第85話:新政、セレスタイン復興の始まり、メリーは大きさの単位
「メリーちゃんが来るのは今日よね?」
冬の朝がもたらす清冽な光が、王族用の食堂を白く塗り潰していた。
その光の奔流を絹糸のような髪に透かし、王妃アンナマリーが、卓の端で静かに匙を動かすアルベルトへと声を掛けた。
「ああ、もうじき来るだろう。アイゼンハイド公爵も来る。先日、自領に帰ったばかりなのに、忙しいことだな」
アルベルトが口に運ぶのは、大地の滋養を凝縮したかのような深褐色の黒麦パンと、湯気を立てる丸芋の煮転がしであった。
陶磁器が微かに触れ合う硬質な音と、揺り籠の中で眠る赤子の穏やかな寝息だけが満たす室内には、平穏という名の確かな重みが沈殿していた。
今や王家の食卓において揺るぎない地位を占めるに至ったそれらの滋味は、厳しい冬を越えるための力強い熱を宿している。
窓外に広がる王都の情景は未だ凍土の下にあるが、この卓の上にだけは、新時代の象徴たる温かな香気が立ち昇っていた。
アルベルトは、自らの手で掴み取ったこの静謐な時間を、慈しむように喉へと流し込んだ。
「私も顔を出していいかしら? もう半年以上も会っていないし」
「いいぞ。話が始まる前に挨拶をするくらいは問題ない」
アルベルトの許可を得て、アンナマリーの頬に春の陽だまりのような微笑みが広がる。
その隣で、皿の上の丸芋と真剣に格闘していた幼き少女、アルマリアが、緑柱石を思わせる瞳を輝かせて顔を上げた。
「ママ、メリーちゃんが来るの? わたしもご挨拶していい?」
まだ幼児であるアルマリアの、一点の曇りもない無垢な問い。
アンナマリーは娘の愛らしい仕草に目を細め、その柔らかな髪を優しく撫でる。
「いいわよ。アルマリアちゃんがセレスタイン公爵になる前の大先輩だからね。メリーちゃんは」
「うん。ちゃんとご挨拶する」
アンナマリーとアルマリア──セレスタインの血を引く母子が、同じ色のピンクブロンドを揺らして笑い合う光景を、アルベルトは慈しむような眼差しで見守っていた。
だが、その視線がふと卓の背後の壁へと向けられた。
白亜の壁には、洗練された宮廷の装飾には不釣り合いなほど無骨な文字が、立派な額縁に収められて掲げられている。
一、王都を清潔に
二、黒麦を食え、丸芋も食え
三、稼ぐに追いつく貧乏なし
アルベルトは最後の一口を飲み干すと、音もなく席を立った。
その背中は、一つの国家の未来を背負う王そのものだった。
──────
冬の冷気を孕んだ風が廊下を吹き抜ける中、アルベルトの執務室の重厚な扉が開かれた。
室内は、厳冬の寒さを撥ね退けるような暖炉の熱気と、新王の治世を支える緊張感に満ちている。
傍らに控えるジャックが、静かに室内の秩序を整え、主の合図を待つ。
「入ってもらえ」
アルベルトの声に応じ、室内へと足を踏み入れたのは、新たな時代を象徴する者たちであった。
老練な智慧を瞳に宿したレイモンド侯爵、主の傍らに音もなく立ち、一分の隙も見せぬパトリック、そして『海鳥』の赤毛の娘。
その後ろには、洗練された衣服を隙なく着こなし、盤面を射抜くような鋭い知性を双眸に宿したアイゼンハイド公爵と、音もなく付き従う兵士たちが続く。
だが、列の最後に現れた少女を見た瞬間、室内の空気は一瞬にして華やぎ、同時に心地よい弛緩に包まれた。
「メリーちゃん!」
弾かれたように駆け寄ったのは、母の傍らを離れたアルマリアであった。
幼き王女が真っ向から飛び込んだ先には、セレスタイン公爵としての威厳を纏い、凛として立つ一人の乙女の姿があった。
ただそこに在るだけで周囲を静謐へと誘う、研ぎ澄まされた刃のように清冽な佇まい。
