第五章 凱旋 下 前編
ブルーインパルスを見送った後、僕は再び館内へ戻った。
順路に従い、残りの展示を見て回る。
ルネサンス期というのだろうか。
ある時代を境に、芸術の方向性が一気に変わる。
それまでの宗教色の強い作品群とは違い、人間そのものや日常を描いた作品が増えてくる。
そこから先は、美術の教科書で見たことのある絵が次々と現れた。
ゴッホ。
ピカソ。
フェルメール。
名前くらいなら僕でも知っている。
ひまわりの絵だったり。
牛乳を注いでいる絵だったり。
何を描いているのかよく分からないが、なぜか有名な絵だったり。
正直、美術には詳しくない。
それでも見ていて楽しかった。
そんな調子で後半をじっくり見て回っているうちに、気が付けば時刻は午後三時を過ぎていた。
そろそろいい時間だ。
最後に土産物コーナーを少し覗き、僕は美術館を後にした。
シャトルバスに乗り、駐車場へ向かう。
その途中、僕は夕食のことを考えていた。
店はもう決まっている。
昔から、釣りへ行く途中に必ず立ち寄っていた食堂だ。
店の前には大きな生簀があり、港から仕入れた新鮮な魚介類を食べることができる。
知る人ぞ知る穴場の店――だった。
過去形である。
ここ二十年ほどで一気に有名になってしまったのだ。
昔は並ぶことなどなく、店内も釣り人ばかりだった。
それが今では行列ができる人気店になり、呼ばれるまで一時間待ちも珍しくない。
美術館から店までは車で二十分ほど。
到着すると、案の定行列ができていた。
まだ夕食時には少し早いはずなのだが、それでもこの混雑ぶりだ。
僕は諦めてネームボードに名前を書き、順番を待つことにした。
待ち時間に、生簀の魚を眺める。
泳いでいるのは多分ハマチだと思う。
いや、ブリかもしれない。
正直、その辺りのサイズで名前が変わる魚はよく分からない。




