バイク勝負決着!
困ったことになった。
「大丈夫か?」と僕が声を掛けると、彼女は一言つぶやいて気絶してしまった。
「せん―――」
僕はすぐに彼女の口をふさぐ。
彼女は気づいていないのかもしれないが彼女の偽装能力が切れている。
今僕と彼女は周りの暴走族に認知されているのだ。
「能力のオンオフぐらいきちんと感知しろ。しかしまずいな。自分としては彼女を勝たせなくてはならんのに」
「!・・・っぷはあ、すみません、気づきませんでした。」
彼女は頭を下げる。こうしてみると、成長したと僕も感じる。
「おいおい、何やってんだい、坊主ども?あーあ、じこっちゃって、かわいそうだな!」
対戦相手の男がうるさいエンジン音と手下の笑い声を鳴らしながらそ言う。
「無様すぎるぜ。まあ、これも勝負。悔しければ気絶してでもバイクに乗って勝てばいいんだよ!ヒャーハー」
彼はそう言ってバイクを先には知らせて行った。
「くそ、センパイ起きてください。負けてしまいますよ!」
不審者風の格好の彼女はクイーンに向かってそう言うが、クイーンは反応を示さない。
「あなた、どうも思わないのですか!」
不審者風の彼女は八つ当たりだったのだろう。
平太に向かってそう叫んで、彼女は身がすくんだ。
「あァ?」
まるで蛇ににらまれたネズミのように彼女は動けなくなっていた。
纏う雰囲気も先ほどのおおらかで優しいそよ風のような雰囲気から、殺戮と破壊。例えるとして多くの物語に現れる魔王のような威圧感のある気配がヘイタから漏れ出していた。
「ざまあねえな。クイーン。うちの体調に負けちゃって。俺たちが車の中でじっくりと手当でもしてやろうか?」
下品な笑いをする不良は平太にも目もくれずクイーンの下へと歩いて行く。
しかしその瞬間、その男は膝から崩れ落ちた。
「この世界は本当に平和ボケしているな。そこの不審者でも思わず漏れ出てしまった氣を読み取っているというのに。…30人ですか。一人1秒。それで30秒と言ったところですか?努力する者を貶め卑下し、侮辱すること。実に愚かだ。少しばかり...眠れ」
その瞬間、平太の姿が残像のようにぶれて消え、近くにいた一人のとこの頭を左手でつかむと、そのまま5人ほどまとめて壁に押し付ける。
「貫通拳」
そのまま開いた右手を握りしめて、回転をかけながら溝を殴る。
その衝撃は後ろへも伝わり、山の壁にくぼみを作った。
そして平太は次の標的へと向かう。
残された男たちは全員白目をむき、全員様々な方へ倒れ、泡を吹きながら気絶した。
「ば、化け物か!」
「た、たぶん、ほかの領地の二つ名持ちにちげえねえ」
だれかはわからないがそう言った瞬間、多くの奴がこっちに視線を向ける。
・・・おいおい、普通は逃げるんじゃねえのか?
