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魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第4話 マオリョー、在庫処分します
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マオリョー、在庫処分します⑦ 怒りで、全凍結

そして、それだけでは終わらなかった。アイシスの怒りはまだ収まっておらず、扉の奥から冷気が際限なく溢れ出している。廊下はますます凍てつき、俺たちの足元まで白い霜が這い上がってきていた。


「だ、だから言ったじゃない! アイシスは関わっちゃいけないタイプのヤバい女なのよ!」

リリは胸を反らした。

「エリートのわたしの貴重な労働力が、こんな氷漬けで強制ストップよ!」

「これも立派な業務妨害だわ!」


リリが、凍えた指先をさすりながらガタガタと震えている。


「お前の労働力なんか元々ゼロだろ! ていうかお前サキュバスのくせに色気ゼロじゃねえか!」

俺は声を張り上げた。

「誰か火を持ってこい! ゼル! 昨日契約したばかりの火力担当の出番だ!」

「このクソッタレな氷を全力で溶かせ!」


俺が背後に向かって叫ぶと、少し離れた場所で、ゼルが、自分の両腕をさすりながら青ざめていた。


「あ、アホか! むっちゃ寒いやんけ!」

「俺の火ィ、出そう思ても、このババアの冷気が強すぎて、手元でジュワッて消えてまうねん!」

「アイシスの氷は、俺の火柱でも簡単には溶けへんのや!」


「お前それでも最強クラスの古龍かよ! なんで同じ執行役員同士で露骨な相性負けしてんだ!」

俺は天を仰いだ。

「ケーキ食いたいなら気合で燃やせ! 俺の飯を取り返せ!」


「……ふふっ。皆さん、何をそんなに慌てているんですか? ほら、見てください」


俺とリリ、ゼルがパニックになっている中、ただ一人、ミィナだけが、両手を頬に当ててうっとりとしたため息を漏らした。


「……アイシス様のお力、本当に素晴らしいですね」

ミィナはうっとりと目を細めた。

「勇者様のお肉を、こんなにも美しく、そして強固な芸術作品に仕上げてくださるなんて」

「……アイシス様の、内に秘めた情熱を感じます」

「……ああ、感激でまた、足元からお水が湧いてきちゃいそうです……ふふっ」


「情熱じゃねえよ! 明確な殺意と拒絶だろうが!! そもそも肉を水浸しにして地雷踏んだのは俺だよ! 自分で言ってて泣けてくるわ!」


俺はツルツルの氷の床で何度も足を滑らせながら、頭を抱えた。


「だがな、ミィナ! お前のその能天気さも大概なんだよ!」

俺は半目になった。

「全財産が氷漬けになって俺が泣いてんのに、なに『芸術作品』とか言ってうっとりしてんだ!」

「空気を読め! お前のその重すぎる忠誠心は、ただのサイコパスのストーカー行為なんだよ!」


「……ひどいです、勇者様」

ミィナは頬に手を当てた。

「わたしはただ、アイシス様がもっとたくさんの綺麗な氷を作れるように、健気にサポートして差し上げたいだけなのに」


「そのサポートが世界を滅ぼすっつってんだよ! 頼むからもう何もしないでくれ! 息をするな! これ以上被害を広げるな!」


だが、俺の悲痛な叫びは、ミィナの暴走する健気さの前には、そよ風以下の意味しか持たなかった。


ミィナは、俺のツッコミを完全にスルーし、真っ直ぐにアイシスの部屋の氷の扉を見据えた。


その瞳に、とてつもなく重く、そして厄介な『決意の光』が宿る。


「……わかりました」

ミィナは静かに微笑んだ。

「アイシス様は、まだわたしのお水が足りないから、ツンツンしていらっしゃるのですね」

「氷の魔族であるアイシス様にとって、この程度の氷では、真の力を発揮するには物足りないはずです」


「おい、待て。ミィナ。お前、何を言っている。俺の危険察知センサーが、さっきの十倍の音量で鳴り響いてるぞ」


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