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魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第8話 マオリョー、業務改善します
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マオリョー、業務改善します④ お茶は、冷ましすぎ


俺の絶叫が厨房に響き渡った。

「なんだ今の! 規模がちいせえよ!」

俺は天を仰いだ。

「城を丸ごと焼き尽くす紅蓮の炎を操る古龍の力を借りておいて、出てきたのが百円ライター以下の火種かよ!」

「どんな燃費の悪さだ! 逆にどうやったらそんなに威力を減衰できるんだよ!」


——と、足元で「ぴぃっ」と声がした。見れば、寒がりのぴぃが、その頼りない火種にちょこんと身を寄せ、目を細めて羽を膨らませている。朝、隙間風に震えていたのが嘘みたいに、気持ちよさそうだ。

「……まあ、こいつにはちょうどいいのか」

俺が思わず毒気を抜かれていると、リリが得意げに胸を張った。


「ふふん! どう!? これがエリートの力よ! 全く無駄のない、完璧な火起こしじゃない!」

リリが勝ち誇ったように腰に手を当てる。


すると、期待を裏切られたゼルが、頬を膨らませて地団駄を踏み始めた。

「いやや! なんで俺の炎をそんなちんまい火種に使うねん! しょぼすぎるわ!」

「俺の力はもっとこう、ドバーン! ズゴーン! ってやるためのもんやろ!」

「もっとドーンとやったるで!」

ゼルが両手に炎を宿し、かまどに向かって構えようとする。


「ちょっと! なに勝手に本気出そうとしてるのよ! 朝食の準備でボヤにする気!? わたしの完璧な段取りを邪魔しないでよね!」

「うるさいわ! あんな線香花火みたいな火、俺のプライドが許さんねん! どけやリリ、俺がこの厨房ごと丸焼きにしたる!」


「ダメって言ってるでしょ! せっかくエリートのわたしが、完璧に火加減を仕切ってるのに!」

「火加減ちゅうレベルちゃうわ! こんなん線香花火やんけ! とにかく俺が燃やすんやー!」

「だからボヤにすんなって! お前ら二人ともいったん落ち着け!」


だが二人は俺を完全に置いてけぼりにして睨み合っている。最強の古龍と自称エリート人事が、朝の火起こし一つでこの騒ぎだ。どんな底辺企業だよ。

と――壁際で茶を待っていたアイシスが、つまらなそうに指先へ冷気を滲ませた。

「……朝から、やかましい。次に騒いだ方を、氷漬けにして黙らせるわ」

たった一言。それだけで、燃え上がりかけたゼルの炎も、キンキン声のリリも、借りてきた猫みたいにぴたりと黙り込んだ。

「規格外の力を、朝の火種一つでこじらせてんじゃねえよ……。お前が一番まともだな、アイシス」

「当然よ。わらわは騒がしいのが嫌いなだけ」

俺はため息をつき、チロチロと燃えるかまどにヤカンを乗せた。


数分後。

ヤカンのお湯が沸き、俺たちは湯飲みにお茶を注いだ。

だが、当然ながら沸かしたてのお茶は熱湯のように熱く、とてもすぐには飲めない。


「あっち! おっちゃん、お茶熱すぎて飲めんわ!」

ゼルが舌を出して涙目になる。


「さあ、ここで再び業務改善の出番よ! お茶が冷めるのを待つ時間だって、我が社にとっては立派な無駄なんだから!」

リリが再びドヤ顔で立ち上がり、丸メガネをクイッと押し上げた。

「アイシス! あなたの力を少し借りるわよ!」


厨房の隅で、腕を組んで壁によりかかっていた氷晶色ロングの絶世の美女、アイシスが、冷ややかな視線を向けてきた。

「……くだらない。わらわの氷を、そんな安い茶の温度調節などに使うな。愚かの極みね」


アイシスは塩対応でピシャリと撥ね付けたが、リリはお構いなしだ。

「いいからいいから、ちょっとだけだってば!」


リリの瞳孔が、アイシスと同じ氷晶色に淡く発光する。

リリが並んだ湯飲みに向かって、フッ、と息を吹きかけた。


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