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レプリカトーン  作者: 三堂いつち
キツネの檻
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最後の一撃は

 ジャイアントロックの攻撃を避けつつ、チマチマと矢を放つこと数分。

 体力の20分の1は削れたかな?程度に戦果を上げることが出来た俺だが、ここで1つ問題が。


「矢が足りない……」


 ここで散々不憫と言われてきた性能発揮。

 成る程。ちゃんと残弾の管理をしなければココ一番の時に活躍できなくなるのがネックなのか。

 ……今さら気づいた。

 最近は盾役をやることが多くて、あまり弓を使っていなかったし。弓使っててこんな困窮することもなかったしで。

 ……はい。考えナシにピュンピュン射ってた自分のせいです。


「うぬぅ。歯がゆい」


 とはいえ、近づくのが危ない現状。矢を射つ位しかマトモな攻撃手段がないので、ドンドン矢を射っていくわけだが。

 どうして、長銃はリロードモーションするだけで残弾無限なんだろう。なら矢だって無限でいいだろうに。

 なんてのも、今さらな話だが。


「そもそも選んだのは自分だし……」


 迫りくる腕をバックステップで躱し、弓を構えて矢を放つ。

 そして、矢束から矢を引き抜こうとして、右手が宙を掴み、残弾がゼロになったことに気づく。

 なんてこった。安全策がなくなってしまったではないか。

 残された攻撃手段は、攻撃を掻い潜り接近、ジャイアントロックの懐に潜り込み短剣で斬撃を叩き込むくらい。

 さっきやろうとして危ないと判断したこと。だが、


「ま、出来ないことではないか」


 右手に蒼鉄、左手に紅鉄を持ち、地面を揺らしながら近寄ってくるジャイアントロックを正面に、集中力を高める。

 そもそも、多少のケガが怖くてこんなゲームやってられるかって話だ。

 所詮ゲームは試してナンボ。

 ……まあ、多少のケガで体力吹き飛ぶんだけどね。

 それでも今はやるしかない。


「ふぅ……」


 ジャイアントロックの手が目の前に迫るその時まで、ピンと集中力を研ぎ澄ませる。そうして、思考がクリアになった状態で手足をするすると動かしていく。

 余計なことは考えない。自分の動きと相手の動きを意識して、最善を直感で感じとる。

 そして、その最善を脳から体に素早く手繰り寄せ、行動する。

 ゾーンとか、スローモーとか、超感覚とかみたいな、そんな大層ものじゃなくて。ただの人間が目一杯頑張って出来る最大の範囲。

 ただそれだけ。

 ただのそれだけは、ゲームという枠組みと狂人化によってそれは、大層なものに迫る性能を発揮出来る。


「ガァアアアア!!」


 吠える岩の足元に潜り込む。


「[ツインアレイ]」


 ジャイアントロックの右足に4連撃のアーツをぶつけ、そしてすぐに離脱する。

 こんな危なっかしい場所に留まり続ける必要はない。

 そそくさとジャイアントロックの攻撃範囲から出て、若干のブレイクタイム。そして深呼吸を1つしてからまたジャイアントロックの懐に飛び込む。

 今度は迫る岩腕に飛び乗り、その腕をダダダとかけ上る。そんな俺を潰そうと、ジャイアントロックはもう片方の腕で俺を押し出そうとする。が、俺は横から迫る腕をバックステップで回避し、跳躍スキルを使ったジャンプで空を切った腕を踏み台に、肩まで一気に跳ぶ。

