表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第4話 マオリョー、在庫処分します
PR
47/89

マオリョー、在庫処分します⑪ 氷は、緩んだ


俺は氷をバンバンと叩いた。


「俺はお前の後ろめたさを見抜いてるぞ!」

俺は声を張り上げた。

「会社のインフラをぶっ壊した責任を感じて、部屋に引きこもってやり過ごそうとしてるだけだろ!」

「だから出てこい! 俺たちと契約して、このクソ寒い凍結状態を解除しろ!」

「そして俺のウサギ肉を冷凍してくれ! 頼むから俺に飯を食わせてくれ!!」


『…………っ』


数秒の、重い沈黙。


そして。


ピシッ……パキパキパキッ!


俺の足元を拘束していた氷が、ゆっくりとひび割れ、溶け始めた。


「おっ!? 氷が緩んだ! 足が動くぞ!」


「あ、あったかい……! わたしのエリートな血流がリブートしたわ!」


ゴゴゴ……と重い音を立てて、廊下を塞いでいた分厚い氷の扉が、ゆっくりと開いていく。


中から現れたのは、透き通るような銀髪と、氷のように冷たい美貌を持った女性――執行役員、アイシスだった。


アイシスは、ツンと顔を背け、腕を組みながら不機嫌そうに俺たちを見下ろした。


『……勘違いしないでよね。別に、お前たちの情けない言葉に絆されたわけじゃないわ。ただ、このまま城が凍結して魔王様が帰る場所がなくなったら、寝覚めが悪いと思っただけよ』


——その一言で、なんとなく察しがついた。


こいつが部屋に引きこもってたのは、ただ拗ねてただけじゃない。社長がいなくなって、みんなバラバラに腐ってくこのボロ会社で。こいつはこいつなりに、いつ帰るとも知れない社長の席を、馬鹿正直に守ってたんだ。クソ寒い氷の部屋で、たった一人で。


……まあ、口が裂けても本人には言わねえけどな。柄じゃない。


「はいはい、典型的なツンデレのテンプレセリフありがとうございます! もうその『勘違いしないでよね』でお腹いっぱいです!」


「……ふふっ。アイシス様、お顔がほんのり赤くて可愛らしいです」


『うるさいわね! お前はちょっと黙っていなさい、この歩く水害!』


アイシスが指を鳴らすと、彫刻になっていたゼルの氷もパリンと砕け散った。


「ぷはっ!? ……さ、寒かったぁぁ! 死ぬかと思たで!」


「ほら、ポンコツ人事! お前の出番だ! さっさと契約魔法の儀式を済ませろ!」

俺は天を仰いだ。

「俺はもう一秒でも早く温かいストーブの前で丸まりたいんだよ!」


俺がリリの背中を叩くと、リリはコホンと咳払いをして、アイシスの前に立った。


「ふふん! 素直じゃない後輩をマネジメントするのも、エリート人事の重要なタスクよ!」

リリは目を泳がせた。

「アイシス、あなたをマオリョーの保存管理担当として再雇用し、わたしとアライアンスを結ぶわ!」

「これで会社のサプライチェーンは完璧ね!」


「だから意味不明な横文字でドヤるな! サプライチェーンってなんだよ、流通させる気か!」


「いい? よく聞きなさい。今のアイシスなんて、気まぐれに城を凍らせるだけの引きこもりよ」

リリは得意げに鼻を鳴らした。

「せっかくの氷も、ただの八つ当たりに使われてるだけ」

「でもわたしが契約魔法で繋げば、その氷が"会社の保存管理システム"になるの」

「会社の財産をきっちり守る、立派な機能に化けるってわけ」


「……お前、契約のたびに同じこと言ってんな。野良の力を会社の機能にする、って」


「そう、それがわたしの仕事だもの。ふふん、ようやく理解してきたじゃない」


リリは俺のツッコミを無視して、バサッと羊皮紙を広げた。


「いくわよ! マオリョー人事担当リリの名において、あなたと契約魔法を結ぶわ! 結びなさい、保存管理の契約魔法!」


リリの指先から、青白い光の粒子が放たれ、アイシスを包み込んだ。


アイシスの瞳の奥に、雪の結晶を模した魔法の紋様が一瞬だけ浮かび上がる。リリの瞳孔にも、透き通るような青白い結晶紋様が瞬いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