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レプリカトーン  作者: 三堂いつち
キツネの檻
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素材集め

「というわけで、武器の生産をお願いしたいんだけど」

『メシのためか』


 トークの向こうのグラフトさんは呆れたというような口調だ。

 俺は、武器の強化をお願いするためにグラフトさんと、トークラインを開いて話をしている。

 アカネの「装備が弱い」発言は(もっと)もで、今の装備でフィールドボスに挑もうものなら返り討ちは確定だ。

 そこで、まずは武器職人であるグラフトさんに武器の相談をすることにした。


『で、俺は何を作ればいい?』

「受けてくれるんだ」

『俺もカニが食いたい。西側の川の前に小さい工房を買ったから、そこに来てくれ。《ヒースパレード》って名前の店だ。時間はいつでもいい』

「了解」


 トークラインを切って、皆に事情を話す。


「今からでいいんじゃない。オリヒメさんは今日忙しいから、明日以降って」

「そうですね。なら早いほうがいいです」

「ウチは皆についていく」


 防具の相談もしておこうと、アカネにはオリヒメに連絡をしてもらっていた。都合が真っ先につくのはグラフトさんから。

 と、いうことで俺たちはすぐにグラフトさんの店に行くことにした。




 ▽


「なぁ」

「ん?」


 西に向かう川沿いの道。4人で歩いているとソニアから声がかかる。


「お店ってこんなすぐに買えるもんなん?安いんか?」

「モノにもよるよけど、FoWだったら、いっちばん安くて小さいあばら家みたいなのが2‚3万くらいだったから、そんくらいだろうな」

「へー。ちゅーと、ウチでも手が届かんもんでもないんやな」


 2‚3万なんて、1日にクエストを3つ位受けていたらあっという間に貯まる。それにグラフトさんは要領がいい人だから、もっと上手く資金繰りをしていることだろう。


「それにエリカもいるしな」

「なんでエリカさん?」

「多少ワガママでも許してもらえるように先行投資とか言って借りを作るだろうな、と」

「仲ええんかな」

「いい方だと思うよ」


 あの2人はなんだかんだで、しょっちゅう一緒にいたから仲はいい。


「なんかイヤやな。気ィ使うわ、身内のそんな話」

「あはは。多分そんなんじゃないよ」


 エリカとグラフトさんは、俺から見てもソニアの心配するところの関係ではないと思う。どっちかと言うと、気のおけない友達だろうか。

 まあ、仲がいいことには変わりない。

 そうこう話している内に、俺たちは《ヒースパレード》の看板の前に到着した。外観は最安値あばら家とは大違いの、いったいこの短期間で幾ら稼いだのかが俺でも気になるほど立派なログハウスだった。


「来たよー」


 そう言って店の扉を開ける。

 店の内装はシンプルで、まだ物が少なく、武器もテーブルや棚の上にポツンと置いてあったり、壁に立て掛けてあったりするだけ。


「おう、来たな」


 グラフトさんが店の奥の扉を開けて出てくる。その手には片手棍を持っている。


「ちょうどコレが出来たとこなんだ」


 グラフトさんはそう言うと、片手棍を店の棚に並べる。どうやら商品のようだ。その片手棍に値段を設定してから、グラフトさんは俺たちの方を見て、


「じゃあ、相談といこうか」


 と、少し笑って言った。





 ▽


「弓とダガーと両手剣に長銃、それとタクトか。多いな。スキル上げにもってこいだ」


 グラフトさんは依頼品の数だけ指を折って、拳を作り嬉しそうに口角を上げる。


「嬉しそうやな」

「そりゃゲーマー魂ってやつだ」


 ソニアはそんなグラフトさんの姿が気に入らないのか、声に覇気がない。しかし、グラフトさんはあっけらかんと、そんなソニア態度を流している。


「で、どんな感じかな?」

「お前らの持ってきた素材は武器に使えるのが少なくて無理だな。俺も店を作ったばっかで手持ちが少なくてな、あまり素材になるもんがない。これなら鉱石がもっと欲しいな。あと、大きめの木材が2,3欲しい」

「ということは素材を採りにいかなきゃ、ですね?」

「そういうことになるな」


 ウィンドウに並ぶ素材を見せると、グラフトさんは出来ないとキッパリ言う。素材が足りないなら、職人がいても無理なものは無理だ。


「じゃあ、素材採りにいくか」

「そうね」

「採取系のクエストで情報を集めますか」

「そんなもんなんか」


 武器もまたおあずけか。

 仕方がないと、俺たちはヒースパレードを後にしようと踵を返す。


「ちょっと待った」

「?」


 後ろからグラフトさんの声がかかり、俺たちは振り返る。


「素材集めなら俺もいった方が早い。どこで何が採れるかは大体把握してるからな」


 グラフトさんはウキウキしながら自分も着いていく言う。


「ホントは自分が行きたいだけとちゃう?」

「悪いか?」

「兄貴ってこんなキャラやったっけ?」


 呆れたソニアを他所に、グラフトさんが俺たちのパーティに加わった。


「先に言っておくが、俺はものスッゴク弱いから、そのつもりで」

「えー……」


 つまり戦闘には参加せず黙々と素材を採る、ということだ。俺はFoW時代からそんなの慣れっこだ。けど、ソニアはそんな情けない宣言をするグラフトさんに、あきれ果ててしまったようだ。





