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XNFA--ゼノファ--「ようこそ……地獄の最前線へ」  作者: アトラモア
第三章 影纏

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第36話 影纏

「やあ、諸君。よくぞ集まってくれた」


 デスゲームで使用されたドームに、500人にも満たない数の軍人が集められた。


 急遽用意された壇上に立っているのは、戦原凱導(いくさばらがいどう)。圧倒的な力を秘めている戦原は、辺りを見渡して微笑む。


「顔が硬いな。なに、久しぶりの戦争というだけだ。そこまで緊張せずともいい。まあ、初めて戦場に立つ者もいるだろうが、隊長の指示に従えばいい。やれることを、やればいいだけだ」


 簡単に言ってのけるが、初めて戦場に立つ人間もちらほらといる。それは、靭が率いるメンバー、凛たちも同じだ。靭は、平然と話を聞いているが、後ろに並ぶ凛たちが緊張しているのだろう、軍服が擦れる音が聞こえる。


「勝てばいい。どんなことをしても、勝てば終わる。戦争とは、そういうものだ」


 柔らかい雰囲気から、真剣な表情に変わる。


「お前さんらなら、必ずやり遂げると信じている」


 ドームにいる軍人の空気が引き締まる。


「地球に侵略したこと、後悔させてやろうじゃないか」


 オオオオオ――野太い声が、ドームに響いた。


 そこから、全員が一斉に動き出す。深海隊は、十善寺隊の後に続くようにドームから出た。


 浮遊車乗り場について、靭達が浮遊車に乗り込もうとした時だ。


「深海隊長」


 靭に声を掛ける人物がいた。 


「十善寺」


 十善寺はいつものヘラヘラとした顔ではなく、隊員たちの命を背負う上官の顔つきだ。戦争の恐ろしさと厳しさを知る顔つきが、靭の気持ちを引き締める。


 そんな本物の軍人であり、先輩でもある十善寺が、重たげに口を開いた。


「先に残酷なことを言っておくね。君の部隊に助力できることは、ほぼないと思ってね」

「……そうか」


 十善寺が言った通り、確かに残酷な事実であった。新部隊かつ、戦争未経験にもかかわらず、助力は一切なのだから。靭の返答が遅くなったのも、無理はない。


 靭の返答に、十善寺は言葉を続けた。


「だから、どうにかして影纏(シャドウ)の解放率を上げてほしい。無理なお願いだと分かってはいるけどね……でも、そうでないと、確実に彼らは死ぬ。ボクは、それを……望んでいない」


 自分の瞳を見つめる赤とオレンジ色の瞳に、靭は青い瞳を向けたまま頷く。先ほどの返答とは違い、今度は即答で返す。


「俺だって望んでない。それに俺は、アイツらなら出来ると思ってる」


 影発現者の選別試験では、凛たちは自力で(ゼノ)を発現させた。なら今回だって出来ると、靭は本気で思っている。だからこその即答だ。


 靭は、凛たちを見て微笑む。そして、表情を苦笑いにしながら、十善寺と目を合わせる。


「仮に無理だったら、命に代えても守ってみせるさ」


 靭は、真剣な顔をして、十善寺に宣言した。ただ、十善寺は靭の言葉を聞いて、首を横に振った。どうやら、靭の答えに満足していない様子だ。


「ダメだよ。君にはこれからも働いてもらわないといけないからね。なにせ、君と君の率いる隊員には期待しているから。だからこそ、君が率いる部隊を別行動にさせてるわけだしね」


 十善寺はそういうと、靭から視線を外して別の人物に目を向けた。靭は、十善寺の視線の先にいる人物を見た。そこには、あたふたしながら一生懸命に話しかける如月の姿。


 靭は、ため息をどうにか飲み込んだ。如月未来、未来を視ることの出来る力を持つ軍人。その彼女を見たということは、面倒ごとに巻き込まれていると思ったからだ。


「……勘弁してくれよ。新部隊に、そこまでの重荷を背負わせるなんて」

「そうだね……本当ならボクだってそうしたくはなかったけど、そうせざるを得なかったんだ」


 暗い表情を見せる十善寺の言葉に、靭は思わず頭を掻いた。本心から出た言葉なのだろう。彼女の顔がそう告げているのだから、彼らを責めるわけにもいかない。戦争とはそういうものだと、納得するしかない。


