表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第4話 マオリョー、在庫処分します
PR
41/90

マオリョー、在庫処分します⑤ お前は、ついてくるな

「ミィナ。お前は絶対についてくるな」

俺はツッコんだ。

「お前とアイシスの間には保存庫水没事件っていう致命的な確執があるんだろ」

「お前が顔出した瞬間、交渉は終わる。ここで大人しく祈ってろ」


「……ひどいです。でもわかりました。お肉が高く売れるように、ここでお祈りしておきますね。……ふふっ」


「祈るな! 呪いみたいで怖いから!」


俺は念を押し、リリだけを引き連れて、再び氷河期と化した城の奥の廊下へと向かった。


――ツルッツルの永久凍土の廊下を、ペンギンのように滑りながら進む。


俺たちは、絶対零度の冷気を放つ、分厚い氷で完全に封鎖された重厚な扉の前に到着した。


「さっむ……! マジでさっきより冷気が増してねえか……?」


「ほら、勇者!」

リリは得意げに鼻を鳴らした。

「あんたのそのゲスなスキームで、アイシスからアグゥリィをもぎ取ってきなさい!」

「さっさとしないとわたしが凍死しちゃうわ!」


「だから横文字使うな! 雰囲気で喋ってんじゃねえぞポンコツ!」


俺はコホンと咳払いをして、氷の扉に向かって声を張り上げた。


「えーと、執行役員のアイシスさん! 俺です、新入社員の勇者です!」

「さっきは手ぶらで来てすんませんでした!」

「ちょっと耳寄りなビジネスのお話があって戻ってきました!」


「…………」


扉の向こうからは、相変わらず何の返事もない。


「聞いてください!」

ゼルは腹を鳴らした。

「今回は誠意の証として、俺の全財産であるこの極上の食材を『全部』、あんたに上納しに来ました!」

「だからどうか、機嫌を直して、この肉をあんたの部屋で冷凍保存してくれませんか!」


俺は、麻袋を扉の前に置き、揉み手で胡散臭い営業マンのような顔を作った。


「あんただって、ずっと引きこもってたら腹が減るだろ! この肉の管理権を全部あんたに譲る!」

俺は頭を抱えた。

「つまり、あんたがこの城の『食料の絶対的支配者』になれるってことだ!」

「執行役員としての権力を、俺たちに見せつけるチャンスだぞ! さあ、アグゥリィしてくれ!」


……アグゥリィ。


言い切ってから、俺は自分の口を両手で塞いだ。


今、俺は何を口走った。あのポンコツ人事の謎のネイティブ発音が、ついに俺の口からも漏れ始めている。汚染されている。あの女の中身ゼロのビジネス用語に、俺の言語中枢が侵食されつつあるのだ。


「……っ、くそ。今のは忘れろ。なんでもない」


数秒の沈黙の後。


ピキッ、と扉を覆う氷の一部がひび割れ、中から冷たく美しい声が響いた。


『……食料の、絶対的支配者?』


「そうだ! あんたの氷がないと、俺たちは餓死確定なんだ! あんたの力が必要なんだよ!」


俺は心の中でガッツポーズをした。食いついた! さすがはツンデレ、頼られることに弱いらしい!


『……ふん。全部上納すると言いつつ、どうせ後でこっそり削って取り出して、街で売りさばこうという、ゲスな打算が見え透いているわよ。わらわを都合のいい無料の製氷機扱いする気かしら?』


「ギクッ!?」


「勇者、完全に皮算用を見透かされて顔が引きつってるわよ」


「うるせえ! バレてるなら話が早い! そうだよ、これは将来への先行投資なんだよ!」

俺は指を突きつけた。

「でも今は本気で命がかかってんだ! 頼むから凍らせてくれ! あんたの力だけが頼りなんだ!」


俺が必死に食い下がると、アイシスの声に、微かな優越感と、ほんの少しの『後ろめたさ』が混じったのがわかった。


『……まあ、わらわの圧倒的な氷の力がないと、お前たち無能な平社員が餓死してしまうという事実は、理解できなくもないわね。そこまでわらわの力を必要とするのなら、特別にその肉を凍らせて――』


「いけるか……!?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