表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第10話 マオリョー、宣戦布告されます
PR
95/122

マオリョー、宣戦布告されます① 来るぞ、配置につけ


「おい! 来るぞ!」

俺は応接間に飛び込んだ。

「西から百! 正門からも百! さらにあの気象を操る変な天狗も一緒だ!」


俺の『探索強化』は、城外の気配なら正確に読める。

接近する敵の数も、殺気も、手に取るように分かった。

「数も位置も読めてる。……だけど、あの天狗だけ、何を企んでやがるのか底が知れねえ」

俺は窓の外を睨みつけた。


「……ふぁあ。朝から騒がしいわね、新入社員」

リリが目をこすりながら入ってきた。

「エリートのわたしは、睡眠時間の確保も立派な自己管理なのよ」

「自己管理してる奴は決戦の朝に寝坊しねえんだよ!」


「……騒々しいわね」

続いて、アイシスが気だるげに現れた。

「二百? たったそれだけのために、わらわに起きて動けと?」

「お前の力が要るんだよ! 二百は普通に大軍だろ!」

「ふん。その程度、わざわざわらわが手を下すまでもない端数よ」

アイシスは優雅に髪をかき上げた。

「格というものがあるの。雑魚を相手に本気を出すなど、魔族の女王の品位に関わるわ」

「品位で城は守れねえんだよ! 今日ばかりは品位捨てて働け!」


「アイシス様! おはようございます!」

ミィナが、にこにこと水瓶を抱えて続く。

「ご安心ください。城に近づく不浄な者どもは、わたしがすべて、清らかな水底へお還しいたします」

「物騒な朝の挨拶すんな! "還す"って言い方で誤魔化してるけど、それ溺死だろ!」

「いいえ、浄化です」

ミィナは、心底不思議そうに小首を傾げた。

「穢れた者を清らかな水で洗い、安らかな眠りへ導く。これほど慈悲深い行いが、ほかにありますか?」

「ある! 普通に追い返すって慈悲がある! なんでお前の中で"溺れさせる"が最上級の優しさになってんだよ!」

本気で不思議がられると、こっちが間違ってる気がしてくるからやめてほしい。


「面白ぇやんけ!」

最後にゼルが牙を剥いて笑った。

「俺の炎で、二百人まとめて丸焼きにしたるわ! ……あ、その前に飯くれ。なんか腹に入れんと、本気の火ぃ出えへんねん」

「決戦前に出前取るみたいなノリで飯要求すんな!」

「しゃあないやろ、燃料切れたら最強の俺もただのトカゲや。腹ペコのままやと、せいぜい焼き鳥が関の山やで?」

「火力が腹具合に左右されすぎだろ! 燃費悪すぎる古龍だな!」


俺はぐるりと部屋を見渡した。

癖の強い連中ばかりだが、それでも頼れる戦力ではある。問題は――

「……おい。ルシフとゼノさんは?」

部屋の隅が、しんと静まり返っていた。


「ルシフがいねえな。あの野郎、ほんとに巡礼とやらにトンズラしやがったか」

昨日あれだけ堂々と「明日は聖地巡礼だ」と宣言していたんだから、いないのは想定内だ。あの光る置物は元から戦力に数えてない。

「問題はゼノさんだ。あの黒鎧のおっさんがいねえ。昨日は何も言ってなかっただろ」


部屋の隅からノクテが滑り込んできた。

無言のまま、俺の前に一枚の紙切れを差し出す。


「なんだこれ?」

俺は紙切れを受け取った。


『あとは任せた』


「…………は?」

俺は紙を二度見した。

「あとは任せた……? たった六文字? 何ひとつ具体的に任されてねえんだが。引き継ぎゼロかよ」

じわじわと怒りが込み上げてきて、最終的に爆発した。

「ってかこれ、お前の代筆じゃねえか! あの翻訳詐欺おじさん、自分じゃペンも持たずに、書き置き一枚で消えやがったのか!」


ノクテは無言のまま、こくりと頷いた。

そして西を指差し、自分の胸を叩いてから、ひらひらと羽ばたくジェスチャーをする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