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XNFA--ゼノファ--「ようこそ……地獄の最前線へ」  作者: アトラモア
第二章 XNFA--ゼノファ--

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第22話 パーティーの実力

第22話 パーティーの実力



『突然始まるデスゲームだぜええええええええええ!』


 いつも通りのふざけたアナウンスが鳴り響いた。


「いったん戦いに集中しよう」


 靭はあえて、五人に向かってそう発言した。急に言い争いを始めた吟時と響に、ではない。あえて、全員に伝える。ひとまずは、協力しようという靭なりの配慮だった。


「そ、そうだね!! アタシも頑張るよ!」

「は、はい。ぼ、僕も頑張ります!」

「わたしも、やれることする」


 靭の配慮を察したカル、守大、凛の三人が彼の言葉に賛同した。カルや守大がかなり大げさな反応を見せたことで、靭は思わず口角が上がってしまう。


 そんな様子をみていた響が、自分のしたことを反省するように、吟時に軽く頭を下げた。


「……ごめんなさいね、黒曜君。大人げなかったわ」

「いえ、俺の方こそ、申し訳ありません」


 二人は一応謝罪するも、心からといったふうには思えなかった。まあ、それでも、言葉にするだけましだと、靭はそれ以上、突っ込むことはしない。


 管理人のアナウンスにより、続々と部屋から出てくる人々。みな、髪の色が変化しており、頭だけ見るととてもカラフルで陽気な集団であった。


「やっぱり、ほとんどの人の見た目が変わってるわね」

「そうだな」


 響の発言に、靭が肯定する。ただ、ほとんどなので、数名ほど髪色が変化していない者もいた。カラフルな集団の中では、白髪は意外と目立つ存在となっている。


「髪色が白髪のまま変わってないのは、かなり少ないな」

「と言っても、何かしらの力は身についているでしょ?」

「そうだな」


 靭はざっと、生き残った人物の姿を確認する。表情が暗い者、意外と普通にしてる者、なんだかやけに明るい者、反応は様々だ。生き残った数自体も、目視で数えられそうなほど少ない。前回で七割以上が死んだのだろう。前回の戦闘では満身創痍で周りを見る余裕がなかったため、靭はこれだけ減っていたことに今更になって気づいた。


「それにしても、前回のでかなり死んだみたいだな」

「まあ、そうね。なかなかに強敵だったし。ざっと数えても50人くらいかしらね。カルちゃんが熊の化け物を喰らってなかったら、みんな熊の化け物に殺されてたんじゃないかしら?」

「え、じゃあ、アタシのおかげってことかぁ!! なんかそれは照れちゃうね」


 突然名前を呼ばれたカルだが、褒められたと受け取ったようで、牙のような八重歯を輝かせて笑う。まあ、実際、響の言う通りではあると思った靭は、否定はしない。カルの力は、かなり強力だ。


 キイイイイン――人の出入りが無くなったところで、マイクの機械音が入った。

 

『さあ、お集まりの諸君! 下へ参りまーす!』


 今回も下りるのに、時間がかかっている。前回同様、化け物退治なのだろうと、靭は察する。周りには、心強い仲間がいるため、今回に関してはそこまで心配していないようだ。


「深海さーん!」

「ん、どした」


 カルが話しかけてきた。にこにこと笑って、お腹を押さえている。これまで関わってきたのだから、さすがの靭でもカルが何を言いたいのかは想像がついた。ただ、どうしてカルがわざわざ自分の名前を呼んだのかが、靭は気になっている。


「あのね、お腹空いた!たぶんさ、今回も化け物退治でしょ? だったらさ、結晶化してる敵、影を使ってほとんど食べていい?」


 なにかとんでもないことを言いだしたカルだったが、それはカルに期待してることでもある。熊を食った影の力。あれは凄まじい。存分に発揮できるなら、そうしてほしいのだ。


「好きにしていいと思うが。そもそも、俺に聞かなくてもいいぞ」


 なぜか自分に聞く流れができそうな気がしたので、靭はそれとなく先手を打っておく。カルは靭から許可取りは不要と言われると、首を大げさに傾けて両手を組む。 


「んー、そっか!なんか、リーダーっぽかったから!

