マオリョー、防犯対策します② 罠は、自分にかかる
みんなが去っていくのを確認した俺は、残った干し肉の束をすべて麻袋に詰め込み、自分の社宅の部屋(壁に穴が開いてて隙間風が酷い)へとコソコソと持ち帰った。
(ただ隠すだけじゃ甘い。泥棒が俺の部屋に忍び込んできた時のために、自作の罠でガチガチに守ってやる!)
俺は、中庭から拾ってきたロープ、瓦礫、そしてバケツを使って、部屋の入り口に物理的なトラップを仕掛け始めた。
ドアを開けて足元のロープ(トラップワイヤー)に引っかかると、天井にセットした大量の瓦礫と水入りバケツが泥棒の頭上に落下し、さらに連動して俺のベッドの下から網が飛び出すという、完璧なピタゴラスイッチだ。
(ふははは! これで泥棒も一網打尽! 干し肉は全部俺の腹に収まるって寸法よ! 俺の天才的な防犯対策、恐れ入ったか!)
そして、夜。
隙間風が吹きすさぶ極寒の部屋で、俺は剣を握りしめたまま、布団の中で息を潜めていた。
すると――。
ガサッ……コトッ。
部屋の外、廊下から微かな物音が聞こえた。
「……来たな泥棒め! 今日という今日は、俺の飯への執着心を見せつけてやる!」
俺は布団を跳ね飛ばし、勢いよくドアの方へと飛び出した。
「かかったな泥棒! そこでおとなしく……うおおおっ!?」
ズザァァァンッ!!
俺は暗闇の中で、自分で張った足元のトラップワイヤーに思い切り足を引っ掛け、顔面から床にダイブした。
「いってえええええええ!! 自分の罠にかかったぁぁぁ!」
ガランッ! ドゴォォォン!!
ワイヤーが引かれたことで、天井にセットしていた瓦礫とバケツが、倒れた俺の後頭部にクリーンヒットする。
「ぐはぁっ!? 痛い! 痛い痛い! 頭割れる! なんで俺が自爆してんだよ!」
その凄まじい騒音を聞きつけて、隣の部屋からリリがパジャマ姿で飛び込んできた。
「ちょっと! 夜中に何の騒ぎよ! エリートの睡眠コンプライアンスを……きゃあああっ!?」
ドテェェェン!!
リリも俺の仕掛けた二本目のロープに見事に引っかかり、そのまま部屋の奥にあった『干し肉を隠していた棚』に向かってヘッドスライディングをかました。
「ギャアアアア!! 俺の飯の棚に突っ込むなポンコツゥゥ!!」
さらに、その騒ぎを聞きつけたゼルが、パニック状態で和風装束のまま乱入してきた。
「て、敵襲か!? しゃーない、俺が丸焦げにしたる! 本気の百分の一やぁぁ!」
ボオオオオオオオッ!!
「バカやめろ! 部屋の中で火を吐くなあああ!!」
ゼルの放った小規模な火柱が、見事にリリがなぎ倒した干し肉の山に直撃する。
俺のなけなしの干し肉は、自作の瓦礫トラップで半分がすり潰され、ゼルの火で残りの半分が真っ黒な炭と化してしまった。
「ああああああああああああ!!!」
俺の血を吐くような絶叫が、夜の魔王城に木霊した。
罠が作動した混乱の中で、廊下にいたはずの『真犯人』は、とっくに逃走して姿を消している。
「……いてぇ……俺の一張羅の布の服も焦げたし、足は打撲だし……」
俺は、瓦礫と炭の山と化した俺の全財産を見つめながら、膝から崩れ落ちた。
盗られる前に独り占めしようとした、俺のクズな自衛策。
それが完全に裏目に出て、自分と仲間が罠にかかり、食料が半壊するという、完全な自業自得の大損害を引き起こしてしまったのだ。
「……エリートの顔面が、ススだらけじゃないのよぉぉ……」
「おっちゃん、なんやこの部屋、罠だらけやんけ! アホちゃうか!」
「うるせえええええ!! 全部お前らが乱入してきたせいだろうが!! ああクソッ、俺のカロリーが……俺の生存権がぁぁぁ!!」
城内がぼやける探索スキルでは、犯人は見つけられない。
俺の自作の罠は、食料を粉砕する自爆装置にしかならない。
このままでは、防犯どころか、俺たちの自滅でマオリョーは終わってしまう。
魔王軍倒産しました。
そして俺の食料も、俺のクズな自業自得によって、見事に倒産(半壊)したのだった。
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翌朝。