「そうか」


 けれど、靭の表情は変わらない。いつもの淡々とした顔を見せる。


「まあ、でも……そうだな」


 靭は、一つの可能性を見出していた。


 新部隊だからこそ、可能性に賭けたのかもしれない、と。重要な場所に靭達を配置すれば、生き残れる可能性がある未来もあるのだろう。


「なら、どうにか足掻いて見せるよ」


 今は、そう返すのが精一杯だった。ただ、十善寺は、靭の言葉に対して微笑んだ。どうやら、納得はしてくれたようだ。


「じゃあ、その言葉に期待させてもらうとしようかな」


 十善寺はそう言うと、手を差し出した。靭は、苦笑いをして、その手を掴んだ。


「お互い、必死に足掻こうじゃないか」

「ああ」


 ギュッと互いに硬く手を握る。十善寺はまだ子供ではあるが、部隊を率いる隊長としての責任を背負っているのを強く感じた。靭は『どうにか足掻く』という言葉を嘘にしないべく、一人この握手に固く誓う。


「じゃあね」

「ああ、またな」


 十善寺と別れの言葉を掛けてすぐ、視界にもう一人の人物。


「豪か」

「よお、靭。お互い、いつもみたく必死に泥臭く頑張ろうぜ」


 いつもみたくというのは、ここ数日の戦場に赴いた話だ。靭と豪は、服を泥まみれにして戻ってきたというのに、十善寺だけは軍服を一切汚さずに戻ってきたことを言っているのだと、靭は思った。


「ああ、そうだな」


 思い出し笑いをしながら、もう一度、ギュッと力強く握手する。


「爪愛ちゃあああん!」

「琥珀ちゃあああん!」


 どうやら挨拶に来たのは豪だけではなく、深海隊に関わった十善寺隊のメンバーも、凛たちに挨拶しているようだ。たった数日ではあるが、すでに友人のような関係なのだろう。


「あっさりと死なないようにね、吟時後輩。君、弱いからさ」

「あ、アハハ……天音先輩も、油断してぽっくりいかないでくださいね。あなた、すぐ油断するところがありますからね」

「はは、相変わらず口だけは達者だね……斬るよ?」

「やりますか?」


 吟時が少しおかしくなったのか素直になったのかは分からないが、彼に天音が大いに関わっているのは間違いないなと、靭は思った。


「悪いな……あいつは、変なんだ」

「いや、うちのも変だから、気にするな」

 

 互いに気苦労が絶えないなと思っていると、豪が拳を前に突き出してきた。


「じゃあな……また会おうぜ」

「ああ、もちろんだ」


 コツンと拳をぶつけて、互いに背を向ける。


「ほら、行くぞ、吟時」

「……あ、ちょ、靭さん、自分で歩けますから」


 今にも喧嘩しそうな吟時を引きずりながら、浮遊車まで歩いた。


 全員が車に乗り込んだのを確認すると、非戦闘員であろう運転手が声をかける。


「それでは、出発いたします」


 少しの浮遊感のあと、浮遊車が進んだ。


 

 車内では、空気が重い。全員、緊張しているのだろう。車内はリムジンのように、お互いの顔が見えるようになっている。話し合いをする場としても用いているのだろう。


 靭は、全員の顔を見て、何を話すべきか考えていると。


「……ねえ、みんな、いい?」


 先に声を出したのは凛であった。


「凛ちゃん、どうしたの??」


 琥珀は、凛の言葉に反応して、歯を見せて笑う。ただ、その表情は少しだけ硬い。凛の表情も硬いものだ。視線を落として、小さな手を握っている。


「わたし……琥珀ちゃんと同じで、自分で自分を偽ってた」


 凛の突然の告白に、車内の空気は戦場へ向かう緊張から、凛の言葉に対する緊張へと変わっていた。


「本当のわたしの名前は……木花雫(このはなしずく)


 凛、ではなく、木花雫は、靭の方を見ずに下を向いたままだ。


「雫ちゃん、可愛い名前だ!!」

「……ありがとう、琥珀ちゃん」


 お互いに自分自身を偽っていたからか、二人は手を握って仲睦まじい姿を見せる。


「……」


 響は二人を微笑まし気に見た後で、靭の方を睨んだ。なんとなく、言いたいことは分かったが、ここで触れることはしない。そもそも、靭に対する雫の気持ちは、ずっと前から変わっていないのだから。