平太は知る由もないが、彼らは今はヤクザの若頭で彼らのOBに当たる人たちに訓練をつけられ、調子に乗って下部組織として発起したばかりの奴らであった。
そんなこと知ってもどうとも思わないだろうが、そこらへんの素人よりは体が動くなと思っていた平太は、気絶しているクイーンとそれを手当てしている不審者少女に注意がいかないように、盛大に暴れることにした。
体は流れるように、勢いは決して逃げないように、1秒の無駄もなく。
ある者の顎を殴って上に吹っ飛ばし、それにを縦に残り3方向から同時に殴り掛かってきた3人を横から弧を描いて吹っ飛ばす。その時にねじった体を元に戻す意勢いでさらに二人。
その二人にぶつかって壁まで遁んで二人。と、どんどん数を減らしていく。
―――――ちょうど30秒後。
そこに立っている者は一人しかいなかった。
その場において僕は周りを見渡しため息をつくと、そのままバイクまで歩くと、手当てが終わって僕の戦闘を呆けるように見ていた不審者少女からクイーンを取り上げると、おんぶして座る。
そして不審者少女の方を向く。
「早く後ろに乗れ。クイーンをお前で挟んでゴールまで連れて行く」
「へ?」
「いいから早くしろ。今、・・・俺は少し気分が良くない」
僕が不快を少しあらわれにさせると、彼女の身を凍りつくような悪寒が走った。
―――――圧倒的殺意。
それを感じ取ったのだ。
「せ、・・・クイーンに人殺しの片棒を担がせる気はありませんよ」
「あぁ?・・・あ、すまない。こんな殺気立ってたなんて。おかしいな、その人とはまだ一回しかあってないはずなのになんで?」
後半部分はよく聞こえなかった不審者少女は平太を警戒しながらも殺気が収まったことにより、後ろに乗り込んだ。
「え?・・・提案しておいてなんだけど、僕を信用するの?」
「・・・私の勘はよく当たります」
彼女はクイーンの横からひょこっと顔を覗かせ、こちらに声を掛ける。
「その私の勘があなたを信じろと知っている。そして何より、こんなことで先輩に黒星がつくのはいやなんです」
彼女ははっきりとそう言った。
「いい目だ。君はそうやって決意を固めたときに出る純粋な目。とても羨ましいよ」
「!・・・え、どうして――――」
「しっかりつかまんな。振り落とされるなよ!」
そう言って僕はエンジンフルスロットルで走り出した。
「クロノス」
『わかってます。黒部様にはすでに連絡済でございます。』
・・・おいおい、確かに黒部を呼んでほしかったけど、お前優秀すぎないか!?
『そんな~、褒められるとテれちゃいますよ~』
・・・ついに心の声まで!しかも、照れ方異常にかわいいな!
恥ずかしそうに頬を染めながら体をくねくねさせるその姿に僕は思わずそう思った。
すると、耳に予め入れておいたインカムから警報が鳴る。
今横は渓谷にガードレールとこのスピードで突っ込んだら、間違いなくおじゃんだ。
ちょっと、油断してスピード出しすぎたみたい。
「おい、ちょっとやばいことするから、これくらい我慢しろよ。クロノス!」
するとバイクからベルトが伸びて3人をぎゅっと固定する。
「横の鉄パイプ掴むことをお勧めするぜ、ユキ!」
「え!?・・・ひ、ひゃああああああああああああああああああああああ」
その瞬間、バイクは斜角30度まで傾いた。
こもまでは同じ、だーけーどー、このままでは曲がりきれない。
だから、コナー終盤。ここで、ギアチェンジ。
あの前でうるさい騒音、木々のざわめき、セミの声。
そのすべてが、僕たちのいたその場に置いて行かれた。
その瞬間、僕たちは音を超えたのだ。
暴走族の長はのんきに鼻歌を歌っていた。
クイーンはさっきのでつぶれた。
この勝負、俺の勝ちだ。そしてここが俺たちの領地としてもっとあの人の役に立つ!
彼はそんな中、後ろから追ってくるライトの存在に気が付いた。
・・・あ?だれだ?部下の誰かか?
しかしそれがおかしいことにすぐに気が付く。
この改造バイクは暴走族のマシンの中でも2番目にはやいやつだ。
これに追いついてくるんて普通じゃない。
そう思って彼は降り返った。
これがいけなかった。
今彼がいる場所はラスト10本目カーブ前の一本道100メートル。
ここではなによりマシンの差がものを言う。
そのバイクはあっという間に彼に追いつき、風のように横を通り過ぎる。
・・・あのときの坊主!
