話し合うべきこと
シズクが寝てしまったのでヘイタは彼女を添った自分の上から降ろし、ソファに寝かせる。
「先輩...」
そういわれるがそれがシズクを指して言っていないことは容易にわかる。
「ユキ…少しは外で話そうか」
そういって僕とユキは外に出る。
もう7月で夜はあつい・・・と思っていたが山の中はかなり涼しかった。
せっかくのなのでバイクを走らせて少し上に行ったところにある駐車場まで来た。
ここからはまちがよく見える。
ここまでユキとは一言もしゃべっていない。
ここで話しかけるのは勇気がいる。だが、先に言葉をかけるのは自分だとヘイタは思っていた。
到着してユキを下し、ヘルメットを外し振り返るとユキに抱き着かれた。
今回は体勢を崩さない。
「・・・心配しました」
「ごめんな」
ヘイタはそれ以上何も言わずにユキの頭をなでるのであった。
「ユキ、コーラだ」
ヘイタはそういってベンチに座っているユキにコーラを渡す。
ユキはそれを受け取り、そのコーラを見つめながらゆっくりしゃべりだした。
「先輩、私がんばって飛び級しました」
「そうだな、朝日ノ本高校の生徒会紹介の時は驚いた」
「先輩がいなくなったの気づくのに一か月かかりました」
「…頑張って違和感なく消えたつもりだったんだがな」
「いえ、実際私はそれ以降の足取りはおえませんでしたし」
「まあ、俺達3人が消えたのに騒ぎひとつ起させない実家には驚いたさ…だが、気付いた時には1年過ぎていた」
「どこかに行っていたのですか?」
「ああ、二度と戻れない遠い場所」
そういったヘイタの顔はどこかさびしそうに見えた。
「3人でですか?」
「そう、クロノスを回収したのもそれがあったから」
「・・・あれは封印するといいていましたしね」
「そもそもあれを知ったから俺たちは...」
「え?」
「いや、なんでもない。ユキ、ホワイトは元気か?」
「ええ。でも今はネットアイドルですよ」
「ふふ、そうか。あれはそうだったのか・・・今呼べるか?せっかくだ、クロノスに合わせたい」
そういってヘイタは携帯を取り出す。そこではバイク修理する二頭身のクロノスが表示されいた。
「あ、待ってください。・・・ホワイト、いる?」
『・・・はーい、ゆき?どうした・・・ゼロ!あなた生きていたの?』
それにヘイタは苦笑いになる。
「ホワイト久しぶり、クロノスに会うかい?」
『クロノス姉様!?今すぐ合わせなさい!』
・・・相変わらずクロノス大好きだな
彼女はクロノスたちの後に作られた第二世代AI『カラーズ』の1番。ホワイト。
カラーズはその製作途中に不備があったため24想定していたAIのうち成功個体への統合を繰り返し4体しかいない。
カラーズは当時の僕たちと仲の良かった4人に渡した。
そのいずれも、かなり優秀な子たちで僕たちの話について来ようと努力するいい子だった。
残り3体も普通に動いているようで、僕隊と約束したことは守ってるようだった。
『クロノス姉様~!』
『な、ホワイト! マスター、なぜ彼女が!?』
「ユキと再会した、久しぶりに遊んでやれ」
『な、・・・マスターめ。ユキさん、あのころの知り合いでマスターの生存を知っている人は25名います。また、マスターはユキさんのもとには故意に情報を送らなかったことが判明しています!…もう、ホワイト、あっちで相手しますから離れなさい!では、マスター』
そういって、クロノスはホワイトと奥へ引っ込んだ。
・・・おい、クロノス。何言ってんだ?ユキの顔が怖くて見れんぞ。
「さーて、かえ・・・」
そういって立ち上がったヘイタの服を引っ張り強制的にベンチに触らせた。
そしてユキは素早くヘイタの膝上に乗り、肩に手を変える。
その手は肩に食い込むほど強かったが、文句を言おうものならなにされるかわからない空気を醸し出していた。
「先輩?もう少しお話お願いします」
「・・・はい」
ヘイタはおとなしくせざる負えなかった。
・・・だって、あんなふうに乗られたら男はまっすぐ立てなくなっちゃうよ
ようやく解放されたヘイタはユキにシズクについて問いかけた。
「今井さんの下についてどうだ?彼女はかなり優秀な人だと思うが何か学べたか?」
「ええ。ですが、あなたの生存がわかった今では学ぶ必要性を感じなくなっています」
「何かしようとしていたのか?」
「ええ、昔あなたと人生ゲームをしたときに行ったあの計画を現実にと」
「計画?・・・ああ、一般人のカリスマを表に立たせその裏で複数の組織を取り込むっていうあれか」
「覚えていたのですね。少しうれしいです」
「なあ、今の会長さん。お前から見てどう思う?」
「シズク会長のことですよね?・・・正直すごいです。あれは天才というより秀才ですが...」
「ユキ、ならあの人を超えるように努力してあげてはくれないか?」
ヘイタは何かを思い出すように上を見ながらそういう。
ユキは不思議そうにヘイタを見つめ、分からなかったのか問いかけてきた。
「・・・どういうことです?」
「秀才は我が弱い。ゆえに天才であるのにそれを他者の望む答えへしか導けなくなる」
「それは、βの所有者たるあの方のことですか?」
「そう、だね。彼は、消えたあの一念で秀才としての殻を破り天才へと進化した。あの人はおそらく孤独のつらさを知っているんだろう。今の姿は正直昔を思い出していやになる。」
「確かに、赤木さんって人が抜けてからの会長は少し寂しそうと聞きました」
「お前、将棋得意だろ?今度一局さしたらどうだ?ユキにもいい変化が出るかもな」
罪悪感を抱えたヘイタはそういうとしか言えなかった。




