通用しない。琥珀の顔色は変わらないが、一歩前に後ずさってしまう。


「……」


 一切喋ることのない狩人は、(ゼノ)の口に噛まれても、なお笑う。


 ボウ――突如として、(ゼノ)の口が燃え上がる。一瞬にして炎が上がったかと思えば、(ゼノ)が燃え尽きた。


「……」


 スッと弦を引いて弾いた。


 ゴオオオ――先ほどは一本だった炎矢が、いくつも生成され、大量の炎の矢が琥珀と守大に迫る。


「たてえええええええ!!!」


 守大が琥珀の前に立ち、叫ぶ。地面から壁がいくつも生成される。先ほどよりも、威力が弱いのか、分厚い壁のような盾に防がれている音が響いた。


「ガ!」

「きゃあああああ!」


 壁を穿つことはなかったが、炎矢は操作が可能なのか、いくつかの炎矢が壁を避けて、守大と琥珀に突き刺さり燃える。炎矢は突き刺さると同時に消滅するが、傷口を焼く激痛だけが確実に二人を蝕んでいく。


「琥珀ちゃん!!」


 琥珀は痛みのあまり動けずにいる。守大は琥珀を抱えて、いくつもの土の壁を生成して、姿をくらます。


「い゛だい……」

「ぼ、僕のせいで……ごめん、琥珀ちゃん」


 誰のせいでもないのに、守大は自分を責めるように言う。


 琥珀は、まずいと感じた。守大は、大切な人を守ることが出来なかった過去を持つ。琥珀は、守大に大切にされている自覚がある。守大にとって、琥珀は大切な人なのだと。


 もし、また、守大の心が傷ついたら。きっと、自分を責めて、責め続けて、心を壊してしまうだろう。(ゼノ)の暴走状態で、目の前のあいつに勝てるほど、甘くない。


 物語の中ではいつでもそうだ。暴走した力では強敵に勝てないのだから。


「ワタシ……大丈夫だから」

 

 どうにか出した声は、震えて涙声だ。どう考えても大丈夫ではない。けれど、そうでも言わないと、守大が壊れてしまうと感じたのだ。


「琥珀ちゃん……僕が……絶対に君を守る」


 守大はカルを守るようにいくつもの盾と壁を張り巡らせた。けれど、自身は(ゼノ)が創った黒い鎧だけ。


「マモタ、ダメ!!」


 琥珀の制止も聞かずに、守大は狩人の前に飛び出していった。


 絶対に一人で勝てる相手じゃない。守大には攻撃の手段がほとんどないのだ。仮に、炎矢の時間を稼いだとしても、いずれは力尽きる。


 そうなれば、どうしたって死ぬ。


 琥珀が炎矢で撃たれたのは、足と腕。機動力は、琥珀の戦いでは生命線だ。足を奪われてしまえば、どうすることもできない。


「マモタッ」


 痛む足を引きずって、守大を呼び戻そうとして、壁から顔を出す。


「……!」


 見えたのは、壁を作って視界を奪いながら、接敵する守大の姿。近づけさえすれば、勝てると見込んでの行動だった。守大は死ぬつもりではなく、勝とうとしている。


 でも、それではダメだ。


「あ」


 姿を見せる見せないの次元ではないのだ。


 狩人は、弄んでいたのだ。先ほどまでの美しい笑みは消え、顔を歪ませるほどの醜い笑みを見せている。短弓だった炎弓が、ロングボウへと姿を変えていた。飽きたのかもしれない。つがえられた炎矢は、矢というより槍のような大きさだ。


「いやだ」

 

