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レプリカトーン  作者: 三堂いつち
キツネの檻
19/40

アイツ、再び

前回:話纏まんねぇな。次の話の冒頭に回すか。

今回:あれ?前回と似た様な展開がいっぱいだぁ。←イマココ

「どやどや?似合うとるやろ~?」


 新しい防具に身を包んだソニアは上機嫌で、その場でクルリと一回転。ミニ丈のスカートがフワリと少し浮いて、中は見えないように動いているにしても、正直目のやり場に困る。が、ソニアはそんなことお構い無しに決めポーズ。


「似合ってる似合ってる。カーワイーナー」

「ぶつぞ」


 目を逸らした俺の言葉にむくれるソニア。

 ああは言ったけど、実際に新しい防具はソニアに似合っている。上はノースリーブ、下はミニスカートにニーソックスと膝丈ブーツのコーデは活発そうなソニアにぴったりだ。

 魔法使いとしてはズレている気がするけど……。


「私はどうですか?」


 今度はシアンがその場で回って、面白そうに、挑発的に聞いてくる。


「切れ込みが」

「スリット」


 ピシャリとオリヒメの指摘が入る。


「スリットって言うの?長すぎない?」

(もも)までなら案外平気なものですよ。それに片側だけなら広がりにくいですし」


 そう言うシアンはスカートを指で摘まんで持ち上げる。

 シュッとしたラインのワンピースはシアンの妖しさを引き立てていて、とても似合っている。が、なんとなく怖さも増している。

 映画に出てきそうな女の殺し屋みたいな。これで長銃を構えたら、さぞ画になるに違いない。


「すごいハマリ役っていうか、ベテランっていうか」

「何ですって?」

「おきれいですっ!!」


 考えが口に出てしまった。それを聞いたシアンの笑顔に恐怖を感じて、すぐに褒め直す。不意に口をついて出た言葉だがこちらも本音であることに違いはない。

 咄嗟のことでお世辞みたいになってしまったが、それでもシアンはまんざらでもないようでニコリと口角を上げる。


「いじましいですね」

「何それ、どういう意味?」

「さあ、どうでしょう?」


 “いじましい”とは、なんぞや。

 言葉の意味が分からず、聞いてみたがはぐらかされてしまった。

 けど、楽しそうに笑うシアンを見て、まあいいかと、聞かないでおくことにした。きっとこれはそういうことなんだろうと、納得しておくことにしよう。

 ……分からんけど。


「ウチの時と態度ちゃうやん」

「ちゃうわない、ちゃうわない。カーワイーナー」

「いっぺんシメたろか」


 うら若き女の子がシメるとか言っちゃいけませんよー。

 睨んでくるソニアを無視して、今度はアカネの方を向く。なんというか、カジュアルというのだろうか。ショートパンツとか七分丈のシャツとか動きやすそうな格好で、両手剣を使った大立ち回りをするアカネにはぴったりの装備だろう。ブレストアーマーがファンタジー感を強めて、この中では一番コンセプトに忠実な格好だ。


「いいね。動きやすそうだから、アカネの戦い方に合いそう」

「でしょう。早く戦いたくてウズウズよ」

「だな」


「これだからゲーマーは」

「姐さんもそっち側なんか……」

「乙女として失格でもゲーマーとしては合格ね」

「な、なによ!?」


 俺としては気を使わなくていいから楽なんだけどな。とか言ったら絶対「分かってない」とか言われるから黙っておこう。

 スマン、アカネ。


「い、いいじゃない動きやすさ is best よ」

「姐さん、まさか休日はジャージかスウェットで過ごす感じとちゃうよな?」

「ぎくっ!?」


 おお、人が“ぎくっ”って言うの初めて見た。


「先日アキくんをからかった時ノリノリだったのに?」

「そ、それは女子目線の一般論であって……」

「ジャージ娘が?」

「スウェットよ!!……はっ!?」


 みるみる崩れ落ちていくアカネ。代わりに犠牲になった彼女に、合掌。


「楽で何が悪いのよー!!」





 ▽


「とまぁ、冗談はさておき。確かに注文の品は渡したってことでいいのかな?」

「そうだね。ありがとう、オリヒメ」

「いやだなぁ。こっちも商売だよ」


 えへへと頭を掻くオリヒメは、言葉とは裏腹にすごく嬉しそうだ。


「商売って言うならもっと値段高くてもいいのに」

「それはほら、先行投資よ。グラフトさんから素材集めに付き合ってくれるいい人材って聞いてるよ」


 成る程そういう。


「あんの兄貴は……」

「ソニアさん、どうどう」


 イラついたソニアをシアンが宥める。けどそれ馬にやるヤツだから。


「とにもかくにも毎度あり!!だよ」

「商魂逞しいことで……」


 オリヒメはいい笑顔で言う。俺はそれに、やっぱり生産やってる人は別の意味で強いなぁ、と改めて思った。





 ▽


「さー、行きますか」


 グッグッと、腕を伸ばして準備運動まがいのことをする。ゲーム内だから体をほぐす必要なんてないが、要は気分だ。

 これからボス戦に臨むのだから、気合いは大事である。


「なあ、アキよ」

「なんだい、グラフトさん?」


 グラフトさんから声がかかる。


「本当に俺たちまでついてきてよかったのか?」

「そうだよ、ハッキリ言ってお荷物だよ?」

「卑屈だなぁ……」


 ボス戦に臨むにあたって俺たちは、グラフトさんとオリヒメを誘った。ボスを倒すとその先のフィールドが解放される。その先にある素材が採れるようになるし、悪い話ではないだろう。

