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魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第10話 マオリョー、宣戦布告されます
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マオリョー、宣戦布告されます② 女王は、片手間


「ゼノさんが夜のうちに、火急の用事でどっか飛んでったってことか? こんな決戦の朝に!?」

ノクテが、再びこくりと頷く。

「ルシフは予告通りの巡礼サボり、ゼノさんは無言で雲隠れ……上が二人とも、一番肝心な時にいねえじゃねえか!」

俺は崩れ落ちそうになった。


「ふふん! 慌てないの、新入社員!」

リリが丸メガネを押し上げ、ドヤ顔で胸を反らした。

「こういう時こそ、人事の腕の見せ所よ。社員一人ひとりの能力を正しく評価し、最適な配置に落とし込む。適材適所――組織運営の、いろはの『い』よ」

「お、おう。それっぽいこと言うじゃねえか」

「いくわよ。まず、火属性のゼルは……燃焼特性を考慮して、東棟ね!」

「待て待て、なんで東なんだ!?」

「東棟は朝日が一番当たるでしょう? 火の力は陽の気で高まる。だから火属性は東。完璧な配置よ」

「占いか! しかも敵、東から一人も来ねえぞ!」

俺は探索の感覚を頼りに、ぴしゃりと言った。

「敵が来るのは西と正門の北だけ。お前の初手、誰も来ない空き地に火力を一個まるまる遊ばせてんだよ!」

「えっ……て、敵がどこから来るかは、その、現場の細かい話で……」

リリの丸メガネが、みるみる曇っていく。

「人事は大局を見るものなの! 朝日と属性の相性という、もっと本質的な――」

「その本質、誰も得しねえんだよ! 敵の位置っていう一番でけえ現場を丸無視すんな!」

こいつ、書類の上だけで完璧な組織図を引いて、肝心の戦場の地図は一度も見てやがらねえ。


「配置は俺が決める。お前は黙って書類でも眺めてろ」

俺は探索で読んだ敵の位置を頭に並べ、てきぱきと割り振っていく。

「アイシスは西。百人来てる」

「西? ……まあ、わらわの庭先を土足で荒らされるのも業腹ね。片手間に凍らせてやるわ」

アイシスは気だるげに西へ向かった。あくまで「本気ではなく庭の掃除」という体裁を崩さないまま。


「ゼルは俺と正門だ。一番敵が多い。好きなだけ暴れろ」

「おお、ええやんけ! ……あ、その前に飯くれ。腹減ってると本気の火ぃ出えへんねん」

「決戦前に出前取るな! ただし味方は焼くなよ、火加減を百回考えてから撃て!」

「腹ペコやから、どうせ三割くらいしか出えへんし大丈夫やって」

「その三割が一番信用ならねえんだよ!」


「ミィナは城の中で待機。怪我人の手当て。外に出て"浄化"すんなよ、絶対にだ」

「承知しました。では傷ついた方々を、苦しみのない安らかな水底へ――」

「手当ては治すことだろ! なんで治療の最終形態が水葬なんだよ!」


最後に、足元でノクテが影をぐにゃぐにゃと動かし、何かを必死に伝えようとしていた。本人はさも完璧に説明し切ったという顔で胸を張っている。

「悪いノクテ、翻訳のゼノさんがいねえとお前の指示は一ミリも分かんねえんだ。とりあえず影で城の守りを手伝っといてくれ、いい感じに」

ノクテは無言のまま、不本意そうに肩をすくめた。


「で? 俺とポンコツ人事と燃費の悪い火炎魔は正門だな?」

「燃費の悪い言うな! ゼル様や!」

ゼルが真っ先に駆け出していく。

「人事をポンコツ呼ばわりしないでもらえる!? わたしたちは正門で、エリートの実力をびしっと見せつけるのよ!」

リリも胸を張ってついていった。


俺たちは城の正門へと向かった。

半壊の門の向こうには、武器を手にしたゴロツキどもがズラリと並んでいる。

西の商会が雇った派遣の傭兵たちだ。


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