「でも、どうしてそうなっちゃったの?」


 琥珀の言葉に、凛は視線を落とす。


「木花凛は、お姉ちゃんの名前なの。わたしは、お姉ちゃんが大好きだった。それは、両親も同じ。優秀で愛嬌があって、誰からも愛されるお姉ちゃんに期待してた。わたしは、両親にとって姉の代用品でしかなかったんだ」


 ギュッと小さな手を握りしめる。


「二人とも、わたしを見てくれない。二人だけじゃなくて、親戚も、友達も、全員がお姉ちゃん目当て。わたしは、二の次だった……誰もわたし個人を見てくれない」


 泣きそうな声で、でも決して泣かずに雫は続きを話す。


「でもね、お姉ちゃんだけは、わたしを見てくれたの。だから、大好きだった……何でもできる優しいお姉ちゃんが……大好きだったの」


 耐えきれず涙を流す雫を、琥珀が優しく抱きしめる。雫の頭を撫でて慰め続けた。雫は、琥珀に頭を撫でられながら、ポツポツと呟く。


「わたしは、きっと……お姉ちゃんになりたかったの。だから、お姉ちゃんの名前を借りたの……ごめんなさい、騙しててごめんなさい。ごめんなさい……ごめんなさい」


 雫は謝り続けた。その謝罪は、どこから来たのか。靭は何となくだが、自分に向けているものだと思った。きっと、最初から自分のことを知っていたのではないだろうかと。


 靭が、雫の姉である【木花凛】と付き合っていたことも、全て。


 けれど、靭は雫を責める気はない。自分は最愛の人を忘れていたのだから、その権利はないと。


 だから、気にすることはないと、靭が雫の肩に触れようとした時だ。


「雫ちゃん!ワタシは、どんな雫ちゃんでも好きだああああああ!ワタシは雫ちゃんしか見てないよおおおお!!」


 男らしい発言をぶちかました琥珀の言葉に、一瞬車内の空気が止まる。


「琥珀ちゃん……ありがと」


 雫は涙を流しながら笑顔を見せて、琥珀を抱きしめた。そんな二人を見ていた響が言葉をかける。


「ふふ……琥珀ちゃん、男らしいわね。かっこよくて好きよ」

「うぐ……なんてカッコいい声……響ちゃんも好きです、結婚してください」


 突然のプロポーズ。


「ごめんなさいね。私、結婚するなら男がいいの」

「そうだよねー、ワタシも男と結婚したいもん」


 振られたというのにあっけらかんと答える琥珀により、緊張していた空気が一気に和んだ。琥珀に感謝しているであろう笑みを浮かべた響は、雫の隣の席を靭から奪い取る。あんたが座る資格はないとでもいうような態度で示す様に。靭は、思わず頬を掻いた。


「雫ちゃん、話してくれてありがとうね。私も、琥珀ちゃんと一緒で貴方しか見てないわ。だからもう、あなたらしく過ごしていたらいいの。誰も貴方を代用品として見てないわ」

「……ありがとう、響さん」

「真実だもの……ねえ、男たちもそう思うでしょ?」


 響が男性陣にうまいパスを出す。


「はい、僕も雫さんがいい子だって知ってます。食事の後片付けとか、お礼をしっかり言ってくれるいい子だって」

「自分もそうですよ。いつも助けられてます。傷の手当てもそうですが、言い合える人としてもね。まあ、そもそも、貴方のお姉さんを知ってる人がいないわけですから」

「吟時君、うるさい! そういうのじゃないから、いま!」

「はい、すみません……」

 

 またしても吟時節からの琥珀のお叱りである。


 雫は、吟時と琥珀の会話を気にしておらず、じっと靭を見ている。


 雫にとって一番言葉が心に響くのは、靭だけだと欲しているように。


「【凛】と雫は、全く違うよ。お前には、お前のいいところがある」

「靭……ありがと」


 それ以上は踏み込めないような顔で、雫は靭から視線を逸らした。


 少し気まずい空気が流れそうになったところを、響が声を出す。


「雫ちゃん、絶対に年齢も偽ってるわよね?」

「……うん。本当は、吟時君と一緒」


 響の問いに対して、雫は素直に答えた。吟時と同じということは、18歳である。靭は、顔から血の気が引いた。それはもう、めちゃくちゃに引いた。年齢の割に幼いと思っていたが、どうやら本当に幼かったらしい。