再会を希求していた少女を腕の中で慈しむように受け止めたのは、数多の盤面を越えてなお変わることのない、穏やかな体温であった。
「あら、アルマリアちゃん、大きくなったわね」
メリーは屈みこんで幼き少女の視線に合わせると、その頭を柔らかな手つきで撫でた。
「お久しぶりね、メリーちゃん」
アンナマリーが、懐かしさと深い愛着の混じった表情で歩み寄る。
「ええ、お久しぶりね、アンナマリーさん。いえ、王妃様」
エメラルドグリーンの瞳が、親愛を込めて細められる。
メリーはにっこりと微笑み、軽く頭を下げて、王妃に対する礼節を欠かさぬ挨拶を交わした。
その場に、セレスタインの生き残りが全員揃う。
アンナマリー、アルマリア、そしてメリー。
陽光を透かす髪の色、陽光を受けて輝く瞳の色は、それぞれに濃淡こそあれ、確かに同じ血の系譜を証明していた。
ピンクブロンドの連なりが、殺風景な執務室に一時の幻想的な華やぎを添える。
その光景に、パトリックが呆けたように呟きを漏らす。
「おっきいメリーちゃんと、ちっちゃいメリーちゃんだ……」
メリーの瞳から放たれた鋭利な視線が、不敬な呟きを漏らしたパトリックを射抜く。
「おっきいメリー、ちっちゃいメリーって何よ? 私は大きさか何かの単位なの?」
ジト目で睨みつけられたパトリックは、主の不興を買い、たじろいだ従者のように、申し訳なさそうに視線を泳がせた。
傍らのレイモンド侯爵が、笑いを噛み潰すように咳払いを漏らす。
だが、メリーの追及は止まらない。
「王妃様とお姫様よ。不敬にもほどがあるんじゃない?」
かつて、国王すら呼び捨てにしたその唇から淀みなく紡がれた、「不敬」という糾弾。
その響きに含まれた重みに、アルベルトは腹の底から込み上げる笑いを堪えきれなかった。
「メリーの口から不敬って言葉が出ると、得も言われぬ感慨があるな」
「そんな話はいいのよ。さっさと本題に入りましょう」
苦笑するアルベルトと、同じく表情を崩したアイゼンハイドを尻目に、メリーは不機嫌そうに鼻を鳴らした。
その傲岸不遜とも取れる振る舞いこそが、かつて自分たちを救い、そして変えてみせた少女の真髄であることを、その場にいる全員が再確認していた。
「じゃ、私はこれで失礼するわね。またね、メリーちゃん」
「またね、メリーちゃん!」
アンナマリーとアルマリアが、名残惜しそうに手を振りながら執務室を後にする。
重厚な扉が静かに閉まり、家族の団欒が残した柔らかな余韻が消え去った。
再び静寂が戻った室内で、メリーたちは『海鳥』が淹れた熱い茶の香りに包まれながら、ソファーへと腰を下ろした。
「デイヴィッド君は元気?」
不意に投げかけられた、次代の王を案じる問い。
アルベルトは、自らの血を引く幼き王子の姿を思い描き、柔らかな表情で頷く。
「ああ、元気だ。ハイハイをするのも、もうすぐだろうな」
「良かったわね。大事な次期国王よ。大切に育てなさい」
メリーの言葉は、単なる祝辞ではなく、この王国の未来を託す者としての厳かな訓戒のようにも響いた。
彼女が描き、アルベルトが形にしようとしている未来。
その重みを共有する者同士の、短い沈黙。
茶碗の中で揺れる水面が、窓から差し込む冬の光を反射して煌めいた。
「ああ、ありがとう。……では、本題に入ろう」
アルベルトの低い声が、執務室の空気を一変させた。
家庭的な温もりは完全に霧散し、アステリア王国の未来を左右する、王の執務室としての顔が露わになる。
メリーは瞳に、王国再興を担う公爵としての、刃のように鋭い光を宿した。
北方の冬よりも厳しく、そして揺るぎない意志が、そこにはあった。
──────
窓から差し込む冬の陽光は、先ほどまでの柔らかな熱を失い、磨き抜かれた執務机の上に冷厳な影を落とす。