 狙いは側頭部。


「[レイドピアース]」


 唱えたアーツは6連撃の突き攻撃。蒼鉄と紅鉄をジャイアントロックの横顔に刺して、刺して、刺して、刺す。また刺して、刺す。


「ゴッ!?ガァアアアア!!」


 ジャイアントロックは今までにない声を上げるが、すぐに俺を下ろそうと腕を伸ばしてくる。

 俺は咄嗟に跳ねてそれを躱す。が、滞空している間に、ジャイアントロックが想定より前屈みになっていて、肩や頭に着地することは出来なくなっていた。


「やべ……」


 足が宙を蹴る。振り返るジャイアントロックと目が合う。

 空中、なんて隙だらけ。

 ああ、これはもうダメだな。

 そう思った瞬間。カーンと硬いモノが何かにぶつかる音がした。


「[ライナースラッシュ]!!」


 下から、アーツを唱える声がする。

 その声の元に目をやると、アカネが大剣で横薙ぎに一閃。ジャイアントロックの足を攻撃していた。


「アキ。無事?」

「無事……とは言えないな」


 だって、今まさに落下してるもの。

 するとアカネが俺の落下点に駆けてくる。


「危なっ……」


 そう呟いた時には、もう時既に遅し。

 俺はアカネに両手でキャッチされた。お姫様抱っこみたいに。


「無事ね。間に合ってよかった」


 ヤバい。アカネがすげーカッコいい。なんかキラキラして見える。

 それからアカネは俺を丁寧に下ろす。

 そうか。これがイケメンってヤツか。

 ポケーっとしてたら、ソニアに遠巻きにゲラゲラ笑われてるのに気づいて、メッチャ恥ずかしくなった。シアンもそっぽを向いているが、肩が揺れている。

 うわぁ。女の子にお姫様抱っこされてしまった。恥ずかしい。

 けれど、助かったは助かったので、お礼は言う。


「ありがとう」

「いいのよ。それより次、来るわよ!!」


 アカネの見据える先から、ジャイアントロックの拳が唸りを上げて飛んでくる。

 俺はそれを横に跳んで回避するが、アカネはその場から動かず躱そうとしない。


「アカネ!!」

「大丈夫よ」


 俺の声に、何でもないように応えてアカネは両手で大剣を構える。

 そして、アカネのすぐ目の前にジャイアントロックの拳が迫る刹那、アカネはアーツを唱えた。


「[ブレイズアッパー]!!」


 振り上げる両手剣は、ジャイアントロックの拳を上に弾く。


「[リスクフール]。アキ!!」

「わかった」


 腕を上に弾かれたジャイアントロックに、アカネは挑発のスキルを使う。足元はがら空きの上にジャイアントロックはアカネにヘイトを向けて、俺にとっては隙だらけになる。

 その隙を活かして俺はジャイアントロックの足まで駆ける。

 すると、途中で赤い光に包まれた。ソニアのバフだ。

 ああ。仲間がいるって、こんなにも心強い。


「[レイドピアース]」


 ジャイアントロックの足に、蒼鉄と紅鉄で6回突いて、そして素早く離脱する。

 アカネがジャイアントロックのヘイトを取ってくれているおかげで、とても動きやすい。

 そのアカネは何度も正面からジャイアントロックの拳をいていて、シアンもソニアも安心して援護が出来る状況を作っている。


「やっぱすげぇな……」


 あんなに何度も強力な攻撃を弾き続けることは、簡単なことではない。

 大前提にステータスもそうだが、相手の攻撃を受け止めきらず勢いを逃がしていく。それをアーツでおこなうのは、なによりプレイヤーの力量がものをいうのだ。


 そんなことを続けてから数分。アカネがジャイアントロックから距離を取り、少し戦闘に間が出来る。


「流石にかったいわね~。全然体力減らないじゃない」

「いやいや。結構へらしてますよ。もう少しじゃないですか」

「さすが姐さんゴッツイわぁ。見てて気持ちええ」


 アカネは「手がイチイチ痛い」とぼやいて、それからまたジャイアントロックの前に出ようとする。


「アカネ」

「ん?」


 そんなアカネを引き止める。


「ちょっとお願いが」

「なに?」

「次にアイツの攻撃を弾く時さ、地面に打ちつけて欲しいんだ。もしくは動きを止める」

「作戦ね。分かったわ」


 俺のお願いで、アカネは俺が何をしようとしているのかを理解してくれたらしく、すぐに了承してくれる。


「サポートしますよ」

