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僕の物語― それでも、前へ ―  作者: シロイルカ
第四幕 孤独な抗戦
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第四章 オンリーロンリーゴールデンウィーク(ORGW)後編

神社での参拝を終えると、僕は帰路についた。


行きとは少し違う商店街を通りながら、駅へ向かって歩く。


観光客で賑わう通りを歩きながら、ふと思う。

――明日はいよいよ帰る日か。


楽しい時間というのは、本当にあっという間だった。

そして、そろそろ考えなければいけないことがある。

お土産だ。


だが、今買うと荷物になる。


なので、本番は明日の横浜駅に託すことにした。

――お土産購入決戦は、明日である。


そう心に決めながら歩いていると、途中で鳩サブレーの店を見つけた。


とりあえず買った。


鳩サブレーは、見つけたら買うものなのである。


そんなこんなで電車に揺られながら、僕は明日何を買うかぼんやり考えていた。


職場用か。

自分用か。

いや、ネタに走るか。


そんなことを考えながら、ホテルへ戻っていく。


……なお、途中で今日も開催されていたビールフェスへ、既定路線のように吸い込まれていった件については割愛する。



端的に言えば、その日もいい夜だった。

そして、その夜もやはり、驚くほどよく眠れた。


一夜明けて、朝になった。


時計を見ると、まだ八時を少し回ったところだった。

ホテルのチェックアウトは十一時。


それまでに荷物をまとめて部屋を出なければならない。


以前の家族旅行なら、この時間は戦場だった。


子どもたちを起こし、着替えさせ、忘れ物がないか確認し、なんだかんだで毎回チェックアウトはギリギリになる。


だが、今回は違う。

僕ひとりだ。

準備は驚くほど早かった。


スカスカのリュックに着替えを詰め込む。

それだけで終わり。


時間にして、五分もかからなかったと思う。

――準備は万端。


乗る予定の新幹線は、十八時発の大阪行き。

まだかなり時間に余裕がある。


さて、どうしようか。


せっかくなら、もう少しだけ横浜を歩いてから駅へ向かおう。


そう思った。


そうと決まれば、まずは朝食だ。

せっかく横浜に来たのだから、最後までそれっぽいことをしたい。


そういえば以前、横浜にはオシャレなパンケーキ屋が多い、みたいな話を聞いたことがあった。


気になって調べてみると、中華街の近くに人気のパンケーキ店があるらしい。


――よし、そこにしよう。


決めた瞬間、僕はすぐ行動した。

部屋を出て、エレベーターへ乗り込む。


フロントで鍵を返し、そのままホテルを後にした。

外へ出ると、昨日ほどではないが、今日も風がやや強かった。


だが、不思議と嫌ではない。


むしろ、その風が少し心地よく感じた。


僕はそのまま、パンケーキ屋を目指して歩き始める。

目的地までは、そう遠くなかった。


スマホのマップを片手に、目的地まで歩く。


途中、中華街の近くを通りかかる。


肉まん。


小籠包。


甘く香ばしい匂い。


実に危険だった。


昨日あれだけ食べたというのに、中華街は容赦なく胃袋へ攻撃を仕掛けてくる。


だが、僕はその誘惑をなんとか振り切り、パンケーキ屋を目指した。


そして到着した店には、すでに数組の待ち客がいた。

列へ並びながら、僕は周囲の客層を分析する。



カップル、六割。

女子グループ、三割。

家族連れ、一割。

――なかなかのアウェイである。


だが、不思議と臆する気持ちはなかった。


僕は、みんなより遥か先を歩いている。


結婚。

育児。

調停。


この場にいる誰よりも、人生のステージだけは先へ進んでいる。


――弾丸は、先を行く。


ふと、この旅にタイトルを付けるなら何だろう、と考えた。


「オンリーロンリーゴールデンウィーク

〜ザ・バレット・ゴーズ・アヘッド〜」


……うん、たぶんサブタイトルくらいなら許される気がする。


そんなくだらないことを考えているうちに、順番が回ってきた。


店員に案内され、席へ座る。


メニューを開き、しばらく考える。


さて――まずは王道から試させてもらおうか。

変化球ではなく、その店の基準を知りたい。


僕は、その店で最もオーソドックスなパンケーキを注文した。


分厚いパンケーキ。


添えられたクリームとアイス。


そして上からかける蜂蜜。


まさに、パンケーキ界の王道である。


注文してしばらくすると、ついにそれが運ばれてきた。


――うん。

これは、まごうことなきパンケーキだった。



パンケーキを完食し、僕は店を後にした。

実に美味しかった。


ああいう、ふわふわ系のパンケーキを食べたのはかなり久しぶりな気がする。


甘いものを食べながら、ゆっくり時間を過ごす。


それだけのことなのに、妙に満たされた気分だった。


時計を見ると、時刻は十一時を少し回ったところだった。


まだ早い気もしたが、そろそろ新横浜駅へ向かうことにした。


