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レプリカトーン  作者: 三堂いつち
キツネの檻
13/40

ウサギを囲む会

「ごちそうさん」


 パサパサのアプラトルートを食べ終えて、皿を洗おうとシンクに向かう。フィッシュステーキはアカネたちに平らげてもらった。味は良いのだが、どうにも鮮烈にフィッシュマンを思い出してしまって、箸が進まなかったのだ。


「お皿洗うわよ」

「いやぁ……」

「このくらいさせなさい」


 アカネが俺の手から皿をひったくる。そしてシンクに行ってしまった。


「ありがとう」

「いいのよ。魚、食べさせてもらったんだから」


 アカネの好意に甘えて、大人しく椅子に座って休むことにする。横でソニアが「姐さん女子力」とか言ってるけど、女子力ってなんだろうな。

 背もたれに寄りかかって一息吐くと、今日のあれやこれやを思い出す。

 なかなか釣れないと思ったらイキナリ釣れて、そして奇妙なフィッシュマン。そのフィッシュマンを焼いてステーキにして、それが美味くて。

 そういやエリカからメールがあったんだったな。皆いるし、聞いとくか。


「あのさ、明後日に昔の仲間が会いたいって言ってるんだけど、いいかな?」

「構いませんよ。折角ですし、楽しんでください」

「いや、皆もどう?って話」

「いいんですか?」

「うん。アカネを紹介して欲しいって内容だけど、どうせなら皆で押しかけようっていう。向こう、賑やかなの好きだからさ」

「なんでアタシ?」

「向こうがアカネの名前しか知らないから」


 つらつらと説明する。


「ウチはええで~」


 ソニアがヒラヒラ手を振って承諾する。


「アキの仲間てことは、ルーラーウィング、……よね?」

「大体そうだな」


 皿洗いを終えて、アカネが椅子に座りにやってくる。


「なら行くわ」

「私も行きます」

「おっし、OKだな」


 3人の了解を得たところで、エリカに「連れていくのは3人になった」というメールを送る。すると数秒で「わかった」というメールがエリカから届く。返信が早くて内容がシンプルなところ、変わってない。


「わかった、ってさ」


 ウィンドウを閉じながら、アカネたちにメールの内容を伝える。

 これは明後日が楽しみだ。




 ▽


 そして2日後。俺たちは待ち合わせ場所である、ギルド近くの食堂を目指してモノブラムの大通りを走っている。というのも、


「うわっ、時間ギリギリ」

「誰かさんが、滅多に起こらないブラッシュクエストをまた引き起こしてくれたせいでギリギリですね」

「ごめんなさいっ!!」

「喋ると舌噛むで」

「ゲームだから平気よ」

「そっか」


 俺がまたブラッシュクエストを引き当ててしまったからだ。しかもそれが“街の外に広がる草原から落とし物を探せ”というもので、さらに落とし物はモンスターが持っていったりしている、などというはた面倒な内容だったのだ。

 時間制限はなかったので明日に持ち越そうか、という頃合いに俺がまたそのクエストのボスを発見、クエストを進行してしまい戦闘になってしてしまった。しかも、そのボスは戦闘からは逃げられないモンスターだったので仕方なく闘うことになり、おまけにポータルもないマップだったので、待ち合わせ時間ギリギリになってしまったということだ。


「ホント、どうなったらこんなタイミングでこんな面倒なクエストを起こせるんでしょうね?」

「ごめんなさい……」


 ここに来るまでに、もうシアンに何度小突かれたことか。本気で責めているわけではないのは分かっているが、からかわれるのは気持ちのいいモノではない。


「諦めなさい。アキはトラブル体質だから」

「ウチの時もそうやんなぁ」

「分かってんなら止めてくれ……」

「ヤダ」

「イヤです」

「イヤや」



「……さいですか」


 諦めるのは俺1人。

 そうこうしているうちに、目的の店に到着した。


「アキの友達ってどんな人なん?」

「友達っていうか……、まぁ変人?」

「で、最強ギルドね」

「楽しみですね」


 そして店のドアを開ける。「いらっしゃいませ」とNPC店員の声に迎えられ、店の中に入ると俺にとっては見慣れた集団が店の一角に陣どっていた。


「お、こっちこっち!」


 エリカがいの一番に俺に気づいて手を振る。それに気づいてテーブルの他のメンバーが俺に気づく。


「まあ座れや。そっちの娘たちも、おいでおいで」


 エリカが手招きして誘ってくるのでテーブルに近づく。テーブルにはエリカを含めて9人。その皆がFoWで世話になったりした仲間たちだ。が、その内の1人が驚いたような顔をして俺の後ろを見ている。振り返るとソニアも驚いた顔をしてその男を見ている。

 そして、2人はおもむろに口を動かした。


「兄貴!?」

未来(みらい)!?」




 ▽


「えー、本日は『ウサギを囲む会』にお集まりいただき……」

「待て!!なんだその会」

「そりゃ皆がアキ繋がりだからだろ」

「にしたって、もっとこう……」

「かんぱーい」

「「かんぱーい」」

「もう息ピッタリだよ」


 俺の抵抗虚しく、乾杯の号令により『ウサギを囲む会』は始まった。


「まずは自己紹介からだな。ワタシはエリカ。そうだな、槍使いで面白いことが好きだな。よろしく」


 エリカはアカネたちに向けて、自己紹介をする。


「おら、次はお前だ」


 エリカは自分の紹介をパパっと済ませると、隣に座っている男を肘で小突く。さっき驚いていた男だ。は「分かったからつつくな」と小さく言う。


「グラフアイト。長かったら“グラフト”でいい。俺はルーラーウィングじゃないが、武器を作ってるうちに仲良くなった、って感じだ。もしなんか面白いのあったら武器作るから持ってきてくれ。それと、()……、ソニアの兄だ。妹がお世話になりまして」

