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魔王軍倒産しました。〜領地は絶賛再建中・勇者は絶賛就職中〜  作者: 瀬大
第3話 マオリョー、火力調達します
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マオリョー、火力調達します⑨ ガキじゃ、ない

「……ふふっ。アイシス様への愛と忠誠心の量です」


「重い! 忠誠心が重すぎて物理的な質量を伴ってんぞ!!」


ズッッッッッッバァァァァァァァァァン!!!!!


そして、その巨大な水の塊が、燃え盛る塔の最上階に向かって、滝のように一気に落下してきた。


「ぎゃあああああああああ!?」


「うわあああああん! 溺れるぅぅぅ!」


「なんやこれええええええ!?」


俺、リリ、そしてゼルの悲鳴が重なる。


圧倒的な水量が、ゼルの放っていた紅蓮の炎を強引に押し潰し、飲み込んでいく。


炎と水が激突し、凄まじい水蒸気爆発が発生した。


「あっつ! 痛っ! ギャアアア! ただの水没じゃねえ! 炎と混ざって超高温の熱湯になってるぞ!! 大規模な熱湯コマーシャルかよ!!」


「きゃあああ! エリート人事が茹で上がっちゃうぅぅぅ! これは完全に過重労働よぉぉ!」


「俺の! 俺のお菓子が水浸しやああああ!!」


塔の最上階は、一瞬にして『火災現場』から『煮えたぎる大洪水現場』へとクラスチェンジを果たした。


濁流と化した熱湯が、俺たち三人を容赦なく洗濯機のようにぐるぐるとかき回す。


息ができない。熱い。そして苦しい。


俺は濁流の中で必死にもがきながら、ふと視界の端に、俺の私物が入った麻袋がプカプカと浮いているのを発見した。


あれは! ギルドで前借りした金で買った、最低限の着替えと、さっき森で拾ったスライムのフン(まだワンチャン売れると信じている)が入った袋!


「俺の! 俺の全財産があああああ!」


俺は熱湯の中で必死に手を伸ばし、その袋を掴もうとした。


だが、その時。


「……ああっ、いけません勇者様!」

ミィナはうっとりと目を細めた。

「その袋の中身、なんだか不浄なオーラ(スライムのフン)が漂っています!」

「一緒に浄化しておきますね! 『聖なる浄化』!」


「やめろおおおおおお!!」


ミィナの過剰な善意の光が、俺の麻袋を包み込む。


ボンッ! という音とともに、麻袋の中身はフンも着替えもまとめて、綺麗な水蒸気となって完全に消滅した。


「……ふふっ。綺麗になりましたね」


「俺の着替えがあああああああ!!」


ザバーーーン!!


そしてついに、塔の最上階の窓と壁が水圧に耐えきれず崩壊。


俺たちは、濁流とともに塔の外、魔王城の中庭へと、文字通り滝のように吐き出されたのである。


ドシャァァァァァァッ!!


「……ぐふっ、げほっ、ごほっ……!!」


中庭の石畳の上で、俺は泥と熱湯にまみれながら、ピクピクと痙攣していた。


全身に負った軽い火傷。


熱湯に浸かったことによる極度の疲労。


そして、ミィナの過剰浄化によって失われた、俺の最後の私物たち。


「……ううっ……。わたしの、わたしのエリートな名声が……泥だらけ……」


隣では、リリが完全に白目を剥いて伸びている。


「……け、ケーキ……俺の、ケーキ……」


ゼルもまた、大洪水のショックと魔力切れで、目を回して倒れていた。


そして、その惨状の中心で。


ミィナだけが、一滴の汗もかかず、服も濡らさず、完璧な微笑みを浮かべて立っていた。


「……ふふっ。皆様、お疲れ様でした。見事に鎮火しましたね」

ミィナは頬に手を当てた。

「これでアイシス様の氷も安泰です」

「……わたし、また少し、マオリョーの役に立てましたでしょうか?」


俺は、焦げてズタボロになり、さらに熱湯で縮んだ布の服のまま、ゆっくりと天を仰いだ。


火力は、過剰に供給され。


城は、半ば全焼し。


そして、洪水によって俺の所持品は全損した。


「……おい、ポンコツ人事」


「……な、なによ……」


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