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魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第6話 マオリョー、新規事業を立ち上げます
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マオリョー、新規事業を立ち上げます④ 美貌こそ、最強だ(と本人は言う)



「……コンバージョン率が下がるって言いたいのか、それ」


「こんばー……? なにそれ。わたしはただ、しゅーんって、ぎゅうって、ってだけよ?」


「擬音だけで経営すんな! なのに言いたいことは合ってるのが、逆に腹立つわ!」


「黙れ小娘。俺様の美貌こそが最強の解決策だ」

ルシフは前髪をかき上げた。

「見よ、すでに俺様の等身大ポスターを千枚ほど発注しておいたぞ」

「これを村中に貼り巡らせるのだ」


ルシフが指を鳴らすと、彼自身のキメ顔がドアップで印刷された、無駄に紙質がいいポスターが山のように積まれた。


「お前、俺の金で勝手に何発注してんだあああああ!!」

俺は天を仰いだ。

「ポスター代で俺の全財産が消し飛んでるじゃねえか!!」

「水を入れる樽を買う金がなくなっただろうが!!」


「細かいことを気にするな。俺様の美しさに惹かれ、民草は水を我先にと買い求めるだろう」

俺は半目になった。

「俺様のポスターには、一杯ごとに俺様の投げキッスがついてくるという特典もつけよう」


「いらねえよそんな特典!! 完全に客層が限定されるだろ!」

俺はツッコんだ。

「なんでこの城の役員は、ゼノといいお前といい、揃いも揃って私利私欲と自己顕示欲の塊なんだよ!」

「! 戦力になれよ!!」


結局、ルシフは強大な力を見せるわけでもなく、ただ自分のポスターを大量に押し付けて満足げに去っていった。


俺の手元に残ったのは、すっからかんの財布と、ナルシスト副社長の美貌ポスターの山、そして数個の安物の樽だけだった。


「……クソッ! こうなったらヤケだ! 俺の天才的な水増し商法で、絶対に取り返してやる!」


「わたしの『あくありうむ』のブランド力で、マーケットを席巻してやるわ!」


こうして、俺たちはミィナの極上の水(を川の水で三倍に薄めたもの)と、大量のルシフのポスターを台車に積み込み、近隣の村へと向かった。


村の広場に陣取り、いよいよ販売開始だ。


「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」

俺は声を張り上げた。

「こちらマオリョー謹製、奇跡の万能水『飲むルシフ』……じゃなくて『あくありうむ』!」

「これを飲めば肩こり腰痛、さらには恋の悩みも一発解決!」

「なんと今なら、一杯たったの銀貨一枚!」


「なんだなんだ? ただの水が銀貨一枚?」


村人が集まってきたところで、俺はゼルに合図を送った。


「おいゼル! 出番だ!」


「お、おう!」

「俺は通りすがりの子供やけど、この水飲んだら、昨日までの腰痛が嘘みたいに消えたわー!」

「しかも宝くじで一等当たったでー!」


「……あの子、どう見てもサクラだろ。棒読みすぎるし」


「バカ! 大根役者にも程があるだろ! もっと感情込めろ!」


「しゃーないやんけ! 俺、嘘つくの苦手やねん! 子供やぞ!」


さらに、村人たちの視線がルシフのポスターに向けられる。


「うわっ、なんだこの気持ち悪い男のポスター……『俺様の輝きに、焦がれろ』? 宗教か何かの勧誘か?」


「水にこの男の投げキッスがつくらしいぞ。気持ち悪いから近寄らんとこ」


「ポスターのせいで客が遠のいてるじゃねえか!! おいルシフ! どこにいるんだお前、責任取れ!! 全然広告塔になってねえだろ!」


ルシフの売名行為によるポスター大作戦は、見事に大滑りし、売上には1ミリも貢献していなかった。


それどころか、怪しい宗教団体だと思われて客足が遠のく始末だ。


「クソッ、このままじゃ俺の全財産がパァだ! 全然売れねえ! おいリリ、お前のエリートな販売戦略はどうなってんだよ!」


「わたしのせいじゃないわよ! あなたの水増しがバレて、味が薄いからリピーターがつかないのよ! セコいことするからでしょ!」


「うるせえ! 原価ゼロの商売で赤字になるわけにはいかねえんだよ!」


俺は焦っていた。


この状況を打開するには、さらに薄めて量を増やし、安売りで無理やり売り捌くしかない。


俺は、台車の横で正座しているミィナを振り返った。


だが――俺のこのセコい思いつきが、ミィナの『過剰な善意』という最も危険なスイッチに手をかけていることに、この時の俺はまだ気づいていなかった。


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