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魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第4話 マオリョー、在庫処分します
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マオリョー、在庫処分します③ 喋った、しかも毒舌

「お前のその中身ゼロのビジネス用語、聞いてるこっちが恥ずかしくなるからやめろ! 余計に怒らせるだけだろ!」


俺はリリを突き飛ばし、コホンと咳払いをして氷の扉に向き直った。


「あー、えーと。執行役員のアイシスさん! 俺は新入社員の勇者です! ちょっとお願いがあって来ました!」


「…………」


扉の向こうからは、何の返事もない。ただ、冷たい風がピューッと吹き抜けるだけだ。


「聞いてください! あんたがこの城の保存管理のプロだってことは聞いてます!」

俺は声を張り上げた。

「今、俺の手元には、俺が必死に狩ってきた貴重な『ウサギ肉』があります!」

「だが、あんたの氷の力がないせいで、これが腐って無駄になろうとしてるんです!」


「…………」


「だから、あんたのその凄い氷の魔法で、この肉をちょっとだけ冷凍保存してくれませんか! お願いします!」


俺は扉の前で、できるだけ下手に出て、素直に頭を下げた。


頼み込めば、案外あっさりと冷やしてくれるかもしれない。


数秒の沈黙の後。


ピキッ、と扉を覆う氷の一部がひび割れ、中から冷たく美しい声が響いた。


『……愚かね』


「ひぃっ!? しゃ、喋った!」


『……わらわを誰だと思っているの。たかがウサギの生肉ごときで、このマオリョーの執行役員であり、フロストクイーンであるわらわが動くとでも? 身の程を知りなさい、下賤な人間』


「げっ、完全に足元見られてる! プライド高すぎだろ!」


「ほら見なさい! だから無理だって言ったのよ! あの女、性格が絶対零度なのよ!」


リリが俺の背中に隠れながら小声で文句を言う。


だが、俺は引き下がらない。ここで引き下がれば俺の飯が腐るのだ。


「ま、待ってくれ! ちょっと冷気を出して凍らせてくれるだけでいいんだ! そうしないと俺たちは餓死しちまう! そこを曲げて頼む!」


俺がさらに一歩、氷の扉に近づいた、その瞬間だった。


『……馴れ馴れしくわらわに近づくんじゃないわよ、新入り』


地を這うような、絶対零度の声。


ピキ、ピキピキピキピキィィィィィィンッ!!!!


氷の扉の隙間から、恐ろしいほどの魔力を秘めた規格外の巨大な氷の刃が、生き物のように壁を伝って伸びてきた。


「うおおおおっ!?」


シュガァァァァンッ!!


巨大な氷の刃が、俺の鼻先わずか数ミリのところを掠め、背後の石の壁に深々と突き刺さった。


「ひぃぃぃぃぃぃっ!!?」


「きゃああああ! 氷が! 氷の刃が伸びてきた! 殺される!」


「だーっ! 寒いやんけ! 刺さっとるぞ!」


俺の顔面は蒼白になっていた。


ただの氷魔法じゃない。空中の水分を一瞬で凍結させ、鋼鉄よりも硬い刃として射出する、完全な『殺意』を持った魔法。


これが、防御と制圧に特化した最強格の執行役員、アイシスの本気の一端か。


『……次はないわ。この生ゴミと一緒に、永久凍土のオブジェになりたくなければ、さっさと失せなさい』


「はいぃぃぃぃぃっ!! すんませんでしたあああああ!!」


俺はウサギ肉を抱え、リリの襟首を掴んで、ツルツルの氷の廊下を文字通り這いつくばって逃げ帰った。


アイシス。保存のプロである彼女は、俺の想像を遥かに超える、規格外のバケモノだった。


バカ正直にお願いして回るだけでは、門前払い。完全なる交渉決裂である。


中庭に戻った俺は、変色しつつあるウサギ肉を見つめ、絶望的な溜息をついた。


冷蔵庫は、絶望的に機嫌が悪い。


このままでは、マオリョー再建の前に、俺の胃袋が完全に崩壊してしまう。


正攻法がダメなら、次はもっとゲスな打算で落とすしかない。俺の戦いは、まだ終わっていなかった。


---


「……ぜぇ、ぜぇ……っ! マジで殺されるかと思った……っ!」


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