問題ないなら、いいや! ありがとねぇー!」


 カルの言葉に、靭は頭をかく。このままでは、行動のたびに靭に聞くというリーダーのようなポジションになってしまう。それは靭が最もしたくないことなので、遠慮したいのだ。責任のある立場を嫌う、それが靭という男の本質だった。


「そういう柄じゃないんだがな」

「そう? みんなを率先してまとめてくれたように見えた」


 凛は、率直な感想を伝える。凛に至っては、靭をリーダーだと思っていた表情だ。凛に頼られるだけならまだしも、他の五人から頼りにされるのは、かなりのしんどさだ。一人を守るのと、五人を守るのでは、労力も、責任も、何もかもが違う。だからこそ、靭はリーダーのような立ち振る舞いは避けてるつもりだった。


「そんなつもりはなかったな」


 積極的に会話に参加したわけでもなければ、仲良くなろうと声をかけたわけでもない。


(すべては、凛のため)


 自分だけでは凛を守り切れない。自分だけでは足りないと思ったからこそ、靭は彼らに交友関係を持ちかけた。それが無駄になることはなく、運良く仲間になれただけだ。気になることがあるから、それとなく会話を回してるだけなのだ。靭は、何ら特別なことはしてないと思っている。


 凛との約束を守るための行動だ。


(とはいえ、このメンバーの誰かが死ぬのも……忍びない)


 それは、きっと凛も悲しむ。凛の全てを守るのなら、なるべく他とも協力しておきたい。何とも不器用な男、それもまた、靭という人間だった。


「ところでさあ、今回はー、そのー協力して戦うの???」


 カルは、全員に向けてそう言い放つ。靭がリーダーではないと分かったにせよ、前回同様、協力して化け物を倒すのか知りたいらしい。カルは恐らく、協力したいのだろう。顔がそう言っている。え、するよね、するよねと、なんとも分かりやすく皆を見てる。


 カルのアピールが続く中、吟時が挙手をした。


「俺は好き勝手やらせてもらえると。紫苑さんのお守りは大変なので」


 ガーン――そんな効果音が聞こえてきそうな顔で、カルは口を大きく開いた。

 

 吟時の発言には、さすがの響も苛立ちを隠せないようで、口がひくひくと痙攣している。靭は、どうするべきかと悩んでいる。本心を見せろとは言ったが、軽口を言えという意味ではないはず。何とも言えない空気が、周囲に漂う。

 

「はぁ……ねぇ、生意気だと思わない?」


 先に口を開いたのは、響だ。どうにか感情を抑えているようだが、抑えきれていない。感情も読み取ることができる聴覚。おそらく、本心でそう言われたのだろう。靭は、少し考えてから声に出す。


「まぁ、かなり。大学一年生だし、そういうこともあるんじゃないか」

「とっても生意気」


 靭は、とりあえず場を収める様な発言をしたが、凛は響に同意する。吟時本人は、何も気にしていないようで、いつも通り楽しくもないのに口角を上げて笑っている。


「まあ、俺のことは気にせず、皆さんだけでどうぞ」


 ひとまず、吟時が協力しないことが分かった。少し距離を置いて、敵が来るのを今か今かと待ち続ける吟時に対して、響が靭の元へとやってくる。


「深海さんとこ、入れてくれない?」

「俺は構わないぞ」

「問題ない。カルちゃん達も入ってほしい」


 凛もそれに同意しつつ、共闘したいというカルにも声をかけた。守大はカルに従うので、自ずとセットになるのは、聞かなくても分かる。カルは凛に声をかけてもらって、大変満足そうな笑みを浮かべていた。


「パーティーだね!守大、パーティーだって!勇者パーティーじゃんね!」

「ぼ、僕は、カルちゃんが良ければ、それでいいので、はい」


 靭の予想通り、守大もパーティーに加わることに。なんともチグハグではあるが、これで5人パーティーとして行動することが決まった。


 とはいえ、パーティーを組んだからといって、靭は指示を出すつもりはない。そもそも、戦闘の指示など軍人でもない限りは不可能だ。なので、そのことは伝えておく。


「パーティーといっても、指示する余裕はない。非戦闘要員の凛と紫苑さんは、俺たちのサポートを頼む。俺と黄土くん、カルの3人で、向かってくる敵を蹴散らす感じになるだろう」

