57話:黄昏食堂
伏せていた答案用紙を引っくり返し、書き進める。最初は歴史で教わった通りの事が出てホッとしている。
転生者として一番問題になるのが歴史だろう。
語学は、理屈は分からないが翻訳されてるように理解出来る。算術はいわずもながな。
キンコーンカーンコーン
「終了。手を止めジッとしてろ。今から動いた者は失格とする」
やっと、終わったぁ。歴史以外は簡単過ぎて時間を持て余してしまった。歴史は合格点に達した事だろう。
「アテナどうだった?」
「王族だから低い訳ないじゃない。そ!よりもラピスはどうだったの?」
「バッチリ?」
「何故疑問形?」
語学と算術はバッチリだと思うが、歴史が自信がない。まぁ不正をしなけりゃ、落ちる訳ではないし、悪くてもこれからだ。
「午後から実技があるから遅れないように。各々、案内してもらった上級生に着いて行けば迷わずに行ける。良いな?遅れるなよ」
ルドス教官が出て行くとピリついた空気が一気に霧散したような感覚を覚える。
余っ程、ルドス教官が怖かったのだろう。でも、ラピスはいつかルドス教官と勝負してみたい気持ちの方が強い。
「あっ、来た来た」
「ティファニア先輩お待ちしました」
「いいのいいの。バイトでやってるんだから。それで、お腹空かない?」
「食堂に案内してれるんですか?」
「それも良いけど、もっと良い場所があるんだ。着いて来て」
食堂より良いところがある事で、ティファニア先輩の後を着いて行く。
「ここだよ」
一見、空き教室の扉しか見えない。だが、看板が掛かっており、『黄昏工房』と書いてある。
「ここってまさか!」
「ラピス知ってるの?」
黄昏って言ったら、あの人しかいない。私(俺)の師匠にして最強の錬金術師………カイト!
古都にて店を出したと王都に訪れる行商人から聞いたが、まさか魔法騎士学園にもあるなんて知らなかった。
「《黄昏》って、あの人だよ。私の師匠の!もしかして、師匠のお店?」
「あっ!カイト様!」
「もしかしてカイト教授と知り合い?カイト教授は、錬金術科の教授で星3よ」
「星?」
身分としては平等を謡っているが、職業の上位制や教師の間でもランク付けがある。
先生→教官→教授の順に高くなり、教授になると星の多さでランクが決まる。
星は最高で5まであり、星5の教授は宮廷魔法使い並に少ない。
「去年、星3になったんじゃないかな」
去年というと、カイトは4年目で星3になったという事だ。これは史上最速と言っても過言ではないらしい。
昇進するには、冒険者のように実績を積んで行くしかない。だが、そこは教師ならではの実績が必要になる。
それは優秀な生徒の排出だったり、研究・発明が認められたり、その他諸々ある。ランクが高ければ、使える権限が増える。
例えば、寝泊まりする個室が豪華になったり、研究・発明に使える資金の増加、給料アップなどなどあるから上を目指す者は多い。
「流石、師匠」
「カイト様凄い」
「知り合いって言うなら丁度良いかもね。入ってみようか」
チャリンチャリン
「いらっしゃい」
ドアを開けると、カウンターに座っている美少女が反応した。良く見ると、耳がとんがっている。
「アテナ、あれ森精族だよね?アテナは初めて見た?」
「えぇ。初めて見るわ。まるで、お人形さんみたい」
アイル先生のように変装はしてない。森精族は美男美女が多いというけれど本当のようだ。
「彼女は、イレイアさん。ラピスが言ったように森精族で、黄昏工房の受付嬢として働いてる。イレイアさん、彼女2人は新入生で教授の知り合いみたいなの。今、いるかな?」
「ご主人様は、錬金科の試験管ですので今はいません。ですが、言伝を預かっておいてです」
そうだ。今日は試験だった。魔法科や騎士科だけではなく、錬金科も試験がある。
「『入学おめでとう。1年の間は、1つの科しか受けられないけれど、2年からは希望者に他の科の授業も受けられるようになるから、もし興味があるなら待ってるよ』との事です」
「師匠ー」
「ラピス良かったですわね」
「うん」
絶対に錬金科の授業を受ける。受けないと、何のために来たのか分からない。
「さてと食事にしましょうか」
「あっ、忘れてた」
「ぷっ、ラピスらしいですわ」
「黄昏食堂は、カウンター横のドアから行けるの。黄昏工房の商品も見てもらえるように、こんな風にしたとカイト教授から聞いた事がある」
カウンター横のドアに『黄昏食堂』と看板が掲げられている。