電車に揺られ、新横浜へ到着した頃には十二時頃になっていた。


乗る新幹線までは、まだかなり時間がある。


――よし、ここからはお土産タイムだ。

僕は早速、お土産屋を物色し始めた。


まずは、自分用。

気になったものを何点か選ぶ。


続いて職場用。

「横浜っぽさ」があり、なおかつ数がたくさん入っているやつを選定する。


さらに、行きつけのバーの人たち用。

そして忘れてはいけない。


僕の大親友にも一つ。


お土産を選ぶ時間というのは、思っていた以上に楽しかった。


誰に何を渡そうか考えていると、その人の顔が自然と浮かぶ。


そういう時間は、嫌いじゃなかった。


気づけば、買い物が終わった頃には三時を回っていた。


さすがに少し腹が減った。

僕は駅の中をぶらつきながら、遅めの昼食を取ることにした。


昼食を取りながら、僕はぼんやりと考えていた。


買い忘れはないか。 新幹線の時間は間違っていないか。 乗り口はどこだったか。


そんなことをスマホで確認しながら、ゆっくりと食事を終える。 そして、かなり余裕を持って一時間前には新幹線の改札をくぐった。 焦って移動するのは好きではない。


旅の最後くらい、ゆったりしていたかった。 改札の先は、人でごった返していた。


ゴールデンウィーク終盤。

帰省客や観光客で、駅は完全に人の波だった。

そして、みんな荷物が多い。


大きなキャリーケース。

大量の土産袋。


子どもを抱えながら荷物を運ぶ家族。 そんな人たちを眺めながら、ふと思う。


――僕みたいに、リュック一つだけの人間はほとんどいない気がする。


行きのリュックは、驚くほどスカスカだった。

下着とTシャツ、それに最低限の荷物だけ。


実に弾丸らしい軽装備だった。


だが、帰りは違う。

お土産でパンパンだった。


鳩サブレー。


自分用の雑貨。


職場用。


バーの人たち用。


親友用。


気づけば、リュックは行きとは比べ物にならないほど膨らんでいた。


だが、不思議と嫌な重さではなかった。


むしろ、その重みが、この数日間の楽しさを証明しているような気がした。


待合スペースへ腰掛け、新幹線を待つ。 周囲の喧騒を聞きながら、人間模様をぼんやり眺める。


疲れ切った父親。


はしゃぐ子ども。


眠そうなカップル。


土産話で盛り上がる学生グループ。


どれも妙に愛おしい、自分には遠い過去だ、、、、


みんな、それぞれのゴールデンウィークを過ごしてきたのだろう。 そんな光景を眺めながら、僕は静かに帰りの新幹線を待っていた。


新幹線の時間が近づき、僕はホームへ移動した。


自分の乗り口へ辿り着き、ぼんやりと新幹線を待つ。

そしてまた考える。


――のぞみと、ひかりと、こだまの違いって何なんだろう。


注意深く観察してみたが、やはりよく分からなかった。


そんなことを考えているうちに、新幹線がホームへ滑り込んできた。


そして今回も、運よく窓際の席だった。


席へ座ると、ほどなくして新幹線は静かに動き出す。


ゆっくり加速し、景色が徐々に流れ始める。


やがて、その景色は目で追えないほどの速さになっていった。


窓の外を眺めながら、僕は今回の旅を振り返っていた。


始まりは、勢いだった。


もしかすると、逃避だったのかもしれない。


だが、普段とは違う土地。

違う景色。

出会った人たち。


そのどれもが、日常とは別の世界だった。


旅に出る前と比べると、気持ちはかなり軽くなっていた。


――いい旅だった。


旅の間、夜はよく眠れた。


悲しい気分にも、あまりならなかった。


ちゃんと、心から楽しめていたと思う。


もちろん、帰ればまた日常が待っている。


……いや、“日常”ではないのかもしれない。

僕にとっての日常は、もうどこか遠くへ行ってしまった気がした。


そんなことを考え、思わずため息が漏れる。


その時だった。


車内アナウンスが流れる。


――ただいま、富士山がご覧いただけます。


その言葉に、僕は少しだけデジャブを感じながら窓の外を見た。


そこには、夕日に照らされた富士山が静かに佇んでいた。


実に綺麗だった。


昔から信仰の対象になり、絵や写真の題材になり続けてきた理由が、少しだけ分かった気がした。


行きに見た時とも、江ノ島で見た時とも違う。


同じ富士山なのに、気持ちのあり方や見え方で受け取り方が変わっている。


――人生も似たようなもんだな。

気持ちの持ちようと、見方を変えたらなんとかなる。


そう思えたことが今回の旅で一番の成果じゃないか。


そう思うと、少しだけ可笑しくなって、僕は心の中で苦笑した。


――もう少し、頑張れそうだ。

そんなふうに思えた旅だった。

今回の旅のエピソードは思いのほか出来事が多く3分割にさしてもらいました、もうすぐ第2回の調停もあるし、エピソードはいっぱいあるので、準備出来次第アップしていきます。



誰かの心の支えや同じ苦しみを味わってる人に少しでも元気になって貰えるような物語になりますように。

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