「ウチには期待せんとってな」


 シアンもソニアも背中を押してくれる。


「ありがとう」


 ふと、意図せずこぼれた言葉に3人ともキョトンとして、またやっちまったと思う。が、何が可笑しかったのか、小さく吹いたアカネにパンッと肩を叩かれ、


「そーいうのは終わってからよ」


 と。俺は「そうだな」と言って、3人と共にゆっくりとこちらに向かってくるジャイアントロックに向きなおる。


「行くわよ」

「「おー!!」」


 アカネのかけ声で、俺たちの作戦は始まる。

 まずはアカネが、ジャイアントロックの拳を地面に打ちつけるところからだ。


「[リスクフール]」


 アカネはまた、挑発スキルを使ってジャイアントロックが自分を狙うよう仕向ける。


「ゴォオオオオオ!!」


 そうして、誘発させたジャイアントロックの拳はまっすぐアカネに飛んでいく。

 その拳にアカネは動じることなく両手剣を構え、アーツを唱える。


「[レクサスネイル]!!」


 右上から左下に振り下ろす一閃のアーツ。しかし、その一撃は3つの軌道を描き、まるで引っ掻いたような跡を空中に残す。

 そして、その攻撃はジャイアントロックの腕を打ち下ろし、あらぬ方向へ弾かれて勢い余った拳は地面を抉りとって、止まる。


「さっすがアカネ!!」

「当然よ」


 まさかここまで上手くやるとは。

 俺はアカネが打ち下ろし動きの止まったジャイアントロックの腕に、跳躍スキルを用いたジャンプで飛び乗って、そこから駆け上がる。

 後ろからシアンの援護射撃が飛んでジャイアントロックの注意を逸らしてくれるおかげで、登りやすい。

 一気に肩まで登った俺は、また側頭部にアーツを放つ。


「[スティルスター]!!」


 蒼鉄と紅鉄で3回動時に切りつけ六芒星を描き、その中心を両手の剣で突く。


「っああああ!!」


 そして腕を横に広げ刺した剣を、勢いよく横にスライド。5連撃10hitのアーツ。

 それを喰らわせることで、ジャイアントロックこ体力ゲージはゼロになる。


「ゴォオオオオオ……」


 頭に攻撃をした時の反応の違い。その後にもシアンが何度となく銃撃をしていく中で、ジャイアントロックの弱点は頭だとは気づいていた。

 だから俺は、今出来る最大の攻撃力を頭にぶつけた。

 ジャイアントロックは体力を失ったことで体が光の塊になって、弾ける。


「あ……」


 まぶしさに目を(つむ)った上に、また落下。

 自分がどこを向いているのか分からない内に、俺はまた何かに抱き抱えられる。

 ……アカネだろうな。

 目を開けるとやっぱりアカネで、また丁寧に下ろしてもらった。

 居たたまれなさに、というか恥ずかしさから両手で顔を隠す。


「……ありがとうございます」

「なんで敬語?なんで顔隠すの?」

「アカネさんはもっと男心を理解したほうがいいですよ」

「姐さんもデリカシーないんやな」

「えっ?え?アタシ何かしちゃった?」

「いや、そこら辺深く掘り下げないでいいから……」


 只でさえ疲れてるのに、もう勘弁してほしい。


「何はともあれ、森のボスは撃破。ですね」

「だな」


 ああ、やっと終わった。そう思っていたらソニアが手を叩いて元気な声を出す。


「じゃ、次はブドウやな」


 全然終わりじゃなかった。




 ▽


「あ、あの……、こんにちは」

「おう、ウッド」


 モノブラムに帰ると、門の前でばったりウッドウェルに会った。


「ウッドはこれからか?」

「はい……。ガンケンさん、と待ち合わせです」


 ウッドウェルは消えそうな声でどうにか話してくれる。前からこの子は恥ずかしがり屋というかなんというか、それでも頑張って話してくれるからなんかオリヒメとは違う方向性でかわいさを感じるんだよな。例えるならチワワみたいな。


「あ、あの……。皆さん、特にアキくん、お疲れのようですけど、何があったんですか?」


 ウッドウェルは俺たちの様子を見て不思議に思ったのだろう。

 俺たちは顔を見合わせて、それから声を合わせて、


「「リンゴとブドウを採りに」」


 と、そう言った。

初撃破報酬とかラストアタックボーナスなぞ無い。

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