「いえいえ、こちらこそ妹さんにはお世話に……、なって、る?」

「姐さん、そこは迷わんとスパッと言おうや」

「仕方ありませんよ」

「慰めんなや」


 シアンが肩にのせた手を払いのけるソニア。

 なんとソニアとグラフトさんが兄妹だったのだ。2人ともゲームでもハッキリお互いを認識できるくらいリアルに近い顔らしいが、いやぁ全然似てない。言葉使いも上京してからグラフトさんは周りに合わせたから標準語なんだとか。


「次はオレだな。オレはガンケンだ。“ガンさん”って呼ばれることの方が多いな。役割はタンク。よろしく。ほい、次」

「は、ハイッ!!……ええと、オリヒメ、です。私もルーラーウィングじゃないです。防具作ってます。作ります。よろしくお願いします!!」


 ガンさんはガタイのいいオジサンで盾と槍を使うタンク。豪快で大雑把だけど面倒見がいい優しい人。

 オリヒメさんは俺より背が低いけど、俺より全然年上のお姉さん。テンパり屋でよく転ぶ人だ。


「次はボクだね。ボクはミル。斧使いでカワイイものが好きなんだ。よろしくね♪」

「可愛い子ね」

「あいつ男だよ」

「え!?」

「アキはすぐにバラしちゃうからつまんなーい」


 ミルは小柄で、可愛らしい見た目に騙される人も多いが、確かに男で俺と同い年だ。まぁ本人が可愛いく着飾るのが好きっていうのもあるが。あと俺はミルにライバル視されている、らしい。


「それじゃ私の番だね。私はメフィ。拳甲でバシバシ殴る格闘家みたいなのをやっている。それとコイツになにか言われたら私に言ってくれ。すぐシメるから。よろしく」


 メフィは筋肉質で爽やか系の女の子。とても雄々しい。ちなみにメフィの言う「コイツ」はミルのことだ。


「大丈夫。ボクがカワイクないって言うのはメフィだけだよ」

「それが失礼だって言ってんだ」

「だってカワイク……、イタタタ!!」


 言わなきゃいいのに余計なことを言って、ミルはメフィにこめかみドリルをされる。俺も一度だけ酒アイテムで酔ったメフィのこめかみドリルを喰らったことがある。あれは“グリグリ”というより“ゴリゴリ”って感じで、ゲーム内の痛覚は相当抑えられているはずなのに、とてつもなく痛かった。


「えーと、次は僕らでいいのかな?僕はベルク。魔法使い、みたいな感じかな?よろ……」


 ベルクは最後まで言えずに、隣の容姿が似通った女の子に言葉を遮られる。


「ハイハーイ!!あーしはラグラン。拳銃使いでベルクとは双子なんだー。ヨロシク!!」

「ラグ……。ええと、よろしく」


 ベルクはいいヤツなんだけど、なんか残念な印象が強い。それは多分、いつもハツラツなラグランのフォローに忙しいからだろう。


「わ、わたしはウッドウェル。……ソーサラーで、……です」


 卓を囲む元ルーラーウィングのメンバーで最後に自己紹介をしたのはウッドウェルだ。彼女はちょっと卑屈だけど、ソーサラーとしての実力はルーラーウィング随一だ。


「以上ルーラーウィングでした。じゃあ次はそっちね」


 本当はもっとメンバーがいたのだが、FoXの発売日が平日だったこともあってか、ログインしているメンバーは少ないそうで、集まったのは9人になったそうだ。

 エリカはルーラーウィング側の自己紹介をシメると、アカネたちにパスを出す。


「えーと、ほなウチからいこか。ウチはソニア。タクト使ってます。ゲームは初心者で分からんことだらけです。ヨロシク。あと兄貴がお世話になってます」


 ソニアが頭を下げると、ルーラーウィング側から「こちらこそお世話になってます」と返ってくる。

 さっきのと差が明らかだな。



「私はシアンと申します。長銃を使っていて、……強いて言うなら相手の嫌がる戦法が好きですね。どうぞよろしくお願いします」

「その内容じゃ怖いわよ!?よろしく出来ない!!」

「あらあら」


 シアンは変わらないニッコリ笑顔でアカネのツッコミをサラリと躱す。


「でも本当のことですし……」


 うん。だから怖いんだよね。

 それでも、皆はシアンを笑って受け入れている。

 ルーラーウィングも変人が多いからね。



「アタシはアカネ。大剣使いよ。ヨロシク」

「そんで最近アキが悩んでた女の子だな」

「いっ……」

「そうなの?アタシ何かしちゃった?」

「いや、そうじゃなくて……。エリカ、それはもう終わったから」

「……あー!!あの恥ずかしいヤツや」

「なになに?詳しく」


 もうやだ。

 皆が身を乗り出してソニアの話に食いつく。俺とアカネは顔を真っ赤にして早く時間が経てばいいのにと願うだけだった。



 ▽


「えーと、俺はアキ。今は弓と短剣をやってて、最近釣りと料理も始めた」

「顔真っ赤だぞー」

「うっさい!!」

「アキも変わんないねー」

「だな。ノリと勢いで何かしでかすのは変わってねぇや。そういや昔も……」

「もう勘弁して……」


 ガンケンが俺の黒歴史について話し始めて、会はスタートした。

 それから俺は耳を塞ぐことを許されず、元ルーラーウィングの1人1人に昔あった恥ずかしい話をされて、もう帰りたくなった。

雑な自己紹介で楽してすまない

メフィの紹介と些細な点を変更しました。

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