 ゴゴゴゴゴ――琥珀の言葉がかき消されるような轟音で、炎槍が守大を壁ごと穿つ。


「ガアッ!!」


 守大の短い悲鳴が結界内に響く。おそらくワザと狙いを外したのだろう。守大の腹部に焼け焦げた痕ができる。守大はすでに意識が朦朧としており、このままでは死んでしまう。


 意識が飛んでいるからか、守大が作り出した壁や(ゼノ)の盾が消える。


 そして、守大自身の影纏(シャドウ)も解除されてしまう。


「やめてええええええ!」


 琥珀は涙を流して、守大に向かって、届かない手を必死に伸ばす。


「マモタアアアアアアアアア!!!」


 琥珀の絶叫が、結界内に響く。


「……」


 炎弓の炎槍が、装填される。


 琥珀は必死に走った。けれど、片足が言うことを聞かないせいで、とてもではないが間に合わない。


「ごめ……こはく、ちゃん」


 意識を取り戻した守大が、微笑んだ。


「……」


 ゴゴゴゴゴ――守大の背後に、火花を散らしながら炎槍が迫る。


 琥珀の中で、時間がゆっくりと進む。




 初めてできた、アタシを否定しない人


 初めてできた、アタシを受け入れてくれた人


 初めてできた、アタシに普通を押し付けなかった人


 初めてできた、アタシを信頼してくれる人


 初めてできた、アタシを頼ってくれる人


 初めてできた、アタシを慕ってくれる人


 彼がいたから、アタシはワタシでいられる


 彼がいたから、たくさんの友達、命を預けられる仲間が出来た


 彼がいるから、ワタシは今日も生きている

 


 初めて、気が付いた



 ――ああ、これが……恋してるって気持ちなんだって



 その想いが今、壊されてしまう

 

 失ってしまう


 怖い


 自分が傷つくよりも、今、目の前で倒れてる人が傷つく方が嫌だ


 殺されてしまうのは、もっと嫌だ


 そんなのダメだ


 何でもいい


 彼を守る力が欲しい


 悪魔にだって魂を売ってやれる


 だから、どうか……

 

 ワタシの想いに応えて……



 ――(きせき)を、ワタシに授けて






『あるじ』


「だれ?」


 琥珀の心に、低い声の女性が問いかける。


『ようやく……目覚めてくれたね』


 少し低いけれど、姉のように優しく話しかけてくれる声だ。


「この声……聞いたことがある」

『コタロウと言えば、分かってくれる?』

「コタロウ!?」


 コタロウ。琥珀が飼っていたゴールデンレトリバーの名前。琥珀は、久しぶりに聞いた名前と共に、栓をしていた記憶を湯水のように思い出す。


 コタロウは捨て犬だった。小さいころ、公園で一人で遊んでいた琥珀が連れて帰ってきたのだ。両親を説得して、どうにか家族として迎え入れることができた。名前を付けた後で、コタロウが女の子であることを知ったことも、全て思い出す。


『そうだよ。と言っても、もう私はこの世にいないけれども』

「……ああ、そうだよね。だって、こんな世界になったわけだしさ」


 琥珀が寂しそうに呟くと、コタロウはワオンと吠えた。


『ちがうよ、あるじ。私こそ、XENOS(ゼノス)に殺されかけていた時に、あるじに庇ってもらったんだ』

「……ああ、そうだったかも」


 ここに来る前の記憶も思い出す。コタロウは、人型のXENOS(ゼノス)に心臓を貫かれて死にかけていた。そこへ、琥珀が現れ、コタロウを庇うように、心臓を貫かれた。


「あれ……ワタシ、死んでない?」

『ううん。あの時ね、実は黒い液体である(ゼノ)が、すでに私の中に入っていたんだ』

「うん?」


 琥珀はあまり理解できていないようで眉間に皺を寄せるも、コタロウは続けて言う。


『私はXENOS(ゼノス)となったけど、あるじに心臓を渡したんだ』

「え……」


 琥珀が自身の胸に手を当てる。コタロウは、姿さえ見えないけれど、琥珀には微笑んでいるように思えた。


『あの時、雨に濡れて死んでしまうところだった私を助けてくれたんだ。恩返しというやつさ』

「……じゃあ」

『そう、一部は私。コタロウってこと』


 その言葉に、琥珀は涙を流して笑顔を見せた。


「じゃあ、今までずっと一緒だったんだね」

『そうだよ。だから、ずっとこうして話せる日を待っていたんだ』

「……そっか。遅くなってごめんね、コタロウ」

『いいんだよ。あるじは、悪くないんだから』

「ありがとう……コタロウはいつも優しいね」


 辛かった時も、悲しかった時も、泣いていた時も、誰よりも早く、琥珀の傍に来てくれたのがコタロウだ。そんなコタロウを思い出して、琥珀は微笑む。


「そっか……またワタシを支えてくれるんだね」

『うん、そのために、私は今、ここにいる』

「ねえ、コタロウ」

『うん』


 コタロウは優しく相槌を打つ。琥珀は、真剣な顔で、心の中のコタロウに願う。


「力を貸してほしい。アイツを倒して、守大を、好きな人を守れる力を」

『任せて』


 コタロウが応えると、琥珀は心臓が温かい何かに包まれていくのを感じた。


「あとさ」

『なんだい、あるじ』

「コハクでいいよ。やっぱり、名前で呼ばれたいからさ!」

『そうか、わかったよ、コハク』

「うん!」


 琥珀は笑顔で頷いた。コタロウも嬉しそうにしているのが、琥珀には不思議と伝わってくる。


 そして、次に伝わってきた感情が、真面目な話をするということも。


『まずは、あれから喰らおう』

「うん、そうだね」


 守大を傷つけて、守大を殺そうとする悪意の塊、炎槍。


 琥珀は手を伸ばして、呟いた。


「『喰らえ』」


 琥珀の時が流れ出す。



 

