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魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第7話 マオリョー、社員旅行します
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マオリョー、社員旅行します⑩ 予算は、もう崩れてる


「お前らが勝手にやり合ってる間に、予算はすでに崩壊してんだよ!」

俺は頭を抱えた。

「リリ、お前幹事ならゼルの首根っこ掴んででも止めろ!」

「なんでちょっと注意しただけで満足して、自分もこっそり高級メロン食ってんだよ!」

「お前もコストオーバーの共犯だろ!」

「な、なによ! 幹事特権のご褒美よ!」

「ただの横領じゃねえか! 横文字で誤魔化すな!」


俺がゼルとリリの二人にツッコミを入れ、息も絶え絶えになっていると、上座の方からトクトクトク……と、上品に酒を注ぐ音が聞こえてきた。

黒鎧を脱ぎ、浴衣姿になったCEOのゼノが、ご機嫌な様子で杯を傾けている。その横では、完璧な従者であるノクテが、一言も発することなく、スッ……と絶妙なタイミングで銚子を傾け、ゼノの杯を満たしていた。


「……うむ。良い酒だ。やはり湯上がりの地酒は格別よな」

「ゼノさん、あんたがさっきから水みたいにパカパカ飲んでるそのお酒、女将さんが『当館の蔵の奥深くに眠る、幻の秘蔵酒』って言ってたやつですよね?」

「それ、一杯いくらするんですか?」


俺が恐る恐る尋ねると、ノクテは無言のまま、空になった銚子をスッと横に置いた。

するとゼノが、重厚な口調で口を開いた。


「……うむ。ノクテはこう申しておる。『CEOの喉を潤すには、まだ足りぬ」

ゼノは重々しく頷いた。

「女将、この幻の秘蔵酒を、もう三本追加で所望する』……とな」

「言ってねええええええ!!」


俺の絶叫が、宴会場の天井に響き渡る。

「ノクテは今ただ空き瓶を横に置いただけだろ!」

俺は指を突きつけた。

「なんでその沈黙の所作が『幻の酒を三本追加』に翻訳されんだよ!」

「お前が一言も喋らないのをいいことに、ゼノさんが完全に自分の私利私欲のアルコール欲を満たしてるだけじゃねえか!」

「ていうか、三本ってなんだよ! 俺の財布をアルコール消毒して殺す気か!」


「……ノクテはこう申しておる。『案ずるな、すべて経費だ』……とな」

「経費経費って言うが、それ全部、俺の黒字が溶けてってんだよ!」

俺は声を張り上げた。

「翻訳詐欺で会社のなけなしの黒字を飲み尽くすな!」

「あんたCEOだろ、少しは会社の財務状況を心配しろ!」


それまで興味なさげに盃を眺めていたアイシスが、フッと鼻で笑った。

「……威厳だの貫禄だの並べたところで、結局は新入りの財布に集っているだけ。安い男ね」

「アイシスもさらっと毒吐くの上手いな!? 正論すぎて誰も言い返せねえ!」

ゼノは何ら動じることなく、涼しい顔で盃を傾けるのみだった。


俺が喉を枯らして叫び続けていると、ふと、宴会場の隅が異常に眩しいことに気がついた。

「……フッ。この豪華な宴も、俺様という最高のメインディッシュの前では、ただの前菜に過ぎない」

浴衣の胸元を無駄にはだけさせた副社長のルシフが、膳の前で後光を焚き、真紅の薔薇の花びらを散らしながらワイングラスを回していた。


「お前はなんで和食の宴会で一人だけワイングラス回してんだよ! 旅館の風情が台無しだろ!」

俺は天を仰いだ。

「しかも誰も見てねえよ、ゼルは肉食うのに夢中だし、ゼノさんは酒に夢中だし!」

「お前のその過剰演出、完全に電気代の無駄遣いじゃねえか!」

「……見よ、この俺様の美しき食事風景を。……見ろと言っている」

「二回言っても誰も見ねえよ! 寂しがり屋か! 大人しく魚食ってろ!」


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