 戦場に行く前に、なぜだか社会的に死んだ気分だった。


 ニヤリと口を三日月のように歪めた響と目が合った靭は、自分の人生が終了した気分になる。


「深海、あんた……ほぼ高校生に手を出したのね」


 グサッ――靭の心臓に巨大なバリスタの矢がぶっ刺さった気がした。それはもう、めちゃくちゃに手を出しているので、反論の余地などない。


 靭にできるのは、それ以上、社会的に死ぬ発言をさせないようにお願いすることだけだ。


「や……やめてくれ……隊長としての信用が……」

「あら、無駄に背負っていたのかしら? あなた、そういうの絶対嫌いなタイプなのに」

「うぐ……」


 もはやぐうの音もでない。


「ええー、でも、雫ちゃんが靭隊長のこと好きなら、いいと思うなぁー!!」

「そうですね。もう、きっと、そういう法律も無いと思いますから」


 琥珀と守大も、フォローに入る。守大が同意すると、琥珀は嬉しそうに大きく頷いていた。


「だよなー!! ん、待てよ……ということは、ワタシの方がお姉ちゃん!?」


 その後、雫よりも年上だと気づいて一人でにやけ始めたりと、自由な子である。


「そうですね、互いの了承があればいいんですよ、靭さん。そもそも、紫苑さんだって自分と」

「アンタ、本当に耳壊すわよ?」

「すみません」


 吟時がまた一言余計なことを放って、響に怒られている。こいつは本当に何してるんだろうかと思った靭だが、少しだけ救われた気がした。いや、本当に少しだけではあるが。


「靭……わたしは」


 雫が靭に声を掛けようとした時だ。


「すみません、あと10分ほどで目的地に到着いたしますので、覚悟をお願いします」


 運転手から声が掛かると、空気がさらなる緊張へと変化する。


「軽く打ち合わせだ、いいな?」


 さきほどの明るい空気が消え去り、真剣な表情で全員が頷く。


 雫はまだ何か言いたげであったが、コクリと静かに頷いた。


 残りの10分間で、作戦をまとめる。とはいえ、やることは限られているし、もともと靭の中で作戦を決めていた。あとは、役割分担を伝えて、反対意見がでないかの確認。それから、どこまで影纏(シャドウ)になれるかの確認も取る。そこが、もっとも重要だからだ。


 話し合いは順調に進み、目的地にちょうど着くころには、作戦も完了した。

 

「お気をつけて」

「ありがとうございます」


 全員が浮遊車から降りる。


 そこに広がるのは、まさしく戦場であった。招集を掛けられるより前に、XENOS(ゼノス)と対峙していたであろう場所は、元々木々が生えているであろう広場だ。燃えている木や、巨大な力で薙ぎ払われたであろう切り株、大地は荒れ果て、歩くこともままならない。


「酷い……」


 深海隊の誰かが、そう呟く。


 近場には、下半身だけの死体や頭が潰れた死体、そして体の一部がそこら中に転がっていた。また、その近辺にはXENOS(ゼノス)の死骸である宇宙石も鎮座している。人の血の臭いだけではなく、腐敗した魚とドブを混ぜたような悪臭も漂っており、その場に立つだけでも立ち眩みしてしまうほどの強烈な汚臭が広がっていた。


 靭は、その戦場を見てから、遠くの方で光る景色を眺める。数km先であろう場所で、闇を照らす光が見え、その後で炎の爆音、雷撃の轟音が至る所で鳴り響いていた。大きな音の中でXENOS(ゼノス)であろう咆哮や、人の悲鳴も僅かに聞こえる。


 靭は周囲の状況を把握してから、事前に十善寺から受け取っていた腕時計型の端末からホログラムを展開する。


「聞いてくれ」


 雫たちに声を掛ければ、全員が靭の展開したホログラムを注視する。ただ、雫と響は、目の前の惨状を見て、すでに顔色が優れない。一方で、琥珀、守大、吟時は、ただただ静かだ。

 

 何か声を掛けるべきかと思った靭だったが、ひとまず状況説明に入る。


「俺たちは目の前の戦場ではなく、西側に進んで、これから来る新手のXENOS(ゼノス)を迎撃する。目的地に着けば、すぐに接敵するだろうから、全員覚悟を決めろ」

 

