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レプリカトーン  作者: 三堂いつち
キツネの檻
28/40

幕間:彼と彼女と岩

エピローグではありません

 ここは俺の店《ヒースパレード》。

 モノブラムの中でも人家のない静かな川沿いの静かな店だ。

 そう、静かなはずだ。


「なんでワタシを海に連れていかなかった!!」


 この面倒な客がいなければ。

 客の名前はエリカ。前作からの常連で付き合いは長いし、それなりに気心は知れてるが、どうにもコイツの煩さには慣れない。

 今日も今日とて、この前俺がアキたち南のボス狩りに行ったことを、どこぞで聞きつけたようで「仲間外れイクナイ」と喚いている。


「しゃーねぇだろ。6人でパーティいっぱいだったし、第一その場にいないのが悪い」

「誘えよ!!ボスなんて楽しそうなイベントなら、普通ワタシを呼ぶだろ」

「呼ばねーよ、このバトルジャンキー」

「ゲーム好きなだけですぅ」


 顔突き合わせたら大体こんな感じで、言い争ってるわけじゃないが、特段内容のある話なぞしない。

 なのに、周りからは「2人って仲いいよね」とか言われる。

 ゾッとする。


「海行きてーなら1人で行け」

「1人で海とか自分探ししてるみたいで嫌だよ。寂しい」

「槍にリール付けてやるからそれで釣りでもしてろ」

「んだよそれ、ちょっと面白そうじゃん。……じゃなくて!!」


 槍での釣りのことを考えたのだろうエリカの動きが一瞬止まった。が、すぐに喧しくなる。


「ワタシとも遊べよー」

「やだよ。お前の遊ぼうは大体「戦闘いこう」なんだよ。俺はのんびりチマチマ武器を作りたい」

「軟弱なヤツめ」

「なんとでも言え。大体FoW()でだってリアルだって散々付き合わされてんだ。少しは1人にさせてくれ」

「なんだよ。ボッチ仲間だろー、ケチー」


 まったくもって、これのどこを見たら仲が良いなんて思うんだか。

 解せぬ。

 口を尖らせて悪態を吐くこの腐れ縁は、しかしすぐにニタリと企みを持つ顔になる。


「そうかそうか。じゃあワタシ1人で行くことにしよう」

「おう。行ってこい行ってこい」


 企みは俺の杞憂だったか。

 そうだ。コイツは基本的にその場のノリで動くタイプだ。企みや(はかりごと)とは無縁の人間。

 背を向けるエリカを一応見送る体で、それでも内心はようやく静かになるとハッピーだ。


「因みに東のボスなんだがな~」

「行ってこい」

「ドロップ品は鉱石らしい」

「よし。詳しく聞こうか」




 ▽


「オラァ、グラフトォ!!しっかり引き付けろぉい」

「やってんんだろう、がぁ!!」


 チクショー。聞いてた以上にデカイじゃねえか、ジャイアントロック。

 盾で受けるにはあまりにも重い一撃に、衝撃に体が吹っ飛びそうになる。


「アハハハハ!!」

「バトルジャンキーめ……」


 必死に攻撃を受け止める俺を他所に、エリカはなんともまあ楽しそうに岩に槍を突き立てる。

 それはもう、聞いてるこっちが気持ち良い位の高笑いで。

 そんなバーサーカーを横目に見ていると、ジャイアントロックのパンチがまた飛んでくる。


「ぐぅ……!」


 こりゃ長期戦はムリだな。そうなる前に死に戻っちまう。

 うおぉ。腕痛ぇ。


「あれだな。埒があかんな」

「もっと人数いてもいいだろうに2人で来るからだよ」


 スタスタっと軽やかな動きで後ろに来るエリカ。


「でも弱点は分かった。頭の色が違うから多分アレが弱点だ」

「それはいいけど、届かねぇだろ」


 ジャイアントロックのパンチを受け止めながらの作戦会議。しかし、それだと俺はどちらにも集中出来ないで、半分半分疎かになってしまう。


「ワタシ行くから、攻撃止めといて」

「あ、オイッ!!」


 言うが早いか動くが早いか。俺の返事を聞く前にエリカはさっさと走り出してしまう。


「ぐおぉ……」


 制止する間もなくパンチを受け止めなくてはならず、結局俺の意見などないままアイツは勝手に行ってしまう。

 と思いきや、急に立ち止まる。と思いきや、腕を振り抜いて槍をジャイアントロックの頭めがけて投げつけた。


「これで、どうだぁああああ!!」


 ものスゴい勢いで放たれた槍は、投擲スキルでも乗っけたのだろう威力で色の違う頭に命中する。

 しかし、それ位で倒せるようなモンスターなら、それはボスではない。

 まだまだ元気な岩のパンチが俺めがけて飛んでくる。


「いっ、てぇなぁ」


 じんじんとパンチの勢いが盾から伝わり、それですぐに痛みが引いていく。

 慣れねえ感覚だ。

 構えた盾で視界は悪くなるし、どうしてこんな面倒な役回りの装備選んじまったんだか。


「ウハハハハ!!」


 なんか猿みたいな鳴き声が聞こえるなと思ったらエリカだった。

 アイツは俺の受け止めたジャイアントロックの腕を、まるで舗装された道を走るのと変わらない速度で駆け上がっていく。

 化け物か、お前は。

 そんであっという間に頭を射程に収めて、アイツは槍のアーツを使う。


「[ロッドグレイス][ミリオンピース]!!」


 あんな不安定な足場で、連続でアーツを使えるヤツなんてそうそういない。

 やっぱりアイツは規格外だ。

 そう思いながら、俺は構えた盾を下ろす。


「ふっ!!」


 エリカが地面に着地したタイミングで、ジャイアントロックが光って消える。

 ボス撃破だ。

 俺はさっさとドロップアイテムを回収して、さっさと引き上げようと声をかける。

 しかしこの腐れ縁は、


「もっかいやろう。次はもっと上手くやれる気がする」


 おいおい、冗談キツイぜ。





 ▽


「……結局そのあと10回以上は同じボスと戦わされたな」

「お疲れさんです」


 とある依頼の経過を報せるために呼んだアキと、依頼の話そっちのけで互いの苦労話をすることになり、俺はつい昨日のことをため息混じりに話した。

 しかし、コイツも中々に壮絶だな。パーティは女だらけで立場は基本オモチャ、その上厄介な性格のヤツまでいやがる。

 それでも最終的に「楽しいからいいけど」で済ませるコイツはなんだ。聖人君子かなんかか。

 これが、若さなのか……。


 そんな圧倒的な人間力を見せつけられた時、店の扉が開き客が訪ねてきた。

 ソイツはキョロキョロ店の中を見てから俺にこう尋ねた。


「エリカさんってここにいませんか?」

「いねーよ」



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