幕間:焼き
流れを切るショートストーリー
「エビだー、カニだー」
「採りましたね」
俺たちは海岸で、エビやらカニやらのモンスターをバシバシ狩っていき、甲殻類の食材をゲットした。
ついでに素材も。
「けど、ここじゃ料理出来ないな」
辺り一面砂と海。
コンロもなけりゃかまどもない。一刻も早く捌いて焼いて食いたいところだが、これではどうしようもない。
「仕方ない。帰って料理するか」
と、インベントリに食材をしまおうとしたその時。
「ふっふっふ」
普段は絶対しないような笑い方をしながらグラフトさんが何やらウィンドウを弄っている。
「そんな時はこれだ!!」
グラフトさんはインベントリからアイテムをフィールドに召喚する。
そして砂浜に現れたのは、銀色に輝く、4本脚の四角い、上には網を乗せた、
「BBQコンロだ!!」
だった。
「すげぇ!!え、これどうしたの?」
「お前そりゃ作ったに決まってんだろ」
得意げにコンロを撫でるグラフトさん。
「わー、グラフトさんって変な人だと思ってたけど本当に変だったんだね」
「オリヒメ。飯抜き」
「ごめんなさい!!」
ああ、オリヒメってグラフトさんのことそう思ってたんだ。
涙目で「ごめんなさい」するオリヒメから飯を取り上げる程、グラフトさんも鬼ではない。
「もう失礼なこと言いません」と約束させてから、オリヒメにご飯の許可を下す。
……親子?
「作業台もあるぞ。こっちは雑だがな」
「……十分立派だよ」
言いながらグラフトさんが出した作業台とは、木製のテーブル。
角は丁寧に削られており、おまけに艶のある塗料を塗られていて、作業台と言うにはあまりにも家具過ぎる。
「現実でこういうテーブルが欲しい」
アカネがボソッと呟く。
俺もそう思う。
「まあ適当に思いつきで作ったのが役に立ちそうで良かった」
「兄貴グッジョブ」
何はともあれ、これで料理が出来るわけだ。
俺はインベントリからまな板と包丁と塩胡椒を取りだして、作業台で食材を捌く。
「トングもある。これも作った」
「やっぱり変……」
「オリヒメは食いたくないのか?」
「ごめんなさい」
横でまたグラフトさんの作ったアイテムにオリヒメがいらんこと言って涙目にさされてるけど、あまり気にせずカニの脚をバキバキ折っていく。
「そういやさっき魚釣ったんだった。これも捌くか」
「豪華やな~」
「味は塩胡椒だけだぞ?」
「ええやん。素材本来の味を引き出す、言うとこうや」
「うわ手抜き」
まったくモノは言い様だこと。
そうこうしている内に、下処理を終えた食材達を、これまたグラフトさんが用意した炭で熱した網の上に乗せて焼いていく。
あまり油分の多い食材ではないのでジュージュー言うことはないが、それでもいい匂いはしてくる。
「焼けたら勝手に取ってって」
「はーい」
いの一番にオリヒメがエビに手をつける。
熱いエビを口に放り込んでホフホフと熱がる姿は、予想通りというかなんというか。
「おいしいね、これ」
「カニも美味いです」
「魚イケんで」
「これで酒があったら完璧だな」
次々と、網の上で焼き上がる魚介を食べていく面々。
それぞれ口々に美味しい美味しいと言って、本当に美味しそうに食べていく。
俺も焼いていく合間合間に食ってみたが、実際に美味い。
そして、焼いて食べてを繰り返していく中で、他のプレイヤーたちに見られていることに気づいた。
なんというか諦めの視線というか。
「やっぱり見られてるよな」
「そりゃ……自重しなかったからね」
「俺は構わんぞ」
「食材足りますかね?」
「そこらにおるやん」
「捕ってきてもらえばいいんじゃない?」
そりゃこんな浜辺でファンタジーに不釣り合いなコンロ持ち出してバーベキューなんぞしてるヤツがいたら気になりますわな。
食べたくなりますわな。
皆は人が増えてもいい。ということなので周りのプレイヤーに声をかけることにする。
「食材持ってきたら焼きますよ」
するとダッシュでエビやらカニやらを持ち寄って来るプレイヤーが大勢来て、全員分の食材を焼き上げるのに夕暮れ時までかかってしまった。