アルベルトは深く椅子に背を預け、目の前に座す公爵や侯爵たちを真っ直ぐに見据えた。
「で? 何を要求するつもりなんだ? 国の財布をアテにしてるんだろ?」
茶を淹れる『海鳥』の娘が立てる、微かな磁器の触れ合う音だけが沈黙を縫うように響く。
メリーは悠然と背筋を伸ばし、主君の投げかけた直截な問いを真っ向から受け止めた。
「あら、話が早いわね。アル、お金というのは、使うためにあるのよ」
淀みのない微笑。
その言葉には、膨大な国富を動かすことへの躊躇など微塵も感じられない。
アルベルトは呆れたように首を振りつつも、机に身を乗り出した。
「開き直るな。用途を説明しろ」
メリーは僅かに目を細め、言葉に重みを乗せた。
「王都のスラム街を無くすわ。まず、短期的にはスラムの住民の保護、長期的には区画整理ね」
王都の病巣。
華やかな表通りの影に蠢く、絶望と腐敗の溜まり場。
その地名を口にしたメリーの声音には、一切の感傷は含まれていない。
アルベルトの表情から苦笑が消えた。
彼は王都の地図に視線を落とし、深く頷く。
「王都のスラムか……なるほど、ヴォルガンの負の遺産だな。わかった。金と人員を出そう。食料の備蓄も吐き出そう。炊き出しと復興、まさに王国軍の出番だな」
それは王としての即断であった。
王国が長年目を背け続けてきた汚濁を、自らの代で清算するという強い意志の表明でもあった。
メリーはその言葉を受け、満足げに頷いた。
「ええ、ガーディスの時に思い知ったわ。復興の場に必要なのは王国軍よ。彼らが復興に当たると、その場に規律が生まれる。それは、何よりも必要なものよ」
秩序なき救済は混沌を招く。
軍という規律が、瓦礫と絶望の中に新たな形を与える。
メリーはそれを、この半年間のガーディス復興の現地で目に焼き付けていた。
「アイゼンハイド、王城の備蓄を切り崩すが、足りなくなったら西から備蓄を分けてくれ」
アルベルトの視線がアイゼンハイド公爵へと向く。
公爵は、一寸の揺らぎもない所作でそれを受け止めた。
「承知いたしました。ですが、そのためだけに私を西から呼んだわけではないでしょう? 私の役割は何です? スラムから出た住民の受け入れですか?」
その鋭い洞察に、メリーは唇を綻ばせた。
「察しがいいわね、話が早いのは気持ちがいいわ。アイゼンハイド、あなたの役割は、スラムから、王都から出て行く住民の受け皿を作ることよ。もちろん、セレスタイン側でもその受け皿は作るわ」
アイゼンハイド公爵は静かに目を閉じ、脳内の地図に西側の版図を広げる。
「まあ、そうだろうな。その土地に根付いた住民ってわけじゃないからな、スラムの住民は。王都で身を立てられずに都落ち……というと失礼か、王都から出て行くことになった民を受け入れるのは、周辺領主の役割。確かに理にかなっているな」
単なる排除ではなく、再起の場を与える。
そのための広大な「皿」を、西と北に用意する。
メリーは淡々と分担を提示した。
「王都の西と北にスラムがあるわ。どっちも状況は似たようなもんよ。西はアイゼンハイドが、北はセレスタインが面倒を見ましょう。そういう話をするためにあなたを呼んだのよ」
そこでアルベルトが、ふと疑問を口にする。
「南にはないんだな?」
その問いに答えたのは、アルベルトの傍らに音もなく控えていた男であった。
「はい。先般の飢饉の際に、南側のスラム街の住民はヴェリウス領に連れて行きました。王都のスラムにいられると面倒を見きれないので」
ヴェリウス。
アルベルトが国王になると同時に、宰相に抜擢された男。
