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魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第10話 マオリョー、宣戦布告されます
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マオリョー、宣戦布告されます⑤ 敵が、内輪揉め


正門の向こうで、敵の傭兵たちが顔を見合わせた。

「な、なんだあいつら……」

「身内で揉めてるぞ。完全に隙だらけだ、今だ、突っ込め!」


「隙だらけって、誰のせいでこうなってると思ってんだよ!」

俺は突っ込んでくる敵に剣を向けつつ、後ろでわちゃわちゃしてる仲間を恨めしげに睨んだ。

「無給の俺が、強すぎてポンコツな身内の交通整理して、その上ゴロツキ百人の相手もすんのか!? どんだけ働かせんだ、この会社!」


ザザザッ――と、傭兵たちが一気に間合いを詰めてくる。

そのときだった。


ビュオォォォォォッ!!


「なっ……!?」

さっきまで晴れ渡っていた青空が、一瞬で真っ黒な雷雲に覆い尽くされた。

地響きのような雷鳴。そして、視界を奪う豪雨と突風。


「きゃあっ!? せっかく整えた髪がぐしゃぐしゃよ!」

リリが頭を抱えて悲鳴を上げた。

「こんな時に髪の心配してる場合か!」


俺は咄嗟に『探索強化』を広げ――そして、ぞっとした。

「……っ、敵の位置が、何も視えねえ!」

全方位から殴りつけてくる嵐の気配がノイズになって、探索の網が根こそぎ引きちぎられている。唯一の取り柄を、真っ先に潰された。

「探索が消えりゃ、俺なんてただの剣を持った無給の一般人だぞ。一番大事なやつから封じてくるとか、人が悪すぎるだろ……!」


『いやぁ、ええ城やなぁ。……半分、崩れとるけど』


嵐の轟音を切り裂いて。

空から、掴みどころのない関西弁が降ってきた。


「……誰だ!」

俺は吹き荒れる暴風の中、目を細めて叫んだ。


『西の商会の名代、ストムや』

雷雲の奥から、飄々とした声が響く。

『まあ、名代言うても、わてはただの風読みやけどな』


「風読みが雷落とすか!」

俺は泥水を蹴立てて叫んだ。

「姿見せろ! こそこそ上空から喋ってねえで降りてこい!」


『あかんあかん。わて、喧嘩は専門外やねん』

声は右から聞こえたかと思えば、次は左から聞こえる。

『ほな、楽しい泥んこ遊びの時間やで』


ビュオォォォォォッ!!

風速が一気に増し、視界が真っ白な霧と豪雨に塗り潰された。

足元の石畳はあっという間に濁流に呑まれ、ぬかるんだ泥沼に変わる。


「うおっ……!?」

踏ん張った足が、ずぶりと泥に沈んだ。

その隙を突いて、霧の中から人影が躍り出る。傭兵だ。

振り下ろされる剣を、俺は咄嗟に受け止めた。


ガキィンッ!


「重っ……!」

足場がぬかるんで押し返せない。じりっと後ろへ滑る。

泥に足を取られながら相手を蹴り離し、なんとか距離を作った。


「俺の『探索強化』が……完全に死んでる!」

本来なら敵の急所も次の動きも読めるのに、嵐の気配がノイズになって、何も視えない。

「どこから来るかすら分からねえ……!」


「うわっ、足が抜けない!」

すぐ後ろで、リリが泥に脚を取られてもがいていた。

「きゃああっ! お気に入りの靴がドロドロよ!」

「靴より自分の心配しろ! お前にそこで死なれたら寝覚めが悪いんだよ!」

舌打ちしつつ、片手でリリの襟首を引き寄せ、横から来た刃を払う。見捨てて逃げたいのは山々だが、目の前で死なれると後味が悪い。それだけだ。


『でも、見えん相手はよう燃やせんやろ? 火は風に弱いんや』

ストムの声が、嘲笑うように降ってくる。

「うっさいわ! お前ごと燃やしたるわ!」

霧の奥でゼルが吠え、やけくそで天に炎を噴き上げた。

が、紅蓮の炎は突風に薙ぎ払われ、火花ひとつ残さず掻き消える。

「……あれ? 火力出えへん。やっぱさっき飯食い損ねたからや、腹が」

「この状況で燃費の話してる場合か! どのみち風で消えてんだよ!」


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