表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第4話 マオリョー、在庫処分します
PR
37/89

マオリョー、在庫処分します① 鼻が、バグを疑う

「……おい。誰か嘘だと言ってくれ。俺の鼻が異世界のバグで狂ってるだけだと言ってくれ」


城の中はミィナとアイシスのコンボで永久凍土のままだが、外に出れば話は別だ。よく晴れた魔王城の中庭は、初夏の陽気でじりじりと暑い。


俺は、瓦礫を組んで作った即席のテーブルの上を見下ろしながら、額に青筋をビキビキと立てていた。


そこにあるのは、俺が今朝早くから森を駆け回り、泥だらけになりながら罠を張ってようやく仕留めた『角ウサギの肉』だ。


だが、気温と湿度のせいか、解体した肉の表面はすでにうっすらと変色し始め、どこから湧いてきたのか、ハエが一匹、また一匹と周囲を飛び交い始めている。


明確に、ヤバい匂いが漂っていた。


「このままじゃ全滅だぞ!」

ゼルは牙を剥いた。

「俺の血と汗と涙の結晶にして、なけなしのカロリー源が、ただの腐敗物になっちまう!」

「早くどうにかしないと、今日の昼には食中毒確定のバイオ兵器になるわ!」


「なによ朝っぱらから。うるさいわねぇ」


中庭の石畳の上で、優雅に日傘(破れている)を差している白銀ツインテール――マオリョーの自称エリート人事、リリが、丸メガネを押し上げながら鼻で笑った。


「ヤバい匂いなんてしないわよ」

リリは胸を反らした。

「それはお肉が熟成されて、アミノ酸が旨味成分に変化している証拠よ」

「エリートのわたしにはわかるわ、いわゆるエイジング・ビーフってやつね!」

「コールドチェーンの構築よ!」


「ウサギ肉にビーフって言ってんじゃねえ! 熟成じゃなくてただの腐敗だよ!」

俺はツッコんだ。

「常温で放置してコールドチェーンもクソもあるか! 雰囲気で横文字使ってごまかすな!」


俺が怒鳴っていると、隣から「なんやなんや!」と元気な関西弁が響いた。


和風装束を着た古龍の幼体、つい昨日契約したばかりの執行役員・ゼルだ。


「おっ! 肉やんけ! 腹減っとったんや! おっちゃん、俺が焼いたるわ!」

ゼルは腹を鳴らした。

「この前の本気の百分の一くらいの火力で、一瞬で中までカリッカリにしたるからな!」


「お前はもう何もしなくていい! 引っ込んでろ!」


俺はゼルの小さな頭を全力で押さえつけた。


「昨日お前がそれで火力をバグらせて、俺の唯一の食料だった魔芋が完全な『消し炭』になったんだろうが!」

俺は頭を抱えた。

「お前の火でウサギなんか焼いたら、細胞レベルで炭化してカロリーゼロの暗黒物質になるわ!」


「アホか! 今日はちゃんと手加減できるっちゅうねん!」


「お前の手加減は1ミリも信用できねえんだよ!」

俺は指を突きつけた。

「……ああクソッ、せっかくの肉がこのままじゃ腐ってパーだ。俺のサバイバル生活が……」


俺が頭を抱えていると、今度は背後から、静かで涼やかな声が降ってきた。


「……ふふっ。勇者様、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」


振り返ると、深海色の髪を揺らす水の精霊、ミィナが完璧な微笑みを浮かべて立っていた。


「……もし勇者様のお肉が腐ってしまっても、お腹を壊してしまわないように、わたしの浄化魔法で不浄な菌ごと蒸発させて、綺麗な水蒸気にしてさしあげますから」

ミィナは静かに微笑んだ。

「……跡形もなく、消え去りますよ。ふふっ」


「それが一番困るんだよ! 物理的に食えなくなるだろうが! 俺の食料を笑顔で無に還すな! テロリストかお前は!」


俺はミィナから全力で距離を取り、リリへと向き直った。


「おいポンコツ人事!」

俺は声を張り上げた。

「そもそも、この城の『食料保存庫』が使えりゃ、こんな苦労はしねえんだよ!」

「あの便利な施設、なんで誰も使ってないんだ!?」


「使えるわけないじゃない。忘れたの?」


リリはやれやれと肩をすくめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