「西と北のスラムの面倒を見なかった、放棄したのは、ヴォルガンだけではないということよね。当時のヴェリウス侯爵以外、周辺の領主は手を差し伸べなかった、これだけが事実だわ」
メリーの身を切るような指摘に、アイゼンハイド公爵が同調するように頷いた。
「そうだな。中央のことは中央で、などと言っている場合ではないな。目の前に命の危機があるこの状況で、誰が面倒を見るべきなどと押し付け合っている場合じゃない」
その言葉は、彼の誠実さの表れでもあった。
「幸い? と言ってはなんだけど、セレスタイン領は領地の再編、拡充を含めた復興があるわ。人員の受け入れは積極的におこなうわ」
メリーのその言葉に、アルベルトの口元がわずかに綻ぶ。
「メリーらしいやり方だな。セレスタインの復興のための人員を王都のスラムから引っ張る。金は国に出させる。面倒を見きれない分はアイゼンハイドに任せる。か」
王の指摘に、部屋の隅に控えていた赤毛の娘が、肩を竦めて茶化した。
「姐さん、全部バレてるッスよ」
「当然でしょう。アルがそこに思い至らないわけがないわ。何年一緒に復興事業をやってきたと思ってるのよ」
メリーには、計略が露見したことへの気まずさなど微塵もなかった。
目の前の男は、彼女の計略を看破した上で、それが民の命を救い、王国の地盤を固める最善手であると理解している。
そこにあるのは、言葉を尽くすまでもない、鉄のような信頼であった。
「まあ、慣れだよな。やり方は問わない、結果を出せ。メリーが今までやってきた通りだ。これさえ守れば、俺からは特に何もない。全面的に協力しよう」
アルベルトの宣言。
それは、王都の浄化と自領の復興を同時に成し遂げようとする「少女」への、全権委任であった。
その様子を背後で見守っていたパトリックが、感銘を受けたように独り言ちた。
「やはり、慣れですか。私に必要なのはそれか……」
「慌てる必要はないわ。徐々に慣れなさい。とはいえ、時間はそんなにないのも事実だけどね」
メリーの視線がパトリックを射抜く。
主の傍らに立つ従者として、彼はその重圧を真正面から受け止めた。
アイゼンハイド公爵が、思考の海から戻り具体的な地名を挙げる。
「西も、受け皿がないわけじゃない。ノルトヴァルトはもちろん、レグスにも働き口はある。各所に当たってみるか」
「お願いするわ。やっぱり、あなたを呼んでよかった」
「ああ、私もここに呼ばれてよかった。この手の話に参加できないのは、無能の証だからな。西の公爵としてそれはどうなんだ、と思うよ」
アイゼンハイド公爵のどこか楽しげな言葉に、メリーもまた穏やかな笑みを返した。
「あなたを無能だなどと言う人間はいないわ。……でも、そうね、弟のマクシミリアンの活躍と比べて……、などと比較されるとツラいわよね。お互いに公爵としての面目を潰さないよう頑張りましょう」
同じ視座を持つ二人の公爵。
彼らがここで手を結ぶことは、当然と言えば当然の結果だった。
「この話はヴェリウス宰相に仕切らせよう。計画と予算も宰相に任せる。王城の文官を使え」
アルベルトの有無を言わせぬ号令。
ヴェリウスは深く頭を下げ、その責務を双肩に受けた。
「承知いたしました」
「炊き出しと短期の復興は王国軍を使え。軍の配置は任せる」
「は。手配いたします」
「アイゼンハイドとメリーは、自領での受け入れ準備を始めろ。住民の移送はすぐにでも始まると思っておけ」
「承知」
「承知したわ」
澱みなく流れる指示。
積み上げられてきた「復興の律動」が、今、王国の中枢を動かし始めている。
「長期の計画……都市計画だな。これは今すぐ決めずに、現地の状況を見ながら決めていこう。レグスやガーディスの時のように、すべてをメリーに任せるのは王都を預かる王家として失格だ。ここは我々の頑張り所だぞ、ヴェリウス」
