第二章 彼の地にて
僕らは呼ばれた。
呼びに来たのはいつもの担当者だった。
そして部屋に入ると、そこにはいつもの顔ぶれが揃っていた。
もう何度も顔を合わせている。
こちらが覚えているのだから、向こうも同じように思っているのだろう。
軽く挨拶を交わし、席に着く。
そして最初に口火を切ったのは調査官だった。
どうやら前回の調停から今回までの間に、子どもたちとの面談を終えてきたらしい。
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かがじくりと疼いた。
初めてだった。
妻の主張ではない。
弁護士の推測でもない。
第三者が見た子どもたちの様子を聞けるのは。
今まで僕が知る子どもたちの情報は、すべて妻側を介したものだった。
子どもたちは元気にしている。
子どもたちは会いたがっていない。
子どもたちは怖がっている。
どれも妻側の言葉だった。
だが今回は違う。
実際に会い、話を聞いた人間の言葉だ。
本当の様子が聞ける。
そう思っただけで、自分でも驚くほど感情が揺れた。
まだこんな気持ちが残っていたんだな――。
そんなことを思いながら、自分自身をどこか他人事のように俯瞰していた。
調査官の説明がひと通り終わる。
僕は真っ先に、どうしても気になっていたことを尋ねた。
髪はボサボサじゃなかっただろうか。
爪はちゃんと整えられていただろうか。
笑顔はあっただろうか。
本当は他にも聞きたいことが沢山あった。
沢山だ。
ほんとに沢山だ、、、、
学校ではどうしているのか。
友達とは仲良くやれているのか。
好きなことは出来てるか。
毎日ちゃんと笑えているのか。
聞きたいことなど数え切れないほどあった。
だが、調停の時間は限られている。
子どもたちのことだけを聞き続ける訳にはいかなかった。
僕は込み上げる感情を押し込み、意識を目の前の現実へ戻す。
そして調査官の話もそこそこに、本題へと入っていった。