「即席パーティーだからね! 自分たちができることを頑張ればいいよね!」

「そうだな。カルの言葉通りでいいだろう」

「ふふん!」


 とってもドヤ顔である。みんなで協力して何かをしたいだけのようだ。それでも、凛の生存率が上がるとは思っている。さすがに、前回の戦いで思い知ったのだ。凛を背中におぶって、戦うことはもう無理だなと。


 なので、凛を守ってくれる存在を欲した。今回で言えば、直接的な戦闘に関与しない響が、凛と自分を守るために立ちまわるだろうと確信している。響とカル、凛には特に何も言うつもりはない。


 懸念点が一つだけあるとすれば、守大の存在だった。靭は、守大の方へと向かう。


「守大は、基本カルのサポートに集中してていい。言われなくても、そうするだろうが、念のためな。手が空いてる時に、できれば手助けしてほしいな」


 あまり自分の意見を口にしない守大は、どう動くべきか迷っているように見えた。行動に迷いがあると、とっさの時に動けないと判断してのことだ。守大の力はタンク役に相応しい。それが存分に発揮できなければ、後方の凛と響にも危険が及ぶ。気の優しい守大をタンク役にしてしまうのは正直気が引けたが、靭は割り切ることにした。


「い、いいんですか。その、今まで通りで」


 今まで通りとは、カルのサポート、つまりタンク役だ。カルを守るために、守大が盾となる。それだけでも、十分な仕事である。だから、靭は、本心を告げることにした。命がけで前線に立つのだ。本心を告げないのは、卑怯なことだと感じたのだろう。


「当たり前だろ。俺も、凛を守るために戦うんだ。だとしたら、集団でまとまって動いた方が守りやすいだろ。それに、君は暴れるだけで、他の敵が寄ってくる。正直、一番危険な盾役として非常に心強い」

「そ、そうですか、ね」


 盾に使うぞと、発言したつもりだったが、守大は気にしないどころか、みんなの役に立ててうれしそうだ。靭の心がさらに痛む。心優しい子を、力が強いというだけで盾にするのだから、当然と言えば当然だ。

 だからといって、やらなくていいとは言えない。守大に期待している靭は、守大の背中を叩く。


「あぁ、もちろんだ。期待してる」

「えっと、はい。精一杯頑張ります」

「凄いぞ、守大! みんなから頼られて!」

「そ、そうだね」

「カルにも期待してるから、頑張れよ」

 

 靭がそういうと、カルは胸を強くたたいて仁王立ちする。


「まっかせてよ!」


 カルに尻尾が生えてたら、きっとブンブンと尻尾を振り回すほどの喜びだ。カルと守大は、問題なさそうなので、靭は響の方へ向かう。


「紫苑さんは、足止めを頼む。凛を守ってやってくれ」

「もちろんよ。私も、死にたくないもの」

「十分だ。凛も影の蔦を使ってフォローに入れたら、頼むぞ」

「もちろん」


 凛はいつも通りだ。靭の言葉には、必ず従ってくれる。


「怪我をしたら、治してくれ」

「任せて、それがわたしの役割」

「頼んだぞ」

「うん」


 ギイイイイ――大まかな役割分担を決めたところで、巨大な門のような扉が開く。作戦会議をしている間に、目的地についていたらしい。


 吟時はすでに、ここから離れて一人、別の巨大な門の前で戦闘の準備をしていた。


「深海さん、深海さん」

「なんだ」

「掛け声お願い!」

「……それ、本当に必要か?」


 まさかの言葉に、靭はやりたくないぞという視線を投げかける。だが、カルには一切通用しない。早く早くと、心待ちにしている。カル以外も、靭の言葉を待っていた。


(マジかよ……)


 靭は肩を落として諦めた。士気が下がるよりはいいだろうと、覚悟を決める。もちろん、辱しめを受ける覚悟だ。


「……生き残るために、戦う。やるぞ、みんな」

「おう!!!」


 全員の声が揃う。

 

 ここだけ見れば、パーティーっぽいなと、靭は苦笑した後、戦う人間の覚悟が決まった顔つきを見せる。


『さあああああ、はじまるぞおおおおおお!!』


 カーン――鐘の音のBGMがドームに響いた。


 その音をきっかけに、次から次へと、化け物が溢れ出てくる。


「ガウガウ!」

「グラアアア!」

「ギイイイイ!!」


 前回の倍の数はいるであろう、犬や猫、馬に、イノシシ、熊の化け物たち。それに対して、生き残りは、前回の半分。戦力差はおおよそ4倍といったところ。計30体ほどの化け物たちが、靭たちの元へ駆ける。