顔立ちや、身長は多少大きくなっても元々童顔の彼は幼さが抜けないためこの状態でも若く見える。彼が坊主と呼ぶ男はこちらを振り返ることなく通り過ぎる。すると無線が入る。
『長!もうすぐそっちに行くSSバイクにはクイーンが乗っています。抜かされないでください!』
「なに!?」
情報がちょっと遅かった。
長は、すぐにエンジンの回転数を上げる。しかし、それでも追い付かない。
・・・使うか。
そう言って彼はハンドル横のふたを外すと、そこには赤いボタンがあった。
「ターボ、オン」
すると、悪趣味なバイクの装飾と思われた後輪の装飾がはずれてターボが現れた。
爆発的な勢いを生んだバイクはすごい速度を出し、平太の真後ろをとらえる。
平太は彼を一瞥するとどうでもいいというかのように前を向き、一番後ろの不審者は圧巻ベーとこっちにやってきた。
そしてコーナーに差し掛かる。
その瞬間、彼は驚くべきものを見た。
バイクを左右に大きく振り、一気に車体を横に曲げる慣性ドリフト。
超一流の走り屋が車でやる所を何度か見たことがある彼にとってあれがその人と同等クラスに完成されたものであると分かった。
彼は思わず見惚れてしまい、曲がり損ねてしまった。
そのまま、ガードレールにまっすぐ突込んだ彼は体を投げ出されてしまう。
・・・ああ、バカなことするんじゃなかったな。
彼が思いだしていたのはさっき言っていた一流の運転手の慣性ドリフト。
彼はそんなドライバーにあこがれていたが、原付を走らせるうちにバイクにはまり、改造にはまり、気づけばこんなのに。
・・・ごめんよ、俺のバイク。こんなに傷つけちまってまって、本当にごめんよ
彼の眼から涙があふれる。
・・・こんな俺だけど、散る時もお前と一緒だ。
彼はバイクへと手を伸ばす。
そんな手を誰かが掴み、彼は未知へと引っ張られる。
「ぐふっ」
彼の涙と、バイク峠の下へ堕ちてゆき、一度鈍い音をたてた後、小さな金属がぶつかるような小さなきれいな音がしたでは鳴っていた。
「誰だよ!、なんで俺をあいつと一緒に行かせてくれない!俺は、俺は、あいつみたいな走り屋になりたかった。実力で勝てる走り屋に!なのに、今や姑息な手を使い、バカみたいな改造をして、俺は、俺は、・・・・」
暴走族の長は、自分が助かったことに気が付いた。しかし、隣にはあの相棒がいない。
自分が殺した(壊した)のだ。彼は涙を流しながら地面を叩く。
「小僧、自分のマシンのために涙を流せるということはそうそうできる事ではない。走り屋に事故はつきものだ。だがな、マシンと共に散るのは照ってゆくマシンに最も無礼なことなんだよ。あの堕ちたマシンは誰が回収する?あのまま放置か?やがて自然破壊として人々につるし上げられると、走りを共にした相棒によって葬られるか、どっちの方がいいかはわかるだろ?」
暗くてその男の顔はよく見えない。しかし、反射したそのサングラスにスーツはかなりの金持を感じさせた。
「ついてこい。ゴールまで連れて行ってやる。っていってもけがしてるか。・・・よいしょ」
そのおとこはそういうと、彼を担ぎ上げ彼の車に放り込む。
真っ黒のフェラーリに乗る。
彼はその時見逃さなかった。
そこには今年の春。東京制覇を成し遂げた伝説の走り屋グループのステッカー。
2本の平行線の中にはこう書かれていた、『parallel』。
「おい、厚人。そのガキがか?」
暴走族の長を運んだ人は厚人と呼ばれた。その彼の隣に座る男の気配はとても鋭く、そして抑圧されたように静かに膜のように彼の周りをかこっていた。
「ええ、でも、彼にはまだ希望がありますし、うちの子のやらかしたことのケツ拭くのは親の役目っすよ」
彼はそう言って、静かに、心地いい、最速の走りを行う。
彼こそが関東制覇を成し遂げた走り屋『parallel』グループの副長、神のペダル踏みゴットフットの名を持つ黒部 厚人だった。
頂上のゴールには多くに人が集まり、噂話をしていた。
話題はクイーンの事故の件と、先ほど謎のバイクが現れてクイーンを乗せて走っていることだった。
クイーンはこの土地の守護者であり、シンボル的存在。
彼女のファンはそろって彼女を心配をした。
そして、最後のこの一直線の登りにエンジン音が響き渡る。
そして姿を現したのは、漆黒のライダースーツを着てフルフェウスをかぶっだライダーだった。
そのままライダーはゴールを切ると、そのまま手を振り、退場していった。
一方、そんなクイーンを見守る二つの影があった。
「もう世代交代ですか?」
「そうね、彼女は才能にあふれているもの。しかし、あの気難しい子が初対面のあなたに気を許すとはね。」
「彼女のことはよく知ってますから」
「少し気になるが聞かないで上げよう」
僕、ヘイタは少しだけ笑うと、「ありがとうございます」とさわやかな笑顔で言い、クイーンを追う。
夏の夜に涼しげな風が僕たちに感謝を告げるようにほほをなでていくのだった。