 頼んだ武器も防具も性能の割に安価だったので、そのお礼に誘ったのだ。

 しかし、この2人は戦闘が得意ではないと、足を引っ張るだろう、と言い張るので無理矢理引っ張ってきた。


「ここまで来てNOはナシだよ」

「来た、っつーか連れて来させられたっつーか」

「まあまあ兄貴、死なば諸共やで」

「1人で死ね」

「ヒドッ!?」


 アハハと笑いながら、俺たちはボス手前の安全圏に到着した。討伐報告があって、攻略パターンも掲示板に載っているからか、他のプレイヤーもまばらにいるそこは、すぐ横に大きな川が流れていて、南には海が見える。下流だ。足下は砂と土の中間みたいで、歩きにくいわけではないが滑って足を踏み外すかもしれない。

 動き回る俺にとっては死活問題だ。


「ボスってどんななの?」

「ええと、3体の魚ですって。なんでも見た目と強さが噛み合わないとか。これ以上はネタバレなしです」


 アカネの質問に、掲示板をひろげてシアンが答える。ボスの写真も載っているだろうが、楽しみは後に取っておきたいのだろうシアンは、人差し指を口にあてて“ナイショ”のジェスチャーをする。

 まあ、事前情報が多すぎるってのも考えモノだしな。

 それはともかく、見た目と噛み合わない強さか。それはつまり強いということなのだろうか。それはそれでワクワクする。

 アカネも俺と同じようで、拳を手のひらに打って「面白そうじゃない」と鋭い目をして笑っている。

 ……ちょっと怖い。


「なに?」


 俺の視線に気づいたアカネが、鋭い目つきのままこっちを見てくる。

 その狩る者目に、ビクッと肩を揺らしてしまう。


「な、なんでもありません!!」

「そう?ならいいわ」


 少し不自然ではあったが、今は目の前に待ち構えるボスに意識を集中しているのだろう。あまり追及されなくてホッとする。

 その一連のやり取りを見ていたシアンたちにクスクス笑われるが、俺も目の前のボスにワクワクしていてあまり気にならない。

 しかも、新しい装備なのだから余計に気合いが入るというものだ。


「行くぞぉ」

『おー』


 そして俺たちはフィールドボス戦闘エリアに足を踏み入れる。




 ▽


 フィールドボス戦闘エリアは正確にはフィールドマップではない。パーティ毎に専用戦闘エリアが用意されていて、複数のパーティが同じフィールドのボスと、別々に、同じマップで戦うシステムになっている。

 だから、パーティがボス戦闘エリアに入ると、その周りに他のパーティのプレイヤーの姿はなくなる。

 完全にパーティ専用戦闘エリア。側を流れる川の音と、風以外に音がないのはオンラインゲームでは珍しい。

 だがそれも長くは続かない。


「来ます」


 シアンの一言を境に、川からバシャバシャと音を立てて何かが近づいてくるのにパーティ全員が気づく。

 そして、川から飛沫(しぶき)を立ててこちらに向かってくる3つの影。

 俺はその影からチラチラと伸びてシルエットを大きくするものに、なんだか胸騒ぎを感じた。


「なんだろう、イヤな予感がする」

「なんで?」

「いやあ……」


 確信はまだ得ていないので、オリヒメの質問をはぐらかす。が、影の泳法がバタフライだと分かる頃には俺のイヤな予感は確信に変わってしまった。


「始まるぞ!!」


 グラフトさんの一言の後に、影がバッと勢いよく飛び上がり、俺たちの頭上を越えていく。そして3つのシルエットが華麗に着地を決めた時、俺の中で確信がハジけた。


「なんでお前だぁぁああ!!」

「アキ!?」


 川から上がってきたのはそれぞれ赤、青、緑のずんぐりむっくりした魚体(フィッシュボデー)にイヤにがっしりした四肢を合わせ持つ、あのモンスターだった。


「このっ……、俺のワクワクを返せぇぇええ!!」

「アキ、落ち着いて!何があったの?」


 フィッシュマン。


 そう、フィッシュマンだ。


 さらに、コイツらは森で釣り上げたヤツよりも一回り大きい。しかも、赤はフィッシュマン・タフ、青はフィッシュマン・メイジ、緑はフィッシュマン・モンクとそれぞれ役割を持っている。

 そのフィッシュマンたちはコチラを威嚇(?)するように、ご丁寧に赤をセンターにして戦隊ヒーローみたいなポーズをしている。

 あの時のフィッシュマンと同じような無表情で。

 その姿はシュールの一言に尽きる。


「これがフィールドボス……。確かにこれで強かったら見た目とギャップって感じですね」

「オモロイやん」

「受け入れたくないよぉ……」

「アキ、来るわよ!!」


 腕を大きく振って走ってくるフィッシュマン・モンクに正面に、蒼鉄と紅鉄を構えながら、やりきれない気持ちを抱えて、俺は[狂人化(バーサク)]を唱えた。

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