「来るぞ!!」


 靭の言葉に、最初に飛び出したのは……。


「お腹空いたあああああああ!」

「いきなりか!!」


 守大が先攻すると思いきや、カルが靭の横を走り去っていく。自分のできることとは言ったが、まさか突然飛び出すとは思わなかった。カルは、目にも止まらぬ速さで、敵の群れに突っ込んでいく。ただ、守大はカルの強行に慣れているようで、カルの後を当たり前のようについていく。守大の横顔を見た靭は、口角を上げた。


「たく、男前な顔しやがって」


 守大の顔つきが、いつものオドオドした表情から一変し、戦士のそれへと変化していたからだ。


「やっちゃうよーーん!」


 身軽な足取りで、化け物の横を駆け抜けながら、爪で切り裂いていく。獣のような戦いから一変して、空中へと飛んだ。


「影、召喚!!」


 大声でそういえば、カルの口から影が出現する。


「いただきまあああああす!」

 

 空から落っこちながら、集団目がけて影で複数体の敵を食らう。ガリガリバキバキと、結晶化している肉を喰らいニヒルに笑う。戦いながら食事もする、異常な戦闘だ。

 

「うーん、美味!」


 地面に着地したカルは、靭達から離れて孤立してしまう。

 

「ガアアアア!」

「グラアアア!」

 

 守大は、このままでは間に合わないと悟り、動きを止めた。


「こいやあああああ!」


 空気が揺れるほどの大声を出すと、カルに向かっていた視線が一気に守大へと向かう。数匹の化け物たちは、カルの元へ向かうが、残りはすべて守大へと向かう。


「うおおおおおおおお!」


 守大が叫ぶ。すると、影が守大の手に集まっていく。影は守大の手と腕を覆い、首や頭にも纏まっていく。威圧感のある姿に、近くにいた犬や猫の姿をした化け物が一瞬怯んだように動きを止めた。


「どらああああああ!」


 守大はそこから、千切っては投げを繰り返す。結晶化した化け物は、かなり重い。一番軽くても50kgはありそうだ。それを守大は片手で軽々と持ち上げて、地面に叩きつけていく。馬や熊の化け物とも、力比べで負けていない。

 

 なによりも、驚きなのは、攻撃を受けても、守大の体には傷一つないことだ。頑丈な肉体と、影による力の増加。もはや、化け物たちは敵ではないと、守大の行動が示している。


 守大の圧倒的な力を前にして、狙いを変える化け物たちは、靭の元へと向かう。


「8体か」


 守大とカルがほとんど引きつけているため、少ないにしても前回よりは多い。靭は自ら迎え撃つため、速攻を仕掛ける。待っていても状況は良くならない。なにより、靭の力は敵の攻撃を受けなければ発揮されない厄介な能力だ。なれば、自ら攻撃を仕掛けに行く戦い方が正解だった。


「殺される前に、殺す!」


 弱肉強食の世界と同じ摂理で動く。前回は殺すのにも手間取った化け物を、簡単に仕留めていく。顔面を蹴れば首が吹き飛び、殴れば相手が吹っ飛んで行く。苦戦した馬の化け物でさえ、ニ、三発で殺せた。


(肉体強化か……本当に化け物になったもんだ)


 派手な戦い方ではないが、最小限の動きで葬る。効率的な殺し方だ。とはいえ、一度に相手にできるのは5体ほど。どれだけ素早く動いても、靭の手足が伸びるわけではない。


 靭の攻撃をかいくぐった残りの三体が、後方の凛と響に向かう。


「凛!」

「うん!」


 靭が叫べば、凛が手を前に出す。


「捕らえて」


 手からは蔦の影が飛び出す。先に出したものよりも、かなり太い蔓だ。化け物たちの力は、前回の靭では圧倒できなかった力を持つ。凛は、それを間近で見ていた。ある程度の力が必要だと察して、蔓を作り出した。凛は化け物を捕まえるために、蔓を操る。