 ▽


「いやぁ(はかど)る捗る」


 素材を集めに街の外へくり出した俺たちは、グラフトさんの指示のもと、まずは西に向かって草原を抜けた岩場で素材を採ることになった。ここでは火属性や土属性の鉱石が採れるらしい。

 グラフトさんは採掘ポイントを見つけてはツルハシを一心不乱に降り下ろし、また採掘ポイントを見つけてはツルハシを降り下ろす。

 その間、俺たちはグラフトさん護衛として、近づいてくるモンスターを相手する。

 そうこうして、大分時間は経ったがグラフトさんからしたら、まだまだ全然足りないということで、俺たちは暇をもて余している。


「まだなんか~?」

「まだまだ。店で使う分も一気に採っておきたい」

「ウチら関係ないやん」

「誰の都合かを一番に考えろ」

「兄貴のやん」


 こんな調子で、いいように護衛として使われているわけだ。

 俺はFoWで経験あるから慣れっこだけど、アカネとシアンとソニアは苦笑いだったり、髪の毛を指先でくるくる回してたり、直接文句を言ったりとお疲れのようだ。

 それでもグラフトさんは脇目もふらずにツルハシを採掘ポイントに叩きつける。


「グラフトさん」

「ん?」

「グラフトさんのペース会わせるのは初めてじゃ難しいよ」

「そうか?エリカは最初っからこんな感じだったが」

「あれは特殊」


 受け答えの間もツルハシを降り下ろす手を止めないグラフトさんだったが、採掘ポイントの限界がきたのかツルハシをインベントリにしまって、今度は素材を回収する。

 そして集めた素材の並ぶウィンドウを見て満足そうに頷いてから、グラフトさんが笑う。


「冗談だ。そろそろ次に行こう」

「冗談になってない、やと!?」


 それって、すぐに今と同じことの繰り返しになるだけですね。


「次は東に木材だ」

「聞こうや?パーティメンバーは大事やで!?」

「本当に冗談だ。休憩してからから東の森に行こう。この近くにポータルがあるらしいからな、すぐに森に着くぞ」

「結局変わらんのか……」

「諦めろソニア。お前のお兄さんは今ちょっとはしゃいでるから」

「子供かっ!!」


 それはまったくご尤も。

 しかしグラフトさんは、そんな妹のツッコミもなんのその、「ほら、さっさと行くぞ」と勝手に出発してしまう。

 グラフトさんはルーラーウィングではないけれど、やはりこの人も変人なのだ。でなければ、ルーラーウィングと上手く付き合いなんて持てない。

 ……あれ?この考え方だと俺も変人だな。


 ま、いっか。


 むくれるソニアの背中を押して、先導するグラフトさんに着いていく。


「勝手やな」

「……そうだな」


 ソニアも初対面はスゴかったけどな。

 そんな俺の考えは伝わらず、ソニアはグラフトさんに呆れたまま、東の森へと向かうことになった。





 ▽


「森って聞いたんだから予想しておくべきだと思うなー」

「な、な、な、なによ。文句でも」

「ありませんともさー」


 ポータルを使って東の森に到着した俺たち。

 ここは先日、赤ずきんクエストで随分歩かされたところだ。そして、アカネが苦手な場所でもある。


「なにあれ?」

「怖いんやとさ」

「放っといていいものですよ」

「そうか」


 ぴったりと俺の後ろに張りつくアカネを見て、グラフトさんは何事かと身構えたが、すぐに元の調子に戻った。

 というか、放っとかないでほしい。


「本当は木材と鉱石の採取に、ここで二手に分かれたかったんだが……」


 チラとグラフトさんが俺たちの方を見てくる。

 アカネがこの様子だと、二手に分かれるのは正解なのかどうなのか。


「そもそも木材の採取って私たちだけで出来るんですか?」

「ああ、それはドリヤード倒せばいいだけだから多分大丈夫だろ」


 なるほど。確かに倒すだけなら俺たちでも出来る。必要な木材がドリヤードのドロップならスキル関係ナシに入手できるわけだ。

 強いて問題をあげるとすれば、アカネを連れていくと機動力が落ちるくらいか。

 どうせなら弓の練習もしたいし、ドリヤード狩りに参加したいのだが、背中からガクガク伝わる震えに、これは無理だと否応なしに分かる。


「ドリヤードはシアンとソニアに任せていいかな?」

「了解です」

「任せとき」


 この数日でレベルもそれなりに上がったし、それほど深く入らなければこの辺のモンスターは余裕だろう。それに、グラフトさんの鉱石採掘に付き合わなくてすむわけだ。

 2人はいい返事をして、ドリヤード狩りに向かった。


「じゃ、俺たちは鉱石だな。フフッ、堀尽くす勢いで採取してやる」

「(ガタガタ)」

「……気が重い」


 最良の組分け結果のハズなのに。どうしてだろう、このハズレを引いた感覚は。

 それからグラフトさんは、また一心不乱ツルハシを振り下ろした。ドリヤード狩りを終えてシアンとソニアが合流した後も。

 そうして俺たちがモノブラム帰ったのは、真っ暗に日が暮れてからだった。



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