マオリョー、火力調達します⑥ 怒りで、全焼寸前
すべての発火条件をコンプリートした古龍の幼体は、その小さな体から、太陽の表面温度にも匹敵しそうな超高熱の炎を、無差別に噴出させ始めた。
「うおおおおおおおおっ!! 燃えろやあああ! 全部燃えカスになったれやああああ!!」
ドッッッッガァァァァァン!!
塔の最上階で、爆発的な火柱が上がった。
吹き飛ぶ屋根。溶け落ちる石の壁。圧倒的な爆炎が、竜巻のように部屋中を蹂躙する。
「ぎゃああああああああ!? 熱い熱い熱い! 焦げる! 俺の服が! 髪の毛がチリチリになる!」
「きゃあああああっ!? 助けて! エリート人事のわたしが、ただの丸焦げサキュバスになっちゃうぅぅ!」
「……わぁ。とっても大きくて綺麗な花火ですね。ふふっ、心が洗われます」
「綺麗じゃねえええ! 洗われてるのは心じゃなくて俺たちの命のカウントダウンだ! 避難しろバカ! 塔が崩れるぞ!」
ゼルは完全に癇癪を起こし、涙と鼻水を撒き散らしながら、炎の球を四方八方に乱れ撃ちしている。
「うわああああん! 社長のバカああああ! ケーキ食わせろやああああ!! 俺を子供扱いすなああああ!!」
ドカン! ボカン! ドゴォォォォン!!
俺の浅はかな打算と、子供扱いという最悪の挑発が、マオリョーの火力担当を最悪の形で起動させてしまった。
これはもう、火力調達どころの話ではない。城が、物理的に消し炭にされる五秒前だ。
「おいポンコツ人事! お前が契約魔法でなんとかしろ! アイツの力を抑え込んで鎮火させろ!」
俺は燃え盛る瓦礫の陰に隠れながら、隣でガタガタ震えているリリに怒鳴りつけた。
「む、無理よ! ゼルはまだ未契約なのよ! 契約してない相手は束ねることすらできないんだから!」
「じゃあどうすんだよ! このままじゃ俺たち全員、超高温のローストチキンだぞ!」
絶体絶命の危機。
火を出さない理由は、確かに子供すぎて泣けた。
だが、火を出した結果は、大の大人が本気で泣き叫ぶレベルの大惨事だったのである。
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「ぎゃあああああああああっ!? 熱い熱い熱い熱い!!」
「俺の、俺の初期装備である貴重な布の服の裾がチリチリに焦げてんぞおおお!!」
塔の最上階。
俺の『子供扱い』という最悪の暴走スイッチによって完全にブチギレたゼルが放つ圧倒的な炎の嵐の中で、俺は涙と鼻水を撒き散らしながら逃げ惑っていた。
「燃えカスになったれやあああ!! 俺をガキ扱いしたこと、あの世で後悔せえやボケェェェ!!」
ドッッッッガァァァァァン!!
ゼルの小さな体から放たれる火炎弾が、石造りの壁に直撃し、爆発音と共に塔の天井が派手に吹き飛んだ。
ポッカリと空いた穴から、黒煙が青空に向かってモクモクと立ち昇っていく。
「ふざけんな! お前、ここ自分の部屋だろ! なんで自分の寝床を全力でぶっ壊してんだよ!」
俺は半目になった。
「怒りで我を忘れるにも程があるだろこの爬虫類!!」
「やかましいわ! お前みたいなセコい詐欺師の息がかかった空気なんか吸えるか! 塔ごと消毒じゃあああ!」
「消毒に炎を使うな! 汚物は消毒だー!みたいなヒャッハーなテンションになんな!」
俺はツッコんだ。
「お前マオリョーの執行役員だろ! 自分の会社の資産を物理的に減らしてどうすんだよ!」
「うるさい! 俺はケーキが食いたいんや! ケーキ! ケーキ! ケーキィィィ!」
ダメだ、完全に言葉が通じていない。
ただでさえ災害級の魔力を持っている最強クラスのバケモノが、三歳児の癇癪レベルの理不尽さで火を撒き散らしているのだ。こんなもの、どうやって止めればいいんだ。




