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魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第7話 マオリョー、社員旅行します
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マオリョー、社員旅行します⑪ 刺身も、どうぞ


俺は、一通り全員にツッコミを入れ終えると、どっと疲労を感じて座布団に座り込んだ。

ため息をつきながら、ふと、騒がしい宴会場の座敷を見渡す。


肉を両手で掴んでバクバク食い散らかすゼル。

それに「予算がー!」と怒鳴りながら自分も高級デザートを頬張るリリ。

「アイシス様、こちらのお刺身もどうぞ、ふふっ」と甲斐甲斐しく世話を焼き、アイシスに「近いわよ! わらわは自分で食べられるわ!」と塩対応されているミィナ。

幻の地酒を経費で飲みまくるゼノと、無言で完璧に酌をし続けるノクテ。

そして、誰も見ていないのに後光を放ち続けるルシフ。


(……なんだかなぁ)

俺は、お茶をすすりながら、心の中でひっそりと毒づいた。


倒産した会社の、金もない、暴走ばっかりの連中だ。

今日も今日とて、俺が血の滲むような思いで手に入れた初の黒字が、こいつらの食欲とアルコールと見栄のせいで、文字通り湯水のように消えていっている。

だけど……。


(バラバラだった連中が、こうして一つの宿に集まって。文句を言いながらも、同じ座敷で、同じ膳を囲んでワイワイやってる。……倒産して城はボロボロだけど、こうしてみんなで飯食ってると、ちょっとだけ……会社の慰安旅行っぽい、か)


俺の胸の奥に、ほんの少しだけ、温かいものがじんわりと広がっていくのを感じた。


「――って、いやいやいや!! ちっとも会社じゃねえよ!!」

俺は、自分の柄にもない感傷を全力でかき消すように、バンッ! と畳を叩いて叫んだ。


「なんだよこのブラック企業!」

俺は半目になった。

「CEOが翻訳詐欺で幻の酒をたかりまくって、副社長が座敷で後光焚いてる慰安旅行がどこにあるんだよ!」

「人事部は予算管理ゼロで横領してるし! 完全にただの無法地帯じゃねえか!」

「エモい空気に流されそうになった俺がバカだったわ! お前ら、少しは遠慮して食ええええ!!」


翌朝。

俺たちの大混乱の社員旅行は、ついにフロントでの『チェックアウトと精算』の時間を迎えていた。

女将が、にこやかな笑顔で、信じられないほど長い巻物のような勘定書を差し出してきた。


「こちらが、昨晩のお食事代、お飲み物代、ならびに諸々のご請求でございます」

「……はい」

俺は震える手で勘定書を受け取り、その一番下に書かれた合計金額を見た瞬間、膝から崩れ落ちた。


「うおおおおおおおおっ!? なんだこの金額はあああああ!!」

俺の絶叫が、朝の清々しい旅館のロビーに木霊した。


「おいゼル! お前一人で和牛五十人前と、伊勢海老二十匹も食ってただと!?」

俺はツッコんだ。

「どんだけ胃袋四次元なんだよ! リリ!」

「お前がこっそり頼んだ高級エステとマッサージの代金が、ちゃっかり計上されてんじゃねえか!」

「何が福利厚生だ、お前個人の贅沢だろうが!」

「な、なによ! エリート人事の美貌を保つための必要経費よ!」

「経費じゃねえ! 横領だ! ……そしてルシフ!」

俺は頭を抱えた。

「なんでお前、『俺様の美貌を後世に残すための純金製の等身大胸像』を、宿の土産物屋に勝手に発注してんだよ!」

「誰も買わねえよそんなもん!」

「フッ……この宿の格をさらに引き上げるための、俺様からのささやかな寄贈だ」

「寄贈の代金を俺に払わせるな!! 完全にただの負債だろうが!」


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