「は。承知いたしました」
アルベルトの国王としての案件処理能力が、議論を一つの確かな結末へと導いていく。
「メリー。セレスタイン領の東側、旧ガメル領の復興をするんだろう? 人員の受け皿として、まずはここの整備をやれ。金は王国が出す」
その命令に、メリーは脳内の地図上の北東の一角をなぞった。
「そうね。セレスタイン領として、まずやらなければならないのは、領の東側の荒れ地の復興。ガーディスとの国境付近までを農地に変え、領の公営農場として運営すること。そういう意味では、セレスタイン領はガーディスよりもだいぶ出遅れているわ」
「ああ、領地の再編も大変だろうが、ガーディスと隣接しているセレスタイン領がガーディスに後れを取るのは、アステリア王国が後れを取るのと同義だ。勝ち負けの話ではないが、あえて、『負けるな』と言いたい」
隣接する新国家への対抗心ではなく、王国としての地力を示すための叱咤。
メリーは力強く頷いた。
「わかってるわ。そのためにはまず人員。人がいない地は支配できないからね」
「言い方に棘がある部分を除けば、それはその通りだ。国策として、王国軍第一軍を投入するか……。土木工事の担い手として、最適なのは彼らだろうな」
アルベルトのその言葉に、ヴェリウスが僅かに顔を上げる。
「第一軍を、ですか?」
「ああ、帝国と和平を結んだ今、第一軍の動きに帝国の機嫌を伺う必要はない。そもそも、やることは土木工事だしな」
王の合理性が、軍の力を建設のエネルギーへと変換する。
「ありがとう、アル。――レイモンド、これはあなたが仕切りなさい。レイモンド領の東に、あなたの直轄の分家、伯爵家を作りなさい。ここの農場はその伯爵家にやらせるわ」
メリーの指示に、老侯爵は深く首を垂れた。
「承知」
老練な智慧が、今、新たな命を育むための土壌へと注がれる。
「大体話はまとまったな。詳細は随時詰めていこう。メリーの家には連絡役を小まめに送る。いいな?」
「ええ、お願いするわ」
「アイゼンハイドもいいな? お前は領地に帰るだろうが、連絡役はつける。また王都に呼び出すこともあるかもしれんが、そこは飲んでくれ」
「は。承知いたしました」
実務の嵐が去り、執務室には静寂が戻る。
椅子から立ち上がったメリーたちは、それぞれの役割を胸に、王の前を辞した。
扉の前に、一人の男が完璧な所作で控えていた。
ジャック。
かつては影のように闇に潜み、冷たい鋼の気配を纏っていた従者は、今や王の側近として、陽光の下に凛として立っている。
彼は優しく、それでいて一分の隙もない完璧な礼を以て、扉の外までメリーたちに同行し、送り出した。
執務室に残されたのは、アルベルトとヴェリウスの二人。
アルベルトは窓の外を眺め、背中で問いかけた。
「わかってるな? ヴェリウス」
「はい」
宰相の短い返答。
「この重責に潰されるなよ? お前が潰れればすべてが台無しだ」
「わかっております。私の肩にはスラムの住民の命が載っています。陛下とメリーちゃんが作ってきた王国再建の流れ。私が潰すわけにはまいりません」
「ああ、頼んだ。……とはいえ、気負いすぎるのも良くないぞ」
王の気遣いに、ヴェリウスは一瞬だけ表情を緩め、再び事務処理の山へと向かった。
王都のスラムを救うためではない。
セレスタインを蘇らせるためだけでもない。
その両方を成し遂げるために、巨大な歯車が回り始めた。
北の地に、新たな芽吹きを。
セレスタインは、自ら未来を築き始める。
彼らは、春を待つことなく、厳しい冬の中でも一歩、また一歩と歩み続けていく。
不定期更新中です