 猛烈なスピードで炎槍が、死にかけの守大に迫っていたはずだった。


「……?」


 それが、一瞬にして消え去った。狩人も何が起きたか分かっていないように。突然、炎槍が姿を消したのだ。まるで、神隠しのように。


「この炎の槍……ちょーおいしいね」


 琥珀は困惑している狩人に向かって、お腹をさすりながら微笑んだ。


「ちょっとだけ、待っててほしいんだよねぇ……がぶ!」

「!!」


 先ほどとは比べ物にならない大きさの(ゼノ)の口が突如として現れ、180cmはあるであろう狩人を一飲みした。


『コハク、今のうちに、マモタを』

「うん!」


 (ゼノ)で生成した口の中で、狩人が大暴れしているのが分かる。中から異様なまでの衝撃音と炎が口から噴き出しているからだ。そこまで長くは保つことはないだろう。


「マモタ!」

「……こはく、ちゃん」


 守大は息も絶え絶えに、琥珀の名前を呼んだ。


「よかった……生きてる!」


 琥珀は、涙をいっぱいに溜めながらも、牙を見せて笑顔が咲いた。


『コハク……急いで』

「ちょっとまってね……今、助けるからね、マモタ」

「……」


 守大から返事は聞こえないが、呼吸音は聞こえた。今ので気絶してしまったのかもしれない。


 琥珀は、気を失った守大の額に、自らの額を優しく当てて、目を閉じる。


「火ってさ、燃やしたり、焼いたりするものだけどさ……」


 ゆっくりと、守大の体がオレンジ色の光に包まれる。光の発生源を辿ると、守大の肩には炎で創造された小さな雀のような鳥が乗っていた。オレンジ色の光は、傷ついた守大の体を徐々に癒していく。


「回復する炎も、ゲームには存在するよね!」


 にっこりと笑った琥珀は守大をお姫様抱っこして、結界内の一番遠い場所へと運んだ。守大の顔を見てから、琥珀は彼の額にそっとキスを落とす。


「ワタシ、頑張るからさ……待っててね、守大」


 琥珀は、表情を引き締めて、今にも(ゼノ)の口から飛び出してきそうな狩人の前に立つ。


「このままじゃ、勝てないよね」

『そうだね。でも、方法はあるよ』

「教えて、コタロウ」

『もちろんだよ、コハク』


 ドガアアン――山が噴火したような炎柱が結界内の天井にまで届いた。それほどまでに出力を上げなければ、突破できないほど、(ゼノ)が強固だったようだ。


「……!!」


 狩人は怒り狂った表情で、炎弓の弦を数回弾いた。数百を超える炎矢が次々と宙を飛び回り、琥珀の全身を穿つように360度を囲んで迫る。


「……」


 絶対に避けられない数の炎矢を目の前にしても、琥珀は落ち着いていた。


『さあ、喰らってやろう、コハク……君は、食べれば食べた分だけ強くなる』


 コタロウの言葉で、琥珀はとびっきりの笑みを浮かべる。


「いただきまああああす!!」


 琥珀の心臓から、(ゼノ)が噴出する。


 それは、すべての炎矢を飲み込みながら、琥珀の体に覆いかぶさった。


 まるで、すでに影纏(シャドウ)を解放しているはずの琥珀が、もう一度、影纏(シャドウ)を解放するかのように。


 卵のような形をした(ゼノ)が琥珀の全身を覆う。その(ゼノ)の中心が徐々に赤く染まり、鼓動する。


 今か、今かと、誕生を心待ちにする生命のように。


 そして、黒かった(ゼノ)が、緋色に染まった。


緋喰(コタロウ)!!!」


 緋色の(ゼノ)から、琥珀の声と共に新たな姿が現れる。


 緋色のウルフヘアーには、炎がメラメラと燃えるカチューシャと、ぱたぱたと動くクリーム色のたれ耳。顔つきは琥珀のままだが、獣人らしさ溢れる愛嬌抜群の表情で、紅蓮の瞳と鋭い牙を輝かせている。


 身に纏うのは、ワインレッドとクリーム色が映えるシックなゴスロリドレス。背中にバサッと靡かせた緋色のマントには、雄叫びを上げるゴールデンレトリバーを描いた金糸の刺繍が施されていた。


 スカートとマントが揺れるたびに、パチパチと火花が散る。指先からは真っ赤に染まった爪が伸び、手首にはシュシュのように見えるふわふわの毛皮が生えていた。足も毛皮のブーツを履いているように見えるが、完全な獣の足へと変化している。


 緋喰の獣人、三峰琥珀の爆誕である。


「わお、ちょーかわいい!!」

『コハク、とっても素敵だけど、敵さんはお怒りみたいだよ』

「ん?」


 琥珀はキョトンとした顔で、狩人を見る。狩人は、自身が放った数百の炎矢を失って、顔を真っ赤に染めながら、分かりやすくキレていた。その腹いせとばかりに、炎弓を長弓に変化させて、炎槍を惜しげもなく放つ。


「ふふん、もう、効かないから!」

 

 琥珀が大地を蹴れば、地面が削れて炎が舞う。飛来する炎槍を真っ赤な爪で破壊し、大きな口を開けて喰らっていく。狩人との距離を一気に詰め、攻撃範囲内に入ると爪を振りかぶった。


「ファイアースラッシュ!!!」


 ギイイイイイン――琥珀の赤爪と、狩人の腕が、金属がぶつかり合ったような音を響かせる。狩人は、宙に浮いていた火球を発射させるも、琥珀はもう片方の手で、火球を振り払い霧散させた。


「よっと!」


 一度距離を取ると、狩人は炎弓を短弓に変えて、さきほどの何倍もの炎矢を放つ。もはやそれは、炎矢で作られたロケットのような火炎放射のようなエネルギーを持っていた。


緋喰(コタロウ)!!」

『任せて!』


 琥珀が叫ぶと、炎で出来た巨大なゴールデンレトリバーが姿を見せる。ゴールデンレトリバーは口を大きく開けて、そのロケットのような炎を飲み込む。ゴクリと飲み込んだ後、再度口を大きく開くと、口元に炎のエネルギーが凝縮された。


「放射!!」


 ボアアアア――琥珀が命じると、凄まじい炎のエネルギーがレーザーのような勢いで放射される。


 狩人はそれを寸前で躱すも、横っ腹を抉ることに成功した。


「よっしゃああああ!」


 琥珀は、好機を逃さずに、一気に距離を詰める。四足歩行で走れば、地面に炎の道が作られるほどの火力のまま突っ込んでいく。


「……」


 だが狩人は琥珀の動きを気にせず、炎弓で炎矢を放つ。


「それ、効かないってば!!」

『違うぞ、コハク!!』

「あ!!」


 炎矢は琥珀を通り過ぎ、守大の方へと最速で向かっていく。琥珀は急ブレーキを掛け、再度地面を蹴って、滑空するように守大の前へと走った。


「がぶ!」


 間一髪間に合った琥珀は、数十本の炎矢を緋色の(ゼノ)で飲み込んだ。


「うーん……これって」

『そうだな。力は互角だが、私たちが不利だ』

「なら、守りながら戦うしかないね!!」


 けれど、琥珀の心は折れない。不利であったも、勝てないとは言われなかったから。互角であれば、どうにか隙をついて戦うしかないのだ。


『もっといい方法がある』

「ん、それって?」


 コハクとコタロウが会話をしている間も、狩人は遠慮なしに守大を狙うように、炎矢と炎槍を放っている。琥珀は炎矢を弾いて炎槍を喰らいながら、コタロウの話を聞いた。


「それでいいの?」

『ああ、きっと、それで目覚めるさ』

「分かった!」


 コタロウの言葉を素直に信じた琥珀は、さっそく実行する。


 琥珀はその場でありったけの空気を吸い込み、一度息を止めた後、腹に力を入れて全身全霊で叫んだ。


「起きろおおおお、マモタアアアアアアアアアア!!!!」


 琥珀が両手を空に向けて突き上げる。


 結界内に凄まじい声量が響き、両手の上で生成された炎が守大の元へと向かう。


 守大の肩に乗っていた炎の雀が飛び立ち、その光り輝く炎の中へと入って融合した。


 巨大化した炎雀は、赤から黄色のグラデーションの翼を大きく広げて、守大の額へと直撃する。


 すると、守大の額から光り輝く炎が弾けるように全身を包み込んだ。



 光の炎に包まれた守大の指先が、ピクリと動いた。




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