 靭の言葉に、全員が頷いた。弱音がでてくることを予想していた靭だが、いい意味で裏切られたようだ。全員の瞳から『もう、やるしかない』という覚悟が伝わってきたからだ。


 靭は、ホログラムを消去して、苦笑いを見せながら全員の顔を見た。


「……ああ、こういう時、何か言うべきなんだろうけど……思いつかねぇや」


 ハハハと乾いた笑みを見せた靭の何とも言えない表情に、全員の表情が緩まる。気の抜けない空気の中、少しだけ緊張の荷が降りたようにも思えた。


「まあ、でも……今までどうにかなったんだ。きっと、また、どうにかなるさ」

 

 そういえば、全員が静かに頷く。靭は、すでにみな、覚悟が決まっているのだから、これ以上の言葉は不要だなと感じ取った。



 そして、ゆっくりと前に出ていき、雫たちの顔を見てから、背筋を伸ばして宣言する。


「総員、影纏(シャドウ)解放!」


「おう!」


 全員が声を揃えて叫ぶ。


影纏(シャドウ)!!」


 全員の心臓から、(ゼノ)が噴き出す。


 それぞれが姿を変え、白い軍服が黒く染まっていく。そして、暴走状態で見せた姿へと形を変えた。ただ、今回は、全員顔までは黒く染まっておらず、意識はハッキリとしている。


 ほとんどが、ものにしたと言っていいだろう。


「……ここまでうまくいったのは初めて」


 雫は、深緑をベースに赤・青・紫・白の四色が太い束となって混じる髪を靡かせる。軍服から、黒と白のロングスカートドレスへと姿を変えた。頭には黒と白の花冠。瞳は髪と同じ配色の玉模様。背中には黒い羽を生やしている。顔が見える分、闇の精霊のような姿だ。


「すごーい、かわいいいいいいいい!」


 黒いゴスロリフリルに身を包んだ琥珀が、ふわふわの尻尾を揺らして歓声を上げる。だが、ルビー色のウルフヘアーから覗く獣の耳や、大きな棘のついたチョーカー、そして何より指先で鈍く光る鋭い爪と牙は、彼女が獰猛な獣人であることを示していた


「これなら、守れる」


 金色の短髪に額当てを締め、漆黒の全身鎧とマントを纏った守大が力強く拳を握る。両手のガントレットに呼応するように、二つの巨大な盾が重厚な音を立てて宙に浮き上がった。それはまさに、鉄壁の魔法騎士の姿だった。


「本格的なコスプレみたいね」


 響は、青みを帯びた紫色の髪の左半分だけが短く変化していた。左の額からは緩やかにカーブする角が伸び、背には蝙蝠の羽、手足には鋭い爪と鱗が浮かび上がっている。周囲に羽の生えた様々な機材を従え、半身を悪魔に染めた堕天使がそこに君臨した。


「まあ、そうですね……悪くないです」


 カラン、と下駄の音が鳴る。黒い和服に身を包んだ吟時は、団子に結い上げた黒髪から二本の角を、口元からは鋭い長牙を覗かせていた。腰に帯びた白と黒の二本の刀に手を掛けるその姿は、血を求める鬼そのものだ。


「……業讐(ネメシス)

『殺るぞ……ジン』


 靭は、青い髪がオールバックへ。軍服から黒いスーツに赤ネクタイとベストに変化する。目は真っ赤に染まり、首や腕には包帯、手には骨のガントレットを装備。ネメシスによって作り出された修羅と化す。


「……」


 変身した靭は、全員を見渡す。


「問題なさそうだな」


 雫たちは、影纏(シャドウ)になれていた。靭が見ても、それなりの力を感じる。三日間という短い時間であったが、どうやら意味のある修行時間だったようだ。


「うし」


 靭は、自分なりにスイッチを切り替えて、一度咳払いしてから、赤い瞳を見渡して全員に伝えた。


「……必ず、生き残るぞ」


 雫、琥珀、守大、響、吟時が頷くのを確認してから、前を向く。


「それじゃあ、行くか……地獄の最前線へ」

「おう!」



 深海隊の戦いが……始まる。



ダークな戦隊モノって感じで好きなんです、ここ



本作は【毎日18時】に最新話を更新しています。

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