「む、難しい」


 しかし、化け物の動きは予想以上に素早い。初めて出した蔓を、うまく化け物たちに絡めることができないようだ。


「任せて」


 響が一歩前に出る。咳払いをして、すうっと息を深く吸って、ぐっと腹に力を入れているように見える。


「ーーーーーーー!」


 超高音が放たれると、敵の動きが硬直する。硬直すれば、捕えるのは簡単だ。蔓は蛇のように絡みつき、化け物の動きを完全に封じた。


「ありがとう」

「んん、いいのよ」

「これなら、やれそう」


 ギチギチ……バリイイン――凛が操っていた蔓が、化け物たちの体を絞め潰した。絞め殺された化け物たちは、蔓がほどかれても、その場から動くことはなかった。


「こりゃ、負けてられんな」


 靭は凛たちの戦いを見て口角を上げながら、残りの敵を殴り倒していく。攻撃を受けても痛みを感じない身体へと変化した靭は、ひたすら化け物たちを圧倒していった。


 周りから敵が消えれば、次はカルと守大が相手にしている化け物を葬りに向かう。靭が前に行けば、凛と響もサポートのためにその背中へ続いた。


 そこからは、蹂躙が始まった。響の声で化け物を足止めし、足止めされた化け物を凛が絞め殺す。カルは身軽な動きで化け物を喰らい、守大は影の力と合わせて熊の化け物を力で圧倒し、靭は殺し漏れがないような動きで周りを支えながら動き続けた。


 前回は、かなりの時間を要しながら、なんとか倒せた化け物たち。


 それを今回は、10分足らずで殺しきる。


 能力が強化された者たちの戦いは、もはや戦いではなく蹂躙に終わった。


「いやー、超余裕だったね!」


 カルが大変満足そうに周りに伝えると、守大と靭は苦笑する。


「か、カルちゃん、一人で飛び出すのは危ないよ」

「そうだな。肝が冷えたぞ」

「えー、いけると思ったから飛び込んだんだよー!!」


 二人が注意するのも関係ない。カルにはカルの戦い方があるということだ。


「つ、疲れた」

「そうね……前衛組の方が元気なんて、おかしいわ」


 凛と響は、すでに体力を持っていかれているようだ。体力が強化されていないのか、サポートに回るだけでも一苦労のようだ。


「それをいうなら、吟時を見てみろ。一人なのに、息すら乱れてなさそうだぞ」


 遠くでは、吟時が一人で化け物たちと戦っていた。すでに25体ほどの敵が地に伏している。残り5体を相手に目に見えない速さで短距離を移動しており、次の瞬間には敵が死んでいる。死体は鋭利な刃物でも使ったかのように、綺麗に両断されていた。


 いつもの笑みではない、戦いを楽しむ狂戦士のような姿を見せている。邪魔をするなという雰囲気が駄々洩れなので、靭たちは体力を回復すべく、吟時の戦いを見守った。余裕を見せているので、間もなく終わるだろう。


 靭達や吟時以外の場所も、まもなく戦闘が終わりそうだ。己の肉体で戦う者や、魔法のような力を発揮して戦っている者もいる。やはり、生き残った全員になにかしらの特殊な能力が芽生えているとみて、間違いなさそうだ。


 靭は、体力を回復させつつ、周りの戦いを観察するのであった。


 そして、すべての化け物が倒されてすぐのこと。


『おー、さすがに早いねぇ! これなら、問題ないね!!』


 喜びを露にする管理人の声が、ドームに響いた。



『じゃあ、ラストゲームを始めよう!』


 管理人は、嬉々として告げる。


『今の君たちじゃ絶対絶対ぜーったい倒せない化け物だから、全てを出し切って、死ぬ気で強くなるんだぞ!じゃないと死んじゃうんだから!』


 管理人の言葉に、靭はため息を吐く。ラストゲーム。今のままでは絶対に勝てない化け物。嫌な予感しかない。


『ちなみに、これが最後だから、超本気で頑張れよ!』


 ギイイイイ――重々しい門が開く。


『制限時間は72時間! クリア条件は……影の発現!

発現したかどうかは、ボクチンこと、十善寺花火ちゃんが見定めちゃうぞ!

それじゃあ、張り切って行ってみよう!』


 最後のデスゲームが、始まる。



お読みいただきありがとうございます。

本作は【毎日18時】に最新話を